患者の身体的負担が少なくなる「リードレスペースメーカー」

患者の身体的負担が少なくなる「リードレスペースメーカー」

リードレスペースメーカーについて専門家が解説

 ペースメーカーは、電気刺激発生装置の本体と電気刺激を伝えるリードがセットになり、徐脈に対して電気刺激で心収縮を発生させ、脈を補充する機器である。経静脈ペースメーカーは、前胸部鎖骨下の皮下にポケットを作り、本体を留置し、リードを血管経由で心臓まで挿入する。ただ、リードの断線や静脈閉鎖、皮下ポケットからの感染などの問題があった。そこで開発されたのが、「リードレスペースメーカー」だ。

 導入に向けた国際共同治験の運営委員の杏林大学医学部附属病院循環器内科の副島京子教授に話を聞いた。

「心臓ペースメーカーは長年、ペーシング技術向上や小型化が図られてきました。その経緯を踏まえて、リードや切開創に関連する合併症を回避する可能性を考え、開発されたのがリードレスペースメーカーです。リードがないだけでなく、従来型と同じ機能を持ちながら直径6.7ミリメートルで、長さ25.9ミリメートル、重さは従来品の10分の1以下の1.75グラムと超軽量のカプセル型です」

 今年2月に薬事承認されたリードレスペースメーカーは、専用のデリバリー用カテーテルで鼠径部から大腿静脈に挿入し、右心室まで運び、心臓内に留置する。本体の先端にある電極を心尖部に近い、心室中隔に直接固定してペーシングを行なう。本体を確実に、心筋に密着させるため本体先端の形状記憶合金のタイン(ツメ)で固定し、脱落を予防する。

 固定が十分でなかったり、適切な場所でない場合は、本体を一度、カテーテルに戻してから、やり直すこともできる。

 デバイス留置時間は、約40分と従来のペースメーカーの植え込みに比べて短縮され、鼠径部の小さな傷以外は、皮膚を切開しないので感染症のリスクは低減される。心内に留置された本体は、経年とともに内膜で覆われるために電池の寿命の12年を経過しても取り出さず、2つ目を挿入する。MRI検査も可能であり、従来品のように外から本体が手に触れることもないので、ペースメーカーを意識することなく生活できる。

「リードレスペースメーカーの適応の多くは、心房細動による徐脈の方です。その他には、不整脈が停止した後の短時間の徐脈などがあります。さらには、人工透析のシャントのために同側の植え込みが困難であったり、静脈閉塞などにより、リードの挿入が難しい場合などです。これらの患者さんに対する治療法としてリードレスペースメーカーは、またとない装置といえます」(副島教授)

 今の段階では心室ペーシングのみであり、心房のタイプはない。従って心房と心室の伝導が障害される房室ブロックや洞不全症候群では、必ずしも最適なタイプではない。

 現在、年間6万人がペースメーカーを留置するが、高齢化の進行とともに、患者が増える傾向にある。認知機能が低下している患者では、本体を外から触るために切開部からの感染も多く、リードレスペースメーカーの導入が進む可能性がある。

●取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2017年6月30日号の記載内容に一部誤りがありましたので、お詫びして訂正いたします。該当部分を訂正して掲載しております(2017年7月13日更新)。

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