医療ミス繰り返す“リピーター医師” 制裁なく再発防止困難

医療ミス繰り返す“リピーター医師” 制裁なく再発防止困難

「リピーター医師」は事実上野放し状態

「リピーター医師」という聞き慣れない名称が、新聞各紙を賑わせたのが6月末。現役医師の6割が加入する日本医師会(以下、医師会)が、医療ミスや不適切な医療行為を繰り返していたとして、4年間で27人の医師に再発防止を指導・勧告していたことを毎日新聞(6月26日付朝刊)が報じると、その翌日には新聞各紙、テレビが相次いで後追いした。

 リピーター医師とは、単に“ミスが多い”医師のことではない。『リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?』の著者で弁護士の貞友義典氏が説明する。

「医師会などの団体に加入している医師は、医療事故を起こして患者から損害賠償請求された時に備えて、『医師賠償責任保険』に入っています。この保険金を複数回にわたって請求している医師をリピーター医師と判定しています。賠償保険を複数回請求しても、罰則もなければ、名前も事故内容も公表されません」

 繰り返しミスをする医師は、患者にとって恐怖以外の何物でもない。患者本位であるならば名前を明かすべきはずだが、日本医師会はこう答える。

「保険金の支払いについて公表するのは守秘義務に反する。例えば自動車保険の加入者が複数回事故を起こしたからといって、保険会社が『この人は要注意です』と名前を公表しますか? 医師には再発防止のために注意をしています」(医賠責対策課)

 一般ドライバーを対象にした自動車保険と、患者の命を預かる医師の保険を同列で比較するのは無理がある。しかも、ドライバーは重大事故を繰り返せば免許停止処分になるが、リピーター医師は“注意”を受けるだけ。

 自動車保険は事故を起こすと支払う保険料が上がるが、賠償保険は保険請求を繰り返しても支払う保険料の増額はないという。ペナルティもなく、経済的な痛みも受けないとなれば、事故やミスの“再発防止”は難しい。貞友氏が指摘する。

「日本ではいったん医師になればその後の研修制度や免許更新制度がないため、一生医師であり続けられる。一方、米国では医師免許の更新制度があるうえ、科によっては医療事故を3回起こせば賠償保険の年間掛け金が年収を超えてしまい、事実上医師を続けることが不可能になるため“スリーストライクアウト”と呼ばれている。また、欧米では執刀医が“これまで何度失敗したか”という質問に答えるのは当然のことですが、日本ではそうなっていない」

 医師は手厚く守られているが、患者はリピーター医師に診られる恐怖に怯えなければいけない。

「彼らを避ける単純な方法はないが、信用できるホームドクターを持つことと、疑問があったら必ず医師に質問すること。手術を受ける時は担当医をしっかりと確認することで自分を守るしかない」(貞友氏)

 患者ができることには限界がある。医師会は今すぐリピーター医師27人の実名を公表し、抜本的な対策に取り組むべきだ。

※週刊ポスト2017年7月14日号

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