もしかして軽度認知障害? 医師が実践する簡単な診断テスト

もしかして軽度認知障害? 医師が実践する簡単な診断テスト

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 老いについて医療者として取り組み続けている諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師。認知症か軽度認知障害かを診断する簡単なテストについて鎌田医師が紹介する。

 * * *
 昨年の秋、ぼくが出演しているラジオ番組「日曜はがんばらない」(文化放送、日曜朝10時〜)に、ゲストとして山本朋史さんを招いた。ぼくが以前、「週刊朝日」で連載していたときの担当編集者だ。新聞記者の経歴もあり、故・永六輔さんは「敏腕記者」といつもほめていた。

 その山本さんに異変が起きたのは、60歳を過ぎたころ。たった一か月半の間に、ズボンのファスナーの締め忘れが13回、電車で乗り過ごしたのが13回、会合のダブルブッキングが2回、人の名前が出てこないのはもはや日常茶飯事だったという。

 大学病院のもの忘れ外来で、改訂長谷川式簡易知能評価スケールなど認知症の4つの検査を受けると、軽度認知障害(MCI)と診断された。軽度認知障害は、認知症の予備軍の段階。放っておくと4年で14%が認知症になる一方、生活習慣を改善することで約半数が健常に戻るといわれている。

 山本さんには、ラジオ番組で軽度認知障害になった体験を語ってもらったのだ。

 認知症か、あるいは軽度認知障害かを診断する場合、ぼくの外来では簡単なテストをする。初めに「今から言う数字を覚えておいてください」と言って、4つの数字を口頭で伝える。例えば「0628」。そして、別の質問をしたり、家での様子について聞いた後に、最初に伝えた数字を思い出してもらい、逆側から言ってもらう。正解は「8260」だ。

 読者のみなさんも、できるかどうか、ぜひ、やってみてほしい。

 このテストは、前頭葉の働きのワーキングメモリという機能をチェックしている。ワーキングメモリとは、何かの作業をするときに必要な情報や記憶を短期的に保持しておくことで、これがうまく働かないと、作業がはかどらない。仕事だけでなく、人の話を聞きながら説明したり、質問したりするのも、このワーキングメモリが働いているといわれる。

 4つの数字を逆から言うことができなかった人は、ワーキングメモリが低下している可能性がある。もしかしたら認知症予備軍の軽度認知障害の、さらに前段階くらいになっているかもしれない。

 山本さんは、軽度認知障害の診断を受けたが、回復のためにできるかぎりのことをしようと固く決意した。そして、認知症デイケアに通い、認知力アップトレーニングや楽器を使った音楽療法、集中して絵を描く芸術療法に取り組んだ。特に、筋トレには手ごたえを感じたという。その結果、見事、軽度認知障害から回復することができたのだ。

 ラジオ番組の収録の日、山本さんは、ぼくの似顔絵を描いてきてくれた。よく特徴をとらえている。絵もうれしかったが、ぼくは、山本さんが以前にもまして生き生きしていたのがうれしかった。

 放送で彼は、早期発見の大切さを強調した。「脳からのSOSのサインは本人がいちばん早くに気が付く。変だなと思ったらまず専門医に相談すること。早期発見すれば早期に治療ができる」

 軽度認知障害から回復した山本さんの言葉には説得力があった。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2020年2月21日号

関連記事(外部サイト)