ネットの居酒屋ポテト論争など 「これで番組つくるかァ?」

ネットの居酒屋ポテト論争など 「これで番組つくるかァ?」

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

 ネットでの話題がテレビ番組の企画に反映されることが増えた。なかには、SNSで繰り広げられている世間話のようなものを、そのまま反映させているものもある。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、安直すぎるネットからの情報流用について論じる。

 * * *
 お前らいい加減にせい! と言いたくなるネタが『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)の5月30日放送で紹介された。それはとあるツイッターユーザーによる〈新卒社員が上司との飲みでフライドポテトを注文したら「いつまで学生気分なんだ」と怒られ「2度と行かねえ!」とブチギレたそうです〉というツイートだ。

 要するに、ネットでよくある「世代間闘争」のネタである。基本的には、若者が老害による理不尽な扱いにブチ切れ、それを若いネット民が拍手喝采し、良識派ぶりたいジジババどもが若者に同意するというパターンが定着している。あるいは、若者の非常識ぶりに嘆く、といったパターンもある。

 これを同番組では、パネルまで作って解説したのである。そして、ご丁寧にも酔っ払いサラリーマンが数多く取材される東京・新橋でオッサン達に取材をし「ポテトはダメ! やっぱ刺身と煮込みです!」などと赤ら顔でコメントさせるのである。それを受け、スタジオの羽鳥とコメンテーター陣が色々意見を言い合った。

 この件は前日の29日、ネット上ではバカネタとして散々消費されていた。どうでもいいネタが話題になっとるな、と思っていたのだが、まさかテレビがこのネタを扱うとは……と呆れるとともに、制作スタッフがネタ集めに独自ルートの人脈さえ作れないほど忙しくなっているのか、と同情もした。

 こうしたネット発の件で最近話題になった他の件が「電話野郎」である。これは、匿名で書き込みをできる「はてな匿名ダイアリー」発のもの。電話をすることは他人の貴重な時間を奪う行為であり、メールやLINEでコミュニケーションはできるのに電話をするヤツはバカで仕事ができない、といった指摘だった。そして、電話をかけるのであれば、その旨を事前に伝えるべきと主張。これに対しても賛否両論の激論となった。

「唐揚げにレモンをかけるかどうか論争」「ドタキャンは許されるか」「飲み会は残業扱いにすべきか」といった人々の意見を二分する議論はネットではもう20年以上定番となっている。

 だが、「好きなものを頼んでいいと上司から言われ、フライドポテトを頼んだら怒られた。これっておかしくね?」といった単なるヨタ話が放送免許をもらい、格安で電波を使用させてもらい、さらにはケタ違いの人数に影響を与えるテレビの企画にするかよ、オイ? と思うのである。

 だとしたら、私もテキトーなネタをツイッターで公開し、大拡散させ、テレビマンに企画を作ってもらいたい。こんなのはいかがだろうか。

〈電車の中で新入社員らしき男性が「上司が『ランチは大事なコミュニケーションの機会だから毎日一緒に部員同士は食事しろ』っていつの軍隊だよw。当然拒否。で、これ見よがしにその後オレのことは誘わなくなった」って言ってた。ランチハラスメントしてるんじゃねーよ、バブルの残骸クソジジイが〉

 かくして、「ゆとりVSバブル、職場のランハラの実態」という企画が生まれたりして。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2017年6月16日号

関連記事(外部サイト)