三国志の“聖地”訪ねる1泊2日の弾丸旅 専門家推奨ルートは

三国志の“聖地”訪ねる1泊2日の弾丸旅 専門家推奨ルートは

中国中部、湖北省にある「赤壁の戦い」の舞台とされる場所(時事通信フォト)

 東京・上野の国立博物館で開催中の特別展「三国志」。「リアル三国志」を標榜する展示の見どころは、近年になって新発見が相次ぐ三国時代の考古史料の数々だ。一方、歴史作家の島崎晋氏は、「三国志」を体感するなら“三国志の聖地”を実際に訪ねるのがお勧め、という。同氏が、日本から1泊2日の弾丸スケジュールで行けるプランを提案する。

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 三国志は2世紀末から100年余り続いた中国乱世の物語である。後漢王朝を揺るがす大反乱「黄巾の乱」に始まり、統一が崩れた後の群雄割拠時代を経て、それらが曹氏の魏、孫氏の呉、劉氏の蜀の三国にまで淘汰され、さらに魏に取って代わった司馬氏の晋による天下統一をもって終わりとする。

 歴史書として4世紀初頭に成立した『三国志』が「後漢から魏を経て晋へ」という帝位継承を正統な流れとしているのに対し、14世紀に著わされた小説の『三国志演義』は「後漢から蜀を経て晋へ」という帝位継承を正統とする立場をとっている。

 蜀の建国者は、漢帝室の流れを引き、人徳にも優れた劉備という英傑で、彼を補佐したのは武人では関羽と張飛、頭脳役は諸葛亮(孔明)だった。魏の事実上の建国者は曹操、呉の建国者は孫権で、魏が黄河流域の華北一円を支配下に収めていたのに対し、蜀は中国西南部、呉は東南部を支配下に置いていた──。

 日本から中国の地方都市にまで直行便が飛ぶようになったおかげで、1泊2日の“弾丸ツアー”でも訪ねることのできる三国志ゆかりの史跡、いわゆる三国志の聖地も着実に増えている。ここでは直行便のある北京、江蘇省の南京、浙江省の杭州、湖北省の武漢、四川省の成都から行ける聖地を紹介しよう。

◆北京編

 北京から行けるのは劉備・関羽・張飛が世直しに生涯を捧げるべく、義兄弟の契りを結んだタク州(河北省保定市)で、ここには3人が同じ日、同じ場所で死ぬことを誓い合った「桃園の誓い」を記念した三義宮をはじめ、劉備故里、張飛の井戸(張飛古井)、張飛を祀った張桓侯廟、劉備の学問の師であった盧植の墓などが点在している。

 北京市の中心部からタク州市までは直線距離にして約70キロ。路線バスでも行けるが、高速列車を使えば北京西駅からタク州東駅まで30分弱。駅からタクシーをチャーターしてまわればよい。もちろん北京からチャーター車という手もあるが、現地に不案内なドライバーの場合、カーナビに出てこないところは土地の人に何度も尋ねながら行くことになるので、時間ロスの大きさを覚悟しなければならない。

 どういう交通手段を利用するにしても、初日は北京に泊まるだけ。2日目に朝早くから行動を始めれば、夕方の便での帰国が可能である。

◆南京、杭州編

 一方、中国東南部・江蘇省の南京にあるのは、呉の最後の宮城であった石頭城と孫権の墓および呉大帝孫権記念館で、後二者は隣接している。半日あれば路線バスでもまわれるが、初心者に中国のバスはハードルが高いので、タクシーをチャーターするのが無難だろう。

 江蘇省の南にあるのが浙江省で、そこの省都が杭州である。ここからは孫権故里と諸葛孔明の子孫が集団で住む諸葛八卦村へ行くことができる。孫権故里と称している場所は杭州市の南西に位置する富陽市に2か所あって、一つは龍門鎮、もう一つは場口鎮という村である。前者が清代の街並みを残す古鎮として村全体がテーマパーク化しているのに対し、後者には「呉大帝故里」と刻まれた石碑が建つのみだが、実際の孫氏一族の出身地は後者とする説が有力である。

 残る諸葛八卦村だが、これは諸葛孔明の孫・諸葛京の子孫が南北朝時代に赴任を命ぜられたことに由来し、住民全員が諸葛姓の村で、清代の街並みも残るなど、非常に風情あるところである。タクシーをチャーターして2日に分けてまわってもよいし、2日目にまとめてまわっても、夜の便で帰国することができる。

◆武漢、成都編

 武漢の場合、到着したその日に三国志で最も有名な戦いの舞台「赤壁」まで行って宿泊。翌日は赤壁を見学してから武漢に戻り、呉の重臣であった魯粛の墓(衣冠塚)と関羽ゆかりの卓刀泉、劉備ゆかりの郊天壇などを見てまわるのがお薦め。帰国は直行便の時間に間に合わなければ上海乗り継ぎ便を利用すればよい。魯粛の墓のすぐ近くには曹操の騎馬像、そこから少し離れたところには孫堅(孫権の父)・孫策(孫権の兄)・孫権の3人そろっての銅像もある。

 最後に成都である。ここでのお薦めは諸葛孔明を祀った武侯祠とその中にある劉備の墓(恵陵)である。中国では劉備が白帝城で亡くなったのが旧暦の4月24日、今の暦に直せば初夏にあたるため、恵陵に葬られたのは遺品のみで、遺体は成都まで運ばれる途中で葬られたとする説が強く、本当の陵墓を探す調査が今なお地道に続けられている。

 武侯祠は中国全土にあわせて数十か所あるが、一番の聖地とされているのはやはり蜀の都のあった成都のそれで、孔明の墓のある漢中市勉県(陝西省)のものがそれに次ぐ。成都で三国志グッズを買いたければ、武侯祠に隣接する錦里(ジンリー)歩行街か、そこから少し離れた寛窄巷子(かんさくこうし)という通りがお薦め。夜はその日の演目が三国志であれば、川劇(せんげき)という地方劇を鑑賞するのもよいだろう。往路は直行便だが、帰りは時間的に上海か北京乗り継ぎ便での帰国になる。

 どこを回るにもタクシーをチャーターするのが便利だが、不安な人は現地旅行社を通じて、ガイド兼ドライバーを雇う手もある。安さを選ぶか確実かつ効率のよさを選ぶかは各人の自由。思い思いの旅を楽しんでもらいたい。

【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『春秋戦国の英傑たち』(双葉社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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