胃がん・肺がんは若手医師向き、肺がんはベテラン向き

胃がん・肺がんは若手医師向き、肺がんはベテラン向き

優秀なドクターをどう見極める?

「いい主治医に巡り会いたい」──歳を重ね、体のあちこちに不安を感じ始めると、その願いは切実になっていく。とはいえ優秀なドクターを見分けることは簡単ではない。医師の力量は個人の資質と努力によるところが大きい。年齢・世代を問わず、正しい判断と適切な処置ができる優秀な医師は必ず存在する。ただし、それを前提としたうえで調査すると医療業界では「ベテラン医師が得意な病気・ジャンル」と「若手医師に向いている病気・ジャンル」を分類できることが明らかになってきた。

 三大疾病のひとつで、長らく日本人の死因トップである「がん」。早期発見こそ生死を分ける大きなポイントとなるが、医療ジャーナリストの油井香代子氏によれば、がんの「診断」については総じてベテラン医師に軍配が上がるという。

「がんの早期発見は、CTやレントゲン、エコー、採血などのデータを複合的に分析する必要があります。そのため、症例を多く見ているベテラン医師のほうが、経験の少ない若い医師より正確な診断を下せる傾向があります」

 ただし、「手術」となると話は変わる。開業医の北野國空氏(外科)が指摘する。

「現在、消化器などのがんは内視鏡(腹腔鏡、胸腔鏡を含む)による手術が一般的。開腹手術より格段に患者の負担が小さく、社会復帰が早いため“外科の産業革命”と言われるほど。比較的歴史が浅く、新たな技術を用いるこの施術は、若い医師のほうが経験豊富だといわれます」

 医師としてのキャリアが、内視鏡手術の技術と比例しない──その原因は「普及し始めた時期」にある。

「内視鏡手術の技量を大きく左右するのは“どの時期に訓練をしたか”だといわれており、できるだけ若い時期に経験を積んだほうが良いとされている。『内視鏡の名医』と呼ばれる医師は、日本で内視鏡手術が普及し始めた約20年前に医学生だった、現在40代の医師に多い。

 一方で、現在60歳以上の医師は、初めて内視鏡に触れたのが40歳過ぎ。臨床現場の一線で活躍するなかでは訓練の時間がとれないため、なかなか技術が向上しない」(同前)

「開腹手術」ではベテラン医師に一日の長がある。

「通常、膵臓がんは開腹手術を行なうケースが多く、膵臓を半分切除した後に残った部分を小腸や十二指腸と縫合します。この処置は難易度が極めて高く、縫合不全が生じれば膵臓から酵素が漏れて死に至る危険もあるため、経験豊富なベテラン医師が執刀するほうが成功率は高い」(同前)

 内視鏡が得意な若手医師ほど開腹・開胸手術の経験が少ない。緊急時、その経験不足が大きなリスクになると指摘するのは、医療事故に詳しい石黒麻利子弁護士だ。

「内視鏡手術中に出血が広がるなどのトラブルが生じると、速やかに開腹手術に切り替えて洗浄や縫合を行なわなければならないケースがあります。普段内視鏡手術しか行なわない若手医師が開腹手術をしなければならない状況になってしまい、手術に失敗したという報告は多い」

 開胸するケースの多い肺がんでも同様に、経験豊富なベテラン医師のほうが適切な処置を行なえる。

※週刊ポスト2017年6月9日号

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