あさのあつこ、坂東眞理子『70歳のたしなみ』をどう読んだか

あさのあつこ、坂東眞理子『70歳のたしなみ』をどう読んだか

「70代」を語る作家のあさのあつこさん

 平成が終わる。この30年で少子高齢化は大きく進み、人生100年時代が現実のものとなった。それにひきかえ私たちの心は昭和の頃と同じで、人生70年時代とまるで変わっていないのではないか──そんな問題意識のもとに綴られた昭和女子大学理事長・総長で330万部超のベストセラー『女性の品格』(PHP新書)著者・坂東眞理子さんの新著『70歳のたしなみ』(小学館刊)が早くも重版するなど、大反響を呼んでいる。幸せな高齢期を送るために本書から何を学び取ればいいのか。『バッテリー』などの著書で知られる作家・あさのあつこさん(64才)が綴った。

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『70歳のたしなみ』は、「高齢者」とくくられてしまう70代に対し、「生きる」ことをちゃんと考えようよと語りかけている、とても珍しい本です。書店に行けば、高齢者に向けた、遺言の書き方や墓仕舞いなど「死ぬ」ことに向かって書かれる本が並んでいます。それを見ていても、まるで先が見えてきている高齢者には生き方を問う必要がないと言わんばかり。そんな中、この本では70歳になっても80歳になっても人としてのたしなみを生き方によって新しく得ることができるということを教えてもらえます。

 先生が本書で「素晴らしい高齢期を生きる人を探す」と書いているような70代は周りにはいませんが、あえて挙げるなら、4歳上の姉でしょうか。第1章の冒頭、「意識して上機嫌に振る舞う」は、日々を機嫌良く過ごすことで、周りや自分自身が心地良くいられるというお話でした。これを読み、姉のことが思い浮かびました。

 私は、姉が機嫌の悪い時を見たことがありません。亡き母の介護をほぼ1人でがんばってくれていた時ですら、愚痴一つこぼさない。介護期終盤には、母にアルツハイマー型認知症の症状も出ていたので、「私、代わろうか?」と手助けを申し出たことがあります。その時も、「大丈夫。お母さん、子供みたいなこと言うから面白いんじゃ。あんたは仕事あるからいいよ〜」とあっけらかん。私だったら、「私ばっかりに押しつけて」とかぶつぶつ言ってしまいそうですが、姉には全然そんなことがないんです。

 そんな姉は今、70歳手前にして、「ちょっと行ってくるわ」と言い、トルコに一人旅に出かけました。彼女は昔から、アフリカの僻地に行ったり、インディアンの部落に半年間入り込んで一緒に暮らしたりして周りを驚かせていました。この先も世界各国を飛び回るため、体力作りの水泳と英会話は続けているんですよ。姉はまだ68歳ですが、きっとこの本に登場する70代、80代のように、老いも含めて前向きな高齢期を過ごすのだろうと思います。

◆「枯れる」のではなく「実」をつける準備期間

 私自身に関していえば、いろんなものに真っ正面から向かっていく70代を過ごしたいですね。

 一つは、70代にしか書けない物語を書くこと。90歳過ぎまで生きていた祖母が、とても波瀾万丈な生を生きた人だったので、そんな祖母の一生を書いてみたいんです。ただ、60代の今はまだ無理。老いていく面白さや辛さ、喜びも悲しみもある程度知った上でないと、祖母の人生を書けないと思うから。年を重ねた上で、創作意欲が衰えないうちにしっかりと長い物語を書きたいですね。

 もう一つは、本を通してではなく、自分の目で世界を見て回ること。その国にどんな人がいて、そこでどんなふうに生きているかをちゃんと見てみたい。

 他にも、私がやることで、私の目の前の世界がほんのちょっとでも変わることを、現実の世界の中でやっていきたいですね。

 70代は、「枯れる」というより、未来に向けて根元にたっぷりと知識やエネルギーを溜め込む時期。散ってしまう花ではなく、自分の人生の「実」をつけるための準備期間ですね。だから、仮に73歳で亡くなっても、70歳で何かをしたら、それは立派な実をつけていることだと思うんです。

 そうした思いや考えが坂東先生の『70歳のたしなみ』で裏打ちされて、とても励まされました。

【プロフィール】
あさのあつこ/1954年岡山県生まれ。作家、児童文学作家。現在、岡山で夫とふたり暮らし。ミリオンセラーとなった『バッテリー』をはじめ近著の『ラストラン ランナー4』など10代の青春を描く作品が多い。

※女性セブン2019年4月25日号

 

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