効果曖昧な昭和の健康法 きゅうりパック、飲酢、生卵丸飲み

効果曖昧な昭和の健康法 きゅうりパック、飲酢、生卵丸飲み

風邪を引いたときに母が作ってくれたくず湯の思い出(写真/アフロ)

 父の急死によって認知症の母(84才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(55才・女性)が、介護の日々を綴る。今回のテーマは「飲みやすいもの」についてだ。

 * * *
 母と経口補水ゼリーを飲みながら、ふと昔母が作ったりんご入りくず湯、私的通称“ドロドロ”を思い出した。見た目は気持ち悪いが、のどを伝う温かいなめらかさがなんとも快感だった。健康法も手作りで工夫した時代を、2人で懐かしんだ。

◆のどをトゥルンと伝う懐かしいとろみの感触

 猛暑に加えて帯状疱疹にも見舞われた今夏の母。認知機能が顕著に落ちたのは「少なからず脱水の影響があるかも」との主治医の助言もあり、今年は初めて経口補水液を箱買いした。それも以前取材した看護師に高齢者が飲みやすいと教わったゼリータイプだ。

 パック容器に直接口をつけ片手でギュッと絞り出して飲むのが格好いい飲み方だが、世間知らずの母がうまく飲めるのか、ちょっと心配だった。

 母の部屋に箱ごと持って行った日、予行演習とばかりに2人で並んで飲んでみた。「これ何? 飲み物なの?」と、案の定、戸惑っているので、まず私が飲んで見せた。

 恥ずかしながら、実は私もこういう飲料はあまり経験がない。赤ちゃんが哺乳瓶で飲むようなぎこちない格好で容器を握ると、ブリブリっとゼリーが口の中に。思わず飲み込むと、トゥルンとした感触がゆっくりのどを伝った。

「なるほど、これで誤嚥しにくいのか…」と感心しながら、不意に懐かしい記憶がよみがえった。

 私が小学校低学年の頃だからもう50年近く前、かぜをひくと母がよく作ってくれた“くず湯”だ。もちろん高価な本くず粉ではなく片栗粉と砂糖を水で溶いて煮たもの。

 今はそれがくず湯だと知っているが、当時は熱くて奇妙な物体でしかなかった。しかも母はそこへすりおろしたりんごを加えたため、茶色く変色して不気味だった。私と父は“ドロドロ”と呼んでいた。

 かぜで悪寒がすると、母がいそいそと“ドロドロ”を作り「まずくても、飲んじゃえばこっちのもんよ!」と自信たっぷりに言った。恐る恐る飲むと、生温かくなめらかなものが、ヒリつくのどをなでるように落ちていくのだ。とてもおいしいとはいえないが、ほんのり甘くてやさしいのどごしが、弱った体を癒してくれる感じがした。

◆若かりし母が熱心だった昭和の健康法

 くず湯はのどを保護して体を温める、昔ながらのかぜの民間療法らしい。そういえば若い頃の母は、いろいろな健康法に結構、積極的だった。

 たとえば酢。体がやわらかくなると健康になるとか、根拠は全く不明だったが、基本的にまじめな家族3人だ。鳥肌が立つほどの酸味に身悶えながら水で薄めて毎日飲んだ。が、効果を感じる前に父が胃痛に耐え切れず、やめた。

 夏の風呂上がりには、よくきゅうりパックをやっていた。「色白になるの」と言いながら顔中にきゅうりの輪切りを貼る母を見て、小学生の私は「貼ったところだけ白くなったらどうするの?」と、水玉模様になる心配をしたものだ。

 そして母が40才頃だったか、少々病気がちになったことから、生卵を飲んでいた。どこで教わったのか、卵を茶碗に割り入れ、ほぐしも味付けもせず、勢いをつけてまさに“丸飲み”。母の姿に大蛇が重なり、怖かった。

 効果も根拠も曖昧だったが、健康への意欲は満々だった母。

「結構、ママは凝り性だったよね」と言うと、当時を思い出したのか、「なんでもやってみるものよ」と笑った。

 ふと見れば経口補水ゼリーも、上手に飲んでいた。

※女性セブン2019年11月28日号

関連記事(外部サイト)