平成の“場当たり的体質”はもういらない、忖度バカは去れ

平成の“場当たり的体質”はもういらない、忖度バカは去れ

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 平成が終わり、令和という新しい時代が始まった。平成とはどんな時代だったのか。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、平成の場当たり的体質について振り返り、未来について考えた。

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 平成という時代の終わりに、2人の政治家が辞任に追い込まれた。一人は塚田一郎参院議員。下関北九州道路の整備について「首相や副総理が言えないから、私が忖度しました」と手柄話のように語り、国土交通副大臣を辞任した。

 本人は「大きな会合で雰囲気にのまれ、事実と異なる発言をしてしまった」と釈明しているが、本音が漏れてしまったのだろうという見方もある。

 そもそも忖度に流儀があるとすれば、黙って相手の意を汲む、暗黙のルールのようなものがあると思うのだが、この人は、忖度を自慢してしまった。ぼくは一昨年、『忖度バカ』(小学館新書)という本で、忖度が生まれる心理と構造について書いたのだが、忖度を吹聴するのは新手の忖度バカである。

 もう一人は桜田義孝前五輪大臣。官僚のペーパーを読むだけの大臣というのはいるが、桜田さんに関してはペーパーもまともに読めなかった。数々の失言を連発し、挙げ句の果てに東北の復興を軽んじる発言をして、自らとどめを刺した。

 当初、安倍首相は桜田さんの起用を「適任」と言ってきたが、自分が三選されたことに対する、自民党幹事長への忖度によって配置された大臣だったことはよく知られていた。

 こんな内輪受けの忖度政治は、もう平成で終わりにしてもらいたい。塚田さん、桜田さんには拙著『忖度バカ』を読んでもらいたいものだ。

◆次世代の若者たちは、日本という国を信頼できるか

 平成7年には阪神・淡路大震災が発生。同じ年にオウム真理教の地下鉄サリン事件が起こり、足元の安全が壊れていく。そんな不穏な空気も、景気を冷え込ませる一因になったのではないか。

 日本は1985年以降、世界最大の債権国となっている。それにもかかわらず国債発行額は毎年150兆円にも上っている。2019年度末には国の借金は1122兆円にもなる。何の新しい改革もなく、その場しのぎを続けてきたツケである。

 世界三大投資家のジム・ロジャーズは近著のなかでこんなことを語っている。

「もし私が10歳の日本人だったとしたら、日本を離れて他国に移住することを考えるだろう。30年後、自分が40歳になった頃には、日本の借金はいま以上に膨れ上がって目も当てられない状況になっている。いったい誰が返すのか──国民以外、尻拭いをする者はない」

 ジム・ロジャーズの予測が的中するとして、尻拭いをさせられる次世代の若者たちは、日本という国を信頼できるのだろうか。

 10月には消費税が10%に上がる。平成元年に初めて導入された消費税は社会保障と少子化対策に充てるはずだった。だが、キャッシュレスで決済した消費者へのポイント還元や商品券発行などのおためごかしはあるものの、消費税増税後、この国をどんな国にしたいのか、まるで見えてこない。

 ともあれ、いやがおうでも令和の時代が始まった。この先も、ツケを先送りしていくだけならば、空はたそがれを過ぎて、真っ暗闇になるだろう。

 権力に忖度している暇があったら、日本が抱えている本当の問題に真剣に立ち向かうべきだろう。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2019年5月31日号

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