体内時計が崩れると早死にする? 時間別で発生しやすい病気も

 2018年7月、食事の時間が発がんリスクに影響を与えるという衝撃的な論文が発表された。論文を執筆したスペインのバルセロナ・グローバル・ヘルス研究所のチームによると、午後10時以降、または就寝直前に夕食を食べる人は、それ以前に食べる人に比べて、乳がんと前立腺がんにかかるリスクが20%も高かったというのだ。

 自治医科大学名誉教授・巨樹の会学術顧問の藤村昭夫さんが話す。

「この結果は、夕食をとる時間よりも朝食がおろそかになることのリスクによるものだと思います。朝食をとることは、体のリズムを整えるために、実はとても重要です。ところが夕食の時間が遅いと、朝食をとらなくなったり、時間が遅くなってしまう。

 すると人間が持つ体内時計が狂っていくのです。体内時計がズレると、さまざまな発病リスクがあることがわかっています」

 これまでの健康法は「何を食べるか」「どんな運動をするか」といった視点で語られてきたが、最近の研究では「いつ」するか、という時間軸の視点が重要であることがわかってきている。そのキーワードがズバリ“体内時計”だ。

 体内時計は、どのようにリズムを刻んでいるのだろうか。

 1960年代に、ドイツのマックス・プランク研究所が行った実験では、洞窟などの光がまったく入らない場所で人間を生活させたところ、一日のリズムを24.5~25時間という24時間よりも少し長い時間で刻んだという。

 同様に、多くの生物が体内時計を持ち、それぞれリズムを刻んでいる。ニワトリが朝に卵を産むのも、ネズミが夜に活動するのも、体内時計によるものだ。

 そして、その体内時計の乱れは、病気のリスクに直結するということがわかってきた。早稲田大学先進理工学研究科教授・柴田重信さんが解説する。

「体内時計の遺伝子が働かなくなったマウスは、ほぼ早死にしてしまいます」

 では人間の場合はどうか。藤村さんが話す。

「細胞の染色体の末端にあり、細胞分裂のたびに短くなるテロメアという部分の長さを見ると、人の寿命がわかるといわれています。

 それを調べると、人間は120才くらいまで生きるようにできている。しかし、体内時計のリズムが狂うなどのストレスによってテロメアは短くなることがわかっています。長生きするには、体内時計のリズムを崩さないように生活することが重要です」

 では、どのような生活が寿命を縮めてしまうのだろう。明治大学農学部准教授の中村孝博さんが説明する。

「たとえば看護師や航空会社の乗務員、3交代勤務の工場労働者といった深夜労働を含んだシフト労働者は、乳がんのリスクが1.5倍、前立腺がんが1.3倍になる。さまざまな研究により、体内時計の乱れは生活習慣病やうつ病のリスクが高くなることもわかっています」

 ほかにも肥満、心血管疾患の発症リスクも上がるという。さらに、現代女性が直面する大きな問題にも体内時計はかかわっていた。中村さんが話す。

「体内時計が狂うと、不妊の原因にもなります。こんな実験を行いました。生殖時期が終わりに近づいたメスのマウスに週末だけ3時間の夜更かしをさせる。すると通常4日間隔で起きるはずの排卵がバラバラになり、不妊になった。平日と週末の生活時間の差によって“社会的時差ボケ”が起きた結果ではないかと推測しています。妊活中の人は、体内時計を整えることをおすすめします」

 また、統計データでは時間別で発生しやすい病気があることが示されている。今まさに多くの人が悩まされているあの症状も例外ではない。

「花粉の飛散が最大化するのは昼ごろにもかかわらず、花粉症の症状がいつ悪化するかといえば、明け方なのです。つまり、人間のアレルギー反応が高まるのがその時間帯というわけ。

 同じように、気管支喘息も明け方に発作を起こす人が多く、7時ごろにはリウマチ発作、9時ごろには心筋梗塞も増える。医療関係者の間で“朝は魔の時間“といわれるゆえんです」(柴田さん)

 図では、24時間周期で起きる様々な現象を表した。時間により起きる可能性が高い症状がわかる。

「原因がわからないものも多いものの、朝、心疾患が増える理由は察しがついています。人間は寝ている間に汗をかき、水分が抜け、また血液凝固系が高まり血液がドロドロになる。そんな状態にもかかわらず、目が覚めると体は血圧を上げようとするので、血管は泥水を押し流すような状態になってしまい、詰まってしまうのです」(柴田さん)

※女性セブン2019年3月21日号

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