映画好きの鎌田實医師のおすすめ映画3本はコレ!

映画好きの鎌田實医師のおすすめ映画3本はコレ!

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 週に2〜3回は映画館へ通う諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、この夏におすすめの映画を3本、紹介する。

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 暑さを避けて行く所といえば高原か、海か。映画大好きのぼくは、やっぱり映画館に避難したくなる。シートに深く沈みこんで、暗闇のなかに身をひそめると心底リラックスする。年間100〜150本のペースで映画を見ているが、この夏、気になった映画を紹介しよう。

 まずは『世界の涯ての鼓動』。ノルマンディーの美しい海岸で、偶然出会った男女が恋に落ちる。監督は、『ベルリン・天使の詩』で有名な巨匠ヴィム・ヴェンダースだ。

 男はMI6諜報員、女は生物数学者という設定。生物数学者って何だという疑問はさておき、2人はお互いを運命の相手だと悟りながらも、それぞれ死を覚悟して任地へ赴く。2人とも死と隣り合わせになるなかで、愛の記憶に支えられて「生きたい」と願う。「狂おしくも切ないラブサスペンス」というだけあって、果たして2人は生きて再会できるのか?

 美しいのは、海、死、愛というすべてを包み込む大きなイメージだ。波に揺られながら、2人の鼓動が響き合い、男女の愛、さらに生命への大きな愛を歌う。

 次も恋愛映画。『COLD WAR あの歌、2つの心』は、71回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した作品。監督は『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキだ。

 舞台は、冷戦下のポーランド。ピアニストのヴィクトルは、音楽舞踊団の養成所で、歌手を夢見るズーラと出会う。2人は魅かれ合い、すれ違ってもなお求め合わずにいられない。

 88分と短い映画だが、説明を極限までそぎ落とし、壮大な物語を描くことに成功している。白黒の映像も、かえって鮮やかに見えるから不思議だ。

 なんといっても音楽がすごい。クラシックや民族音楽、ジャズ、ロック……。過酷な時代において、生きること、歌うこと、愛することのエネルギーにあふれたズーラの心と、音楽が呼応する。

 映画を観終わった後、「2つの心」という悲恋の歌がしばらく耳から離れない。特に、この歌のジャズバージョンにはしびれる。すべては消え去っても、愛だけが歴史や世界を超えると思わせてくれるような歌声だ。ズーラを演じる女優ヨアンナ・クーリクがとてもすばらしい。

 最後は『さらば愛しきアウトロー』。ロバート・レッドフォードの俳優引退作品だ。レッドフォード扮するのは、16回の銀行強盗と脱獄を繰り返した実在のアウトロー。紳士的な態度と鮮やかな手口は、彼を追う刑事も魅了していく。

 50年前の『明日に向って撃て!』を彷彿とさせる、どこか懐かしい香りがするこの作品は、往年のスターが映画ファンにくれた最後の愛のプレゼントともいえる作品になった。

 輝くような二枚目だったレッドフォードが、80歳を過ぎて深いシワを顔に刻んでいる。このシワを見るだけで、映画を一本みたような満足感があった。一映画ファンとして、彼の俳優人生に、愛と感謝を贈りたい。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2019年8月16・23日号

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