1967年のガールハント指南記事 妄想炸裂も希望与えるその内容

1967年のガールハント指南記事 妄想炸裂も希望与えるその内容

50年前も今も男が考えることは一緒

 いい歳になっても女性に声かけようとする「ちょいワルジジイ」が話題になったが、ガールハント記事は50年前からの人気企画だった。それは現在のおっさんたちの源流でもある。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が説く。

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 男のスケベ心は、いつの時代もパワフルで、いつの時代もケナゲです。古本屋の隅っこで、ちょうど50年前に出た雑誌を見つけました。月刊誌『文藝春秋 漫画讀本』1967年6月号。若いサラリーマン向けの娯楽雑誌です。版元はお堅い文藝春秋ですが、記事も漫画も「お色気」たっぷり。折り込みのヌードピンナップも付いています。

 特集は「春から夏へ 男の遊び方とモテ方」。じつにタイムリーで、じつにそそられるテーマではありませんか。温故知新というか原点回帰というか、おっさんとしては自分たちが生まれたころに書かれたハウツー記事から、時代を超える貴重な教えを授かることができるかもしれない。そんな願いを込めて読み込んでみました。

 トップ記事は「いまこそハントの好季節」。筆者はテディ片岡。のちに小説家になって『スローなブギにしてくれ』などを書いた片岡義男さんです。いきなり「ガールハントは、春から初夏に限る。つまり五月から六月にかけて、日本の若い女性たちは、精神的にも肉体的にも、もっとも不安定な状況におちいるからだ」と、希望を与えてくれます。

 なぜ不安定な状況におちいるのか、スカートの中を吹き抜ける風とパンティの薄さとの関係などを説きつつ、説得力のある文章で解説。そして「ネコのウンコを馬の小便で練ったようなくすんだ色のスカートをはいている女は、(心と体にアンバランスな部分がある証拠なので)絶対にハントできる」と断言しています。具体的にどんな色かよくわかりませんが、街でそれっぽい色のスカートをはいた女性がいたら「なるほど、ああいう女性はハントしやすいわけか」とこっそり納得しましょう。

 また、薄着になるこの季節は「肉体をとおした刺激を、女性に対してもっともあたえやすい」「熱烈な新陳代謝へのきっかけを求めてうずいている肌であるから、(中略)刺激を実際の数倍に拡大して受け止めてくれる」と、片岡先生は説きます。肩に手をかけただけでも、それだけで「敵は落ちる」とか。往時と違って今は迂闊な接触のリスクが高くなってはいますが、とりあえず頭の中で何度もシミュレーションを重ねたいところ。

 その後も、夏の前に女性をハントすると「あとに長く尾をひかない」「女性は自分をハントした男性をすててくれる」など、片岡先生は言いたい放題。さすがの筆力で、自分がハント名人になったような気にさせてくれます。当時の若者たちも、さぞ勇気づけられたに違いありません。そして、たくさんの挫折を味わい苦汁をなめたことでしょう。

 50年前にこの本を読んでハントに挑んだ若者たちは、現在は70代か、あるいは80代。挑まれた女性も同じ。私たちの父母や巣鴨の地蔵通り商店街あたりに集っているご老人のみなさまにも、恋の駆け引きをなさっていた時代があったのかと思うと、なんとも感慨深いものがあります。もしかしたら、記事で得た知識が今も頭の片隅に残っていて「ガールハントをするならこの時期だ!」「くすんだ色のスカートをはいている女が狙い目だ!」と張り切っている方もいるかもしれません。がんばっていただきたいものです。

「魔風恋風──“夜”のハント術」という別の記事には、こんなハウツーが指南されていました。女優のブロマイドを買ってきて定期入れに入れておき、二度目に会った女性にチラッと見せて、彼女が興味を示したら「いやあ、見つかっちゃった。まだ一度しか会ってないのに、きみの写真をもらうわけにはいかんし、きみそっくりの緑魔子の写真をいれておいたのさ」と言えば女性は暗示にかかってイチコロ──。なるほど手口の大胆さには感心しますが、真似して実行する勇気はありません。

「あなたのガールハント能力テスト」は、狙い目の女性を見分ける力を養ってくれる10問のテスト。3択形式で、たとえば「オフィスのBGで、プレーを欲しているのはどれか」という問題だと、「毎朝、あなたの机だけをふいてくれるコ」「朝、駅から会社までの間でよく顔を合わせるコ」「ひけてから、駅までによく顔を合わせるコ」という選択肢があります。「正解」は、最後の「ひけてから」のコ。それぞれの問題にもっともらしい解説があり、想像力の翼を存分に広げることができます。私も「大人力検定」の問題をさんざん作りましたが、なるほど無意識のうちに、このカルチャーの流れを受け継いでいたんですね。

 どの記事も、女性をどこか神格化しつつ、それでいて手前ミソで楽天的な発想に満ち満ちているのが特徴。今でいう「中二病」っぽい妄想力も炸裂しています。はっ! それはまさに「おっさんの女性観」そのもの。考えてみれば、50年前のハウツー記事で勇気を授かった世代が、やがて結婚して私たちの親になってくれたわけです。我々のおっさんDNAの源流は、ここに存在していました。今だったら間違いなく炎上しそうな女性差別的な表現や価値観も散見されますが、そのあたりは反面教師にさせてもらいましょう。

 当時の日本人男性は、こうした記事で自分を奮い立たせながら、高度経済成長を成し遂げたわけです。昨今「おっさん」に対する風当たりは強く厳しくなるいっぽうですが、ひるむ必要はありません。昭和の時代から受け継いだおっさんDNAこそが、日本をふたたび元気にする原動力になるはず。胸を張って、ますますおっさん臭く生きていきましょう。ビバ、おっさん!

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