高殿円×宇垣美里「恋愛が二の次で何が悪いの?」で合意

高殿円×宇垣美里「恋愛が二の次で何が悪いの?」で合意

高殿円さんと宇垣美里さんが対談

 ベールに包まれた外商の仕事を赤裸々に描いて人気の小説『上流階級 富久百貨店外商部』(高殿円・著)。シリーズ続編(文庫版第2巻)の発売を機に、かねてから同作のファンだったというフリーアナウンサーの宇垣美里さんと著者の高殿さんとの対談が実現しました。

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宇垣:私は子供の頃から百貨店が大好きで、両親によく連れて行ってもらっていました。でも上級顧客を扱う外商部とは、もちろんまったく無縁。『上流階級 富久丸百貨店外商部』でその実像に触れ、うわぁ、本当にこんなきらびやかな世界があるんだと、驚きました。高殿さんは、なぜこの本を書こうと思われたのですか?

高殿:たとえばロンドンに行くと、ハロッズやセルフリッジズなどの老舗百貨店は今なお憧れの存在です。でも、一巻を書いた当初は、関西は今のようにインバウンドの恩恵もなく、日本の百貨店は元気が無いと言われていました。それが悔しくて、何かのかたちで応援したいという気持ちがあったのかもしれません。

宇垣:そうだったんですね。そして、舞台として選ばれたのが、百貨店の中でも特殊というか、特別な仕事を担当している外商部です。

高殿:他のすごい作家さんたちがすでに手を付けているところを、後から私が書いてもなかなか注目されないだろうと思っていました。ここに鉱脈があるんじゃないかと勘が働いたのが、百貨店の外商という仕事だったんです。

宇垣:私たちの慎ましやかな生活とはまったくかけ離れた世界なのに、まるで隣町で起こっている出来事のように感じるリアルなエピソードが満載です。読んでいて、もしかしたら高殿さんは、百貨店の外商に勤められたご経験があるのではないかと思いました。

高殿:うれしい。取材をもとに想像力をフル稼働して書いた作品なので、著者にとって一番の褒め言葉をいただきました。

宇垣:外商部はまさしく“上流階級”の方々を相手にされる仕事です。情報管理も徹底されていると思います。取材するのは難しくありませんでしたか。

高殿:百貨店を舞台にした小説はあっても、外商部にフォーカスしたものはありません。他の作家さんがなぜ書いていなかったか。宇垣さんがおっしゃるとおりリサーチが難しいんですね。私は、いつも出たとこ勝負。思い立ったらまず突撃取材をするんです。

宇垣:突撃ですか! いきなり乗り込んでいくわけではないですよね(笑)。

高殿:まぁ、似たようなものですけれど(笑)。国内の有名百貨店の広報部に、かたっぱしから外商部の取材をしたいと申し込みました。でも、どの百貨店も口裏を合わせているんじゃないかと思うくらい見事に返事はNO。そんななかかで唯一、ちょっとだけなら話を聞いてあげてもいいよと、門戸を開いてくれたのが大丸さんだったんです。

宇垣:やっぱり大丸さんがモデルなんですね。なんか、うれしい。私も神戸育ちなので、地元の百貨店といえば、ずっと大丸でした。

高殿:もちろん最初から、詳しいお話を聞くことはできません。何度もしつこく足を運んでいるうちに、少しずつ教えてくださるようになって、こうじゃないか、ああじゃないかと手探りしながら書いたのが1巻です。取材先は大丸さんだけじゃなくて、三越をお辞めになったカリスマ外商員の方や、そごうや伊勢丹などで働いていらっしゃる方も個別にリサーチして、混ぜて書いています。

宇垣:義母の財産を当てに脛をかじる嫁たちやワケありっぽいセレブなども登場して、顧客の顔ぶれもバラエティに富んでいます。ヤクザさんが出てくるのも神戸らしいといえば神戸らしい(笑)。

高殿:それでも、さすがに外商員の方を直接取材するのは難しい。そこで外商部の顧客である芦屋のリッチな方にコネクションを持っている人は誰だろうと考えました。いろいろリサーチする中で、不動産業の方ならご存じじゃないかと。たまたま、ある不動産会社の社長さんとご縁が出来て、お話を伺わせていただきました。もちろんプライバシーに関わるようなことはお聞かせ頂けませんが、漏れ聞こえてくるエピソードの断片をジグソーパズルみたいに組み合わせていくうちに、なんとなく芦屋のセレブとお付き合いする外商の世界ってこうなんじゃないかと見えてきたんです。一度だけ、外商さんに同行させていただいたことがあるのですが、アタッシュケースに宝石がごろごろ入っていて、その総額がなんと10億円。持ってみますか? どうぞ、どうぞ、って無造作にケースを渡されても…小市民なもんで、震えちゃいました(笑)。

宇垣:私が外商員だったら、盗まれるんじゃないかと心配で、アタッシュケースをぎゅっと抱きかかえて歩きそう。挙動不審で怪しい人だと思われちゃうかも(笑)。

高殿:主人公の静緒は、男社会の外商部に配属されるけれど、それでも自分を曲げずに正面突破で突き進んでいきます。なんとなく宇垣さんに似ているのかなと思いました。

宇垣:バリバリ頑張っている静緒の姿は、すごく励みになりましたし、恋愛が二の次で何が悪いの?という生き方には、ちょっと背中を押してもらいました。

高殿:やっぱり、そうなんだ。

宇垣:私はこれまでの人生の中で、女性に嫌がらせされるより、男性に嫌がらせされることのほうが圧倒的に多かったんです。女性はネチネチしていて陰湿だって言われるけれど、それは違うと声を大にして言いたい。マスコミも男性中心の社会なので、古い体質のところもあるけれど、「お茶くみをしろ」だとか「セクハラなんてうまくうけながせばいい」という風潮に対しては、最初の段階から「NO」と大きな声で言っていました。それが良かったのか悪かったのかはわかりませんが、これからはもっと私のような女性が増えてくるでしょうし、そうじゃないといけない。いなすんじゃなくて、ガチンコ勝負したほうが良くない?って思います。静緒のようにね。

高殿:かっこいいなぁ。宇垣さんに課金したい(笑)。

宇垣:静緒と同僚のセレブでゲイの男子・修平とのふしぎな同居や、静緒に目をかけ応援してくれるステキな大先輩・葉鳥さんとの関係など、ちょっぴりうらやましくなるような人間関係も描かれていて、こんな私でもまだまだ頑張れると勇気をもらえる作品です。多くの皆さんに読んでほしいですね。

◆文・構成/片原泰志 撮影/五十嵐美弥

【PROFILE】
宇垣美里(うがき・みさと)/フリーアナウンサー。1991年生まれ、神戸市出身。同志社大学卒業後、TBSに入社。情報番組『あさチャン!』、バラエティ番組『炎の体育会TV』、報道番組『ニュースバード』などを担当。2019年4月よりオスカープロモーションに所属、フリーアナウンサーとして活躍中。

高殿 円(たかどの・まどか)/神戸市生まれ。2000年に『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。『トッカン 特別国税徴収官』『上流階級』はドラマ化され話題に。ほか『政略結婚』など著書多数。

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