萩本欽一、尾木ママら、やりたいことがありすぎる人々の告白

萩本欽一、尾木ママら、やりたいことがありすぎる人々の告白

尾木ママが目指すのは100歳

 写真家・渡辺達生氏が、晩年にこれまでの人生を祝う意味を込め、葬儀で使用する「遺影」を「寿影」と置き換えて始まったプロジェクトから、『週刊ポスト』のグラビア連載「寿影」は始まった。2018年2月から50回にわたって続いた連載に登場した有名人からよく聞かれたのは、やりたいことが多すぎて、まだまだ生きなきゃもったいないという力強い言葉だった。

 コメディアンの萩本欽一氏(78)が駒澤大学の仏教学部に合格し、大学生となったのは御年73歳のとき。

「僕ね、ダメって諦めたことない。余計に面白がる。で、大体成功。神様は努力を裏切らないんだよ」

 コメディアンとして頂点を極めながら、社会人野球の球団を設立したり、大学生になるなど、笑い以外のことにチャレンジするのはなぜかを問うと、「いろんな笑いがある中で、自分の笑いはこれ以上突き抜けない。そこで悩むより、環境を変えることで違う笑いを見つけたいと思うからなんだ。つまりね、僕は違う世界で笑いの修業をしているんだよ」

 折りしも今年5月、萩本氏は大学を自主退学。大学での“修業”を終え、自身の笑いのフィナーレに向けて全力で取り組む時期を迎えたのかもしれない。

 教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏(72)は、年代や職業を問わず、多くの方が親しくしてくれたことで、人生が大きく膨らんだ。これからはその恩返しに、老いへの体験を隠さずに発信し、高齢化社会を豊かに生き抜くリーダーになりたいと語る。

「人生100年時代です。完全に高齢社会になってきて、年金システムなどさまざまなことが変わってきます。そういうことを高齢者が若者とパートナーシップを組んで、生き生きと共生できる社会を作っていきたいのです」

 目標実現のために目指すのは、本気で100歳。若々しく体幹を鍛えるべく、ストレッチに勤しみ、全力で走る。そして、老後の合言葉は、「アンチエイジングならぬ、アクティブ・エイジングよ!」と笑う。

 死にまつわる著書も多い知の怪人・荒俣宏氏(72)の口癖は、“死ぬのに失敗した人はいない”。

「みんな成功しているので、心配することはない。死なんて本当にどういうものなのか誰にも分からないのだから、大事に構えることはないと思う。私は死後の世界の本もたくさん翻訳したので、もう行かなくてもわかっているし(笑い)。とにかく、“元気であの世に逝こう”が、目下の心境です」と、明るい。

 それより心配するのは、カウントダウンが迫る残り時間をいかに生きるかが一大事だと語る。

「やりたいことがやたらあって困っちゃうほど。一番はダイビングで海の生物の神秘にもっともっと触れたい。寿命が1か月となっても潜りたい。そのまま上がって来ないなら、放ってもらっていいくらい。南の島で釣り三昧も夢だね〜」

◆森田さん、木村さんは何を思う?

 最年長お天気キャスターである気象予報士の森田正光氏(69)は、将棋通でアマ三段の腕を持つ。携帯電話には将棋アプリをいくつも入れて、暇さえあれば腕を磨く。常に若々しいのは、将棋のおかげかもしれない。

「老いての私の理想像は、将棋界の加藤一二三先生です。自然体で日本中から愛されるキャラですが、実は凄い人。自分もそういう“気象界のひふみん”路線で、まだまだ現役を貫きたい」

 これからの夢は、長く天文現象に関わる中で魅了された皆既月食を世界各地で見ることだ。イースター島で初めて見たダイヤモンドリングがきっかけとなり、これまで世界7か国へ飛んだが、近々で目指すのは2035年の日本。北陸から北関東で見られるときを楽しみにしている。

 映画人生62年。日本映画界屈指の名キャメラマンであり、67歳にして覚悟を決めて監督をやることにした木村大作氏(80)は、傘寿を迎えてもなお、映画人そのもの。

「僕は今、人生の終末を歩いている、いつ死んでもいいんだ、という思いはある。だけどね、僕にとってただ生きているのは死と同じなんだ。やっぱり映画が作りたい。映画のことしか頭にないからね」

 撮影も兼務した監督作品は、『劔岳 点の記』(2009年)、『春を背負って』(2014年)、『散り椿』(2018年)の3作。いずれも自然の映像の美しさは無論、全身全霊をかけて人の心を映し出した作品に悔いはないと語るが、それでも頭の中には次々と企画が湧き上がってくる。

「今は自分の歴史の中で題材にしていないもの、僕のピントに合う題材を探す旅の途中だね。この生き様は苦労も背負うけど、僕の理想の人生である」

●取材・文/下川良子(スペース・リーブ)

■渡辺達生作品展『寿影』
・10月4日(金)〜17日(木)11時〜19時
・ソニーイメージングギャラリー銀座:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階

※週刊ポスト2019年10月18・25日号

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