糖尿病治療薬SGLT2阻害剤 副作用リスクに注意を

 糖尿病患者は、その予備軍を含めると約2210万人いると推計されている。糖尿病は、体内のエネルギーとなる糖が筋肉などの細胞に取り込まれにくくなり、血糖値が上がる病気だ。その結果、全身をめぐる血管が弱くなり、進行すると糖尿病性網膜症や腎不全、末しょう神経障害などの合併症が起こる。

 従来の治療薬は、インスリン分泌を促進したり、糖の吸収を調節する作用のものだった。しかし、2015年に作用機序が違う治療薬(SGLT2阻害剤)が発売され、現在6種類の薬が臨床現場で使われ、効果を挙げている。

 順天堂大学医学部附属順天堂医院糖尿病・内分泌内科の綿田裕孝教授に話を聞いた。

「SGLT2(グルコーストランスポーター2)阻害剤の特徴は、痩せることです。最近、肥満の糖尿病患者さんが増えており、体重コントロールが課題です。この薬は血糖値を下げるだけでなく、体重低下ももたらします。今までの薬は、血糖値が低下しても体重が増えるというものもあったので、その点では画期的な薬といえます」

 血液中のブドウ糖は、腎臓の糸球体(しきゅうたい)で濾過されるが、その後、尿細管という場所で血液中に戻される。健常人では1日約180グラムの糖が糸球体で濾過され、そのほとんどが血液に再吸収される。この再吸収を担うのが、SGLT2というタンパク質だ。新しい薬は、このSGLT2の働きを阻害し、糖の再吸収を防ぎ、そのまま尿に出す作用をもつ。腎臓での糖の再吸収を阻害するので、低血糖などの副作用がほとんど起こらない。

 尿に糖が出る際、一緒に水分とナトリウムが排出されるので、脱水症状の懸念がある。しかし、糖尿病患者は水分過多でむくみを生じている人も多く、ある程度の水分補給で脱水の心配は少ないと考えられる。事実、通常脱水症状を起こすと血圧が下がり、心臓は血液を送り出すために脈拍が速くなるが、この薬は血圧が低下しても、脈拍は変わらないという特徴もある。

「特に肥満2型糖尿病患者には、効果が期待できる薬ですが、もともとインスリンが出ていない1型糖尿病の方が服用するとケトアシドーシスといって、脱水や嘔吐を起こし、進行すると意識障害を起こすこともあるので注意が必要です。また、尿中に糖が多くなるため、膣カンジダなど、性器感染症の発症リスクが高くなります。服用中は陰部を清潔に保つことも必要です」(綿田教授)

 SGLT2阻害剤は、1日1回の服用なので、患者にとっては使いやすいが、降圧剤のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)や利尿剤を併用すると血圧が下がりすぎることもありえる。

 最近、体重が減るということで、海外から個人輸入する例もあるようだが、副作用のリスクもあり、必ず専門医の指導のもと服用することが大切だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年10月28日号

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