「負け犬」著者による新語、男を立てる「男尊女子」の見分け方

「負け犬」著者による新語、男を立てる「男尊女子」の見分け方

男を立てる「男尊女子」はどこにいる?

 かつて「負け犬」(「未婚、子ナシ、30代以上の女性」を指す)という言葉を世に広めたエッセイストの酒井順子氏が、新著『男尊女子』(集英社刊)でまた新たな言葉を生み出した。

 これはもちろん「男尊女卑」をもじった造語。文字通り「男を立てる」「男を支える」ことに生きがいを感じる女性たちを指す。どんな女性なのか。酒井氏が解説する。

「私は20代の頃に会社員をしていたのですが、友人に総合職のキャリアウーマンがいました。彼女は『美味しくお茶を淹れられる女性って素敵じゃない』といって、事務職の女性をさしおいて男性社員のお茶を淹れていたのです。彼女は“仕事ができる”だけでなく、“古き良き女性像”を男性の前で演出しようとしたのです」

 酒井氏は他にも数多くの男尊女子を見てきたという。

「共稼ぎで明らかに夫より稼ぎが多い女性が夫を『主人』と呼んで立てたり、会社のエレベーターでエレベーターガール役を買って出たりと、男尊女子はあちこちに見ることができます。典型的なのが、飲み会であえて“何も知らないフリをする女”です。

 無知を装うことで、男性の“教えたい欲求”を満たそうとする。『等々力』を『とうとうりょく?』と読んで男性に『バッカだな~』といわれ、『バカじゃないもん!』と口を尖らせる、とか。でも、『等々力駅』は彼女が通勤で利用する路線にあり、『とどろき』と読むことは知っていたのです」

 男尊女卑傾向が残っていたバブル以前に青春を送った女性は、「保守的な家庭像」を見て育った人が多いためか、こんなふるまいをする傾向が強いという。しかし、意外なことに若い世代にも男尊女子は存在する。

「若い女性の場合、あえて自ら男尊女子という生き方を選択している。下手に出世して男性からやっかみを受けるより、男を立てておいたほうが楽というのが主たる理由ですが、単に『男性にモテたいから』という動機もあるようです」(酒井氏)

 九州における男尊女卑傾向は昔から言われていることだが、それも男尊女子がいるからこそだ。

「ある東京在住の九州男児は、『デートで、自分の前を歩く女は無理』『食事中にサラダを取り分けないような女はダメ』といって、交際していた東京女子と別れて男性を立ててくれる地元の九州女子と結婚しました。

 一方で、都会の男性たちは東京の女性に慣れているので、“一歩下がって”男性を立てる九州女子についうっとりしてしまう。福岡には“転勤族に博多美人をかっさらわれる”と苦々しく思っている地元の男性たちもいます」(酒井氏)

◆靴下も毎朝用意してあげる

 男尊女子は男性にとって、「そんな女性に出会いたい!」と思わせる存在である。しかし酒井氏は、「制度的に男女平等化への道が整ってもなかなか実現しないのは、男尊女子の存在も一因」と指摘する。

「封建時代から何百年もの間、日本には『女は基本、奴隷』という感覚があったわけで現代になっても“男が先で女は後”という癖が抜けない女性が多い。人によって濃淡はありますが、男尊女子のエキスが1滴も身体に入って少ない人はいないのではないかと思います。

 男女同権を主張してはいても、私のなかにも男尊女子的なところがあって、矛盾を感じながら生きています。男女平等化社会の実現は、潜在的に身体に染み付いた“男尊女卑”の感覚を自覚するところから始まるのかもしれません」(酒井氏)

 とはいえ、中高年男性からは男尊女子を賞賛する声が上がる。

「バーで時々一緒になる30代前半の女性は、私が詳しい音楽やお酒などの話題に『え~、知りません。詳しく教えてください』と耳を傾けてくれる。本当に気分がいいですよ」(59歳・商社勤務男性)

「私は、妻からゴミ捨て、掃除、洗濯、料理、洗い物まで、すべて当たり前のようにやらされています。でも、友人夫妻と飲んだ時に奥さんから『ウチの主人はどこに靴下がしまってあるかも分からないんですよ。毎朝、私が準備してあげているんです』と聞かされたとき、心の底から友人を怨めしいと思いました」(46歳・製造業勤務男性)

 俳優・梅沢富美男氏(66)も「男尊女子」を大歓迎する。

「基本的に男は“おこちゃま”なんです。男尊女卑というけれど、そもそも男は女に勝てるはずがなくて、女の人は賢いから男を立ててくれている。どんな行動を取っても優しい目で見守ってくれる女性はやっぱりいいですねぇ~」

 だが、酒井氏が言う。

「女性に立ててもらえば男性は嬉しいでしょうし、男尊女子の存在によって家庭や会社が円滑に動く面があるのは確かです。でも、“女性が下でいるほうが楽”という空気がある限り、つらい思いをする女性は存在し続けてしまいます。

 それでも男性が『立ててくれる女性』を求める限り、それに応えようとする女性が出てくる。この先も“男尊女子”は伝統芸能のように残っていくんでしょうね……」

※週刊ポスト2017年6月16日号

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