参列者が戸惑う葬式演出、寄せ書きや集合写真呼びかけなど

参列者が戸惑う葬式演出、寄せ書きや集合写真呼びかけなど

サプライズに参列者も困惑(イラスト:福島モンタ)

 絶対に笑ってはいけないとされる葬式の場で、それでも思わず参列者の苦笑を誘ってしまう「おかしな葬式」。個性的すぎる演出やオプションに戸惑う人が増えているのだという。

 親族を中心に集まった友人の家族葬に参列した60代の男性は、お棺に花を捧げ、隅の方から故人の顔を見つめながら心の中で思い出に浸っていた。すると突然、葬儀社のスタッフから「(遺体に)声をかけてあげてください」と言われたのだ。男性はその声ですっかり現実に引き戻されてしまったという。

「ご家族の方々は、ご遺体の耳元で最後の思いを伝えていましたが、その近くに行って私が声に出して伝えるべき言葉が急には思い浮かばず、『ありがとうございました』と上ずった声で言うのが精一杯でした。どうしてもっと静かに見送らせてくれないのかと思いました」

 参列者が戸惑ってしまうほどのサプライズ演出を繰り出し、葬式をイベント化する。有限会社佐藤葬祭の佐藤信顕代表取締役は「ごく一部」としながらも、やはり“目に余る例”はあるという。たとえば故人へのメッセージを寄せるホワイトボードや大きな色紙。

「ボードは真っ白で誰も書こうとしていませんでした。急に『一言を』と言われても困るし、みんなから見えるボードに率先して書くのに躊躇する人は多い。余白が目立つので葬儀スタッフがペンを持って参列者一人ひとりに依頼していましたが、そこまでするくらいならボードは必要ないでしょう」(佐藤氏)

 参列者全員にカードが手渡され、故人に捧げるメッセージを書いてほしいと求められることもあるという。

 ある企業の元経営者の葬式では、お棺の中で眠っているはずの故人に、店頭にあるような等身大パネルとなって出迎えられ、「ぜひ一緒にお写真を」と促されたという人もいる。パネルの周りは、故人の足跡や思い出の品がまとめれらたメモリアルスペースになっていたという。

 葬式での写真撮影は不謹慎と受け止められかねなかったが、今では「参列者揃っての集合写真撮影」を呼びかけられることも、決して珍しくはないのだ。

 その気がなくても、故人と「最後の対面」をしてしまうこともある。かつて、最後のお別れは近親者のため時間で、その際には葬儀スタッフが「ご家族の方はお集まりください」と声をかけるのが常だった。故人との距離感によっては、望まない人もいるのだ。

「高度成長期には故人を直接知らない参列者が7割もいましたから、その声がけは当たり前でした。しかし最近は小規模な葬儀が多く、参列者のほとんどが近親者のため、特に制限を設けず対面を行なうことが一般的になっています。すると、さほど親しくなく、そのつもりがなかった人が『見なきゃいけないのかな』と戸惑いながら、流れで対面することになり、困惑することがあります」(葬送ジャーナリストの碑文谷創氏)

※週刊ポスト2017年5月26日号

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