ミス繰り返す“リピーター医師” その名前を把握できぬ恐怖

ミス繰り返す“リピーター医師” その名前を把握できぬ恐怖

ミスを繰り返した医師の名前を知ることはできない(イメージ)

「リピーター医師」という聞き慣れない名称が、新聞各紙を賑わせたのが6月末。現役医師の6割が加入する日本医師会(以下、医師会)が、医療ミスや不適切な医療行為を繰り返していたとして、4年間で27人の医師に再発防止を指導・勧告していたことを毎日新聞(6月26日付朝刊)が報じると、その翌日には新聞各紙、テレビが相次いで後追いした。

 リピーター医師とは、単に“ミスが多い”医師のことではない。『リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?』の著者で弁護士の貞友義典氏が説明する。

「医師会などの団体に加入している医師は、医療事故を起こして患者から損害賠償請求された時に備えて、『医師賠償責任保険』に入っています。この保険金を複数回にわたって請求している医師をリピーター医師と判定しています。賠償保険を複数回請求しても、罰則もなければ、名前も事故内容も公表されません」

 保険料は年間5万円程度で、1事故につき最高1億円、契約期間内でトータル最高3億円の補償が受けられる。特約保険に加入すれば、1事故2億円、保険期間内6億円まで補償される。手厚い補償内容だ。

「リピーター医師は腹腔鏡などの医療機器の操作ミス、適用外の手術(本来は必要のない部位への手術)によるミスを繰り返しているケースが多い」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)

◆保険金で“解決”していた

 愛媛県今治市のある産婦人科診療所の院長は2005年から2016年にかけて、3件の死亡事故を含む6件の重大事故を繰り返していた。

 2015年2月には地元医師会が院長に事情を聞いたが、「訴訟になった例はない」などの理由で口頭注意しただけ。結果的に、翌年1月に帝王切開を受けた30代女性が出血性ショックで重症となる医療事故を招いてしまった。

「この院長は患者側から損害賠償を請求され、保険金を使って示談していたようです。多くの犠牲者を出して初めて医師の名前も報じられ、保健所の立ち入り検査も行なわれましたが、もっと早くリピーター医師だと公表されていれば、妊婦や患者さんはこの診療所を避け、被害の拡大は防げたはずです。せめて医師会は強制力のある指導・勧告をしてほしかった」(貞友氏)

 この病院は今年2月に閉院し、院長は現在、音信不通だという。リピーター医師の存在は、医療業界では以前から指摘されていた。貞友氏が言う。

「日本医師会は1995年、それまでの約20年間で患者側から100万円を超える損害賠償を請求された医療事故を2回起こした医師が391人、3回が82人、4回が22人、5回以上が16人、合計511人いることを会長自ら明らかにしました」

 それでも彼らは医師免許を剥奪されることなく、名前も公表されず、多くは現在も医療行為を続けている。

 厚労省の諮問機関「医道審議会」は、犯罪や不正が確認された医師に対する医師免許取り消し処分を審査しているが、リピーター医師は犯罪や不正と見なされないので対象外となる。

 彼らの存在が隠されているのは、前述のように賠償保険で保険金が支払われることで、問題が“解決”されてしまうからだ。

※週刊ポスト2017年7月14日号

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