在宅看取りの医師が指南 我が家で上手に最期を迎える方法

在宅看取りの医師が指南 我が家で上手に最期を迎える方法

1000人以上の在宅看取りをしてきた小笠原文雄医師

 住み慣れた我が家から旅立ちたい──そう願う人は5割に上る(内閣府調査)が、現実には亡くなる人の8割が病院や診療所などで死を迎えている(厚労省調べ)。在宅死は贅沢な望みなのか。

「決してそんなことはありません。一人暮らしでも、認知症であっても、家で最期を迎えることはできます」

 そう話すのは、1000人以上の在宅看取りをしてきた小笠原文雄医師(日本在宅ホスピス協会会長)だ。

 小笠原医師が上梓した新刊『なんとめでたいご臨終』には、死を迎える人や見送った家族、そして在宅医療チームが集まってピースする“記念写真”が多数掲載されている。

「ピースサインなんて不謹慎だと非難する方もいますが、それは部外者の見方。最期までこの家で暮らしたいという願いがかなうと、本人も家族も笑顔になれるのです」(小笠原医師)

 病院であれば、こんな写真はありえない。末期がん患者にも最期まで抗がん剤を打ち、心肺が停止すれば心肺蘇生して人工呼吸器につなぐことが多いからだ。回復の見込みのある人には必要な措置だが、管だらけにされて迎える最期は御免だと思う人は多いはずだ。

 小笠原医師の著書には、“めでたいご臨終”を遂げた人の例が多数載せられている。遠藤崇史さん(仮名、享年62)は、旅立つ8日前に小笠原医師とピース写真を撮った。

 大腸と食道のがんと、肝臓への転移が見つかって総合病院を受診した遠藤さんに、主治医は入院での抗がん剤治療を勧めた。しかし、「抗がん剤で治るのか?」と問い詰めると、「治りません。1~2か月の延命でしょう」と説明された。遠藤さんは一級建築士で、大きな仕事を請け負ったばかりだったが、入院すると仕事ができなくなる。

「数か月寿命を延ばすより、仕事をやりきって悔いなく逝きたい」と思った遠藤さんは、入院治療を断わり、小笠原医師のもとを訪れた。

 通院で痛みを取って仕事を続けながら、以前から行きたかったお寺参りにも夫婦で出かけた。5か月を過ぎて体力が落ちてきたので、外来から在宅ホスピス緩和ケアに切り替えたが、そのころには仕事を無事やり終え、残された時間を友人や家族と過ごすことができた。遠藤さんは小笠原医師にこう語った。

「死ぬのは怖くないですよ。怖いのは不安があるからでしょ。不安はありません、幸せですよ。充実しているから。上手な死に方っていうのはおかしいけれど、がんは案外、いいもんですね」

 その2日後に遠藤さんは自宅で息を引き取った。在宅死を望むなら、どんな準備をすればいいのか。一つは家族に、その意思をしっかり伝えること、もう一つ大事なのは、いい在宅ホスピス緩和ケア医を見つけておくことだという。

「日本在宅ホスピス協会のサイトには、THP(トータルヘルスプランナー)の認定者リストがあるので、相談してみてください。訪問看護ステーションに聞いてみるのもいいかと思います」(小笠原医師)

 できれば、安心できる医師、看取りの経験が豊富な医師と巡り合いたい。後悔しない死に方を迎えるためには、健康であるうちの「備え」が大切なのだ。

※週刊ポスト2017年7月7日号

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