坂道学会会長が美女を指南 坂道散歩の楽しみ方と名坂の条件

坂道学会会長が美女を指南 坂道散歩の楽しみ方と名坂の条件

釣堀坂を歩く坂井さんと團さん

 ぶらり街歩きには最適な季節がやってきた。三井財閥総帥の玄孫でもあるタレント・團遥香が“日本坂道学会”会長の山野勝氏を案内人に、東京の坂を歩いた。

團:懐かしい! この釣堀坂は、子供の頃に父(建築家の團紀彦氏)とよく歩きました。近くの釣り堀に来ていたんです。

山野:江戸時代からの坂道ですが、釣堀坂と名付けられたのは明治以降です。当時、坂道の下に釣り堀がたくさんあり、お父様と行かれた釣り堀「衆楽園」は、最後に残っていた1軒でした。

團:思い出の詰まった大好きな坂です。父とも「あの坂の一帯だけ急に雰囲気、空気感が変わるよね」とよく話をしていました。

山野:これぞ「江戸の坂」という情緒がありますよね。この周辺もそうですが、港区は名坂の宝庫なんです。

團:私は坂道の標識に書いてある歴史や由来を読むのが好きなのですが、坂道散歩の楽しみ方を教えていただけますか?

山野:1つの坂を春夏秋冬、朝昼晩と何度も歩くのが理想です。季節、時間により雰囲気が異なり、その坂道の奥深さがわかります。私は約25年続けています。

團:私が生まれた頃(1993年生まれ)から、坂を探訪されているのですね。

山野:実はタモリさんと日本坂道学会を結成しています。酒場で偶然、坂の話で意気投合したのが発端です。私が年長なので会長、タモリさんが副会長。メンバーはこの2人だけです。

團:会長さん、いい坂の条件というのは、あるのですか?

山野:勝手に決めているのですが(笑い)、名坂の条件は、「急である」「湾曲している」「江戸情緒が残っている」「坂名の由来が面白い」の4つ。と言っても坂は好み。團さんがいいなぁと感じる坂が名坂なのです。

團:歴史や由来を知ると、見える景色も変わりますね。きょう訪れた坂も違う季節に再訪してみます。私も坂道学に足を踏み入れちゃったかな(笑い)。

山野:これを機会に、ぜひ江戸の500坂を歩いてください。

●蜀江坂/白金の聖心女子学院の西側に位置する蜀江坂は、緩やかに屈曲しながら流れる優雅な坂。「坂上にあった寺の楓の美しさを、昔の中国の紅葉の名所『蜀江』になぞらえたのが坂名の由来です」(山野氏)

●奴坂/南麻布3丁目の住宅街を湾曲しながら抜ける奴坂は、すり鉢状に下がって上がる。「由来は、竹ヶ谷(たけがやつ)の小坂で谷小(やっこ)、薬王(やくおう)がなまってやっこう、奴が多く住んでいたからの3説があります」(山野氏)

●薬園坂/南麻布の高台から四の橋交差点へ下る薬園坂(御薬園坂)は、長い急坂。江戸時代に坂の西側に幕府の御薬園(薬草の栽培所)があったのが坂名の由来。なまって役員坂、御役人坂とも呼ばれる。イラン・イスラム共和国大使館外壁の異国の雰囲気と、江戸の坂が交わるのも面白い

●釣堀坂/薬園坂上から下る途中、南麻布3丁目9と11の間を右折すると、閑静な住宅街の間に釣堀坂が出現する。すり鉢状の坂で、狭く急な下り坂の先に平坦な道が少し続き、その先に石段の上り坂がある。「かつて谷間には大きな釣り堀がありました。いま私たちが立っている下り坂の道幅は、江戸時代の道幅と同じと思われます。奥に見える石段の上り坂と合わせて1本の坂道を形成しています」(山野氏)

【PROFILE】
◆だん・はるか/1993年生まれ、東京都出身。聖心女子大学卒業。2010年、芸能界デビュー。女優、タレント、レポーターなど幅広い分野で活躍する。朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)にレギュラーレポーター(毎週月・火・木)として出演中。高祖父は三井財閥総帥の團琢磨、祖父は作曲家の團伊玖磨、父は東京・日本橋のコレド室町などを手掛けた建築家・團紀彦氏。

◆やまの・まさる/1943年生まれ、広島県出身。坂道研究家、日本坂道学会会長。早稲田大学卒業。出版社社員時代から趣味で坂道研究に打ち込む。現在はNHK文化センター、朝日カルチャーセンターなどの坂道講座で講師を務める。著書に『大江戸坂道探訪』(朝日新聞出版)など。

●撮影/吉場正和 取材・文/上田千春

※週刊ポスト2019年5月3・10日号

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