夏休みの自由研究に塾が「対策講座」を開設する背景

夏休みの自由研究『対策講座』を塾が開設するケースも 中学受験などの生徒確保目的か

記事まとめ

  • 夏休みの自由研究は、今では塾に行けば何をやるか教えてもらえるのだという
  • 『TOMAS』のように、塾が『自由研究対策講座』を開設するケースは珍しくないらしい
  • 美術館が自由研究用特別講座を開くケースもあるが、『目的』の変質を危惧する声もある

夏休みの自由研究に塾が「対策講座」を開設する背景

夏休みの自由研究に塾が「対策講座」を開設する背景

毎日観察するなんてやってられない?

 小学生の夏休みの宿題のなかでも、最も手間がかかる自由研究。昭和世代の大人は、アリの巣を作ったり、アサガオの観察日記をつけたり、電池とモーター、豆電球などを使った工作をしたりと、苦心した記憶が思い起こされるが、今やそうした場面はまったく様変わりしている。都内在住の60代男性はこう話す。

「息子が小学生だった時は、8月下旬を迎えた頃に“何もできていない”という話になり、一家総出で手伝ったものでした。一度、ほとんど妻が描いた絵が校内で金賞を獲ってしまい、罪悪感に苛まれたこともありましたが、今はどうしているのか息子に聞いてみたら“塾に行かせれば何をやるか教えてもらえるんだよ”と話していました。息子家族は共働きで自由研究を見る余裕がないとはいえ、時代も変わりましたね」

 塾が「自由研究対策講座」を開設しているケースは珍しくない。

 関東を中心に展開する個別指導塾『TOMAS』では、『夏休み自由研究テクニック講座』を展開している。今年のテーマは「洗濯」で、「身近なモノで洗濯機を作る」「洗剤のヒミツを探る」という2つの課題に取り組む。

 1回80分の講座の参加費は無料(要予約)で、これまでに7000人の子供が参加したことが公表されている。塾としても中学受験、高校受験の生徒確保のための機会ととらえているようだ。

 他にも美術館が夏休みの自由研究用の特別講座を開くケースなどがある。観覧料さえ払えば、見学からレポート指導まで受けられ、1日で自由研究が完成させられる。

 様々なかたちで“外注”ができるようになり、昔より格段に「質の高い自由研究」ができる時代になったことは間違いないだろう。ただ教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は「本当に大事なことを忘れてほしくない」と話す。

「優れた自由研究をすることが目的になってしまったら、自由研究の“本来の目的”が失われると思います。夏休み中に、気づいたこと、気になったことを自分で調べてみる、ということが本質のはずです。

 学校側も本来は、『わかったことをまとめて提出してくれたら嬉しいな』くらいにしておくほうがいいのです。『提出期限』と言われた瞬間に主体性はなくなります。

 やりたい人が勝手にやって、その成果を見た他の生徒たちが、内心『あいつ、すげー』と思って、『来年は自分も何かやってみよう』と自発的にやる気になるのが理想的。ただ、親も先生もそれを待てないというのが現状ではないでしょうか」(おおた氏)

※週刊ポスト2019年8月30日号

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