血圧、本当の危険値は? 上が160以上でもOKな年齢も

血圧、本当の危険値は? 上が160以上でもOKな年齢も

血液検査のための採血(東京都千代田区の九段クリニック) (時事通信フォト)

 高血圧を始め、様々な生活習慣病の治療が始まる端緒となるのが、日本人の多くが受診する健康診断の「基準値」である。「健康」か「病気」かを見極める境界線だ。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。

 長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『「血圧147」で薬は飲むな』著者の大櫛陽一氏が指摘する。

「米マサチューセッツ州フラミンガムの住民を追跡調査した研究では、5歳刻みで心筋梗塞など心疾患に対するリスクが異なることが明らかになりました。健診の基準は男女別、年齢別でなければ役に立たないのです。そもそも20歳の男性と、80歳の男性を同じ基準で判断できるわけがない」(以下、「」はすべて大櫛氏)

 大櫛氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表した。その数値が健診の基準値とはかけ離れていたため、各専門医学会からは猛反発が巻き起こった。

 しかし、大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。

 大櫛氏が調査したデータの中から、「血圧」について見てみよう。

 これまで高血圧の治療を受ける患者が目標とする血圧は、75歳未満なら140/90(最高血圧/最低血圧)mmHg未満とされていたが、4月に日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドラインの改訂を控え、130/80未満に変更される。

 しかし、「大櫛基準」では、血圧は65歳男性なら上が165、下が100までが基準範囲(正常値)で、130まで下げる必要はないことになる。なぜこれほど数値の開きがあるのか。

「そもそも高齢者は、ある程度血圧が高くなければいけないのです。年を重ねるにつれ、皮膚がかさかさになって硬くなるのと同様に、血管も硬くなっていきます」

 これは動脈硬化ではなく、糖化という細胞の老化によって起きる現象だという。

「硬いゴムホースで水を送り出すには水に勢いがないといけないように、硬い血管を通して血液を送り出すには、血の勢い(血圧)も強くなければいけない。血圧が年齢によってある程度高くなっていくのは『正常』と言えるのです。だからこそ血圧の健康基準範囲も、年齢ごとに見る必要がある」

 大櫛氏は年齢ごとの血圧の「大櫛基準」を下回ると起こるリスクについてこう話す。

「体内では脳が最も多く血液を必要としていますが、問題なのは脳が血液を送り出すポンプである心臓よりも上にあること。日中行動しているときなどは、重力の抵抗を受けているので、上向きに血液を送り出すには、高齢になるほど強い圧力が必要になる。圧力が弱まって脳に血が巡らないと、めまいや貧血、最悪の場合は脳梗塞の原因にもなる」

 大櫛氏が特に警鐘を鳴らすのは、今回のガイドラインの改訂で目標値(降圧目標)が変更されることで、降圧剤を処方される人が増えることだという。

「私の推計では、降圧剤の服用を勧められる治療対象者はこれまで約1660万人だったのが、約4000万人に増えます。複数の研究や調査により、降圧剤で20以上血圧を下げると脳梗塞の発症率や死亡率が高まることがわかっている。急激な血圧低下により血流が悪くなり、血栓で脳の血管が詰まってしまうのです。

 私が福島県郡山市の約4万人の男女(平均年齢約62歳)を平均6年間追跡調査したところ、血圧が180/110以上の人で降圧剤を使って血圧を最大20以上下げた人は、使わなかった人より、死亡率が5倍も高いという結果が出ました」

※週刊ポスト2019年3月29日号

関連記事(外部サイト)