【法律相談】パラサイトの子供に自宅退去命令は出せる?

【法律相談】パラサイトの子供に自宅退去命令は出せる?

パラサイトの子供に自宅退去命令を出すことはできる?

 いつまでも実家で暮らす子供を“パラサイト”と呼ぶようになって久しいが、子供に対して家からの退去命令を出すことはできるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 情報番組を観ていて驚いたのですが、アメリカでは親が成人した我が子の自立を促すため、裁判所に申請すれば家からの強制退去命令が出て、子供は家を出なければいけないそうです。ドライなアメリカならではと思いますが、日本でも親が裁判所に申し出れば、子供を家から強制退去させるのは可能ですか。

【回答】
 未成年者と成人とで違います。未成年の子に対して、親は親権を持っています。親権は子を監護教育する身上監護権と、財産管理権を含みますが、身上監護権のひとつに居所指定権があり、民法では「子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない」とされています。

 親は学校教育のため、学生寮に住まわせたり、悪友との交際を断ち切るために転居させることなどができます。ただ、子供の利益のために行使する必要があり、例えば強制労働のための住み込みを命じることはできません。しかし、自立心を持った子供に、強制的に従わせようとするのは無理だと思います。

 一方、成人の子に対する居所指定権はないので、自宅に住まわせている法律関係に基づいて考えることになります。例えば同居する子供が親に多少のお金を家に入れていることが多いようです。ただし、食費や光熱費の負担分より少ない金額だと住まいはタダで使っていることになり、無償で建物を借りる使用貸借になります。

 使用貸借は、期間の定めがあれば、その間しか使えませんが、子供の同居期間を決めることは稀です。期間の定めがない使用貸借は、契約の目的に従い、使用及び収益が終わったとき、もしくは使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときに終了します。

 子供の社会的自立まで同居させるのが一般的ですから、その準備のために必要と思われる期間が経過すれば、使用貸借は終了します。もし、子が親の面倒を見る目的で同居することになった場合、子が面倒を見ることを止め、親子の信頼関係が破壊された場合には、契約を解除できるでしょう。

 裁判所がこうした使用貸借の終了事由があることを認めれば、判決をもって、子供を家から追い出す強制執行ができます。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年7月7日号

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