口腔を強化する「パタカラとおでこ体操」で家庭仲も順調に

口腔を強化する「パタカラとおでこ体操」で家庭仲も順調に

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 高齢者が健康を保つために重要なのが口腔機能。口腔機能の衰えが死につながることも少なくない。そこで、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、口腔機能の衰え予防になるだけでなく、アンガーマネジメントにもつながるエクササイズを紹介する。

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 妻が「バカタレ、バカタレ、バカタレ……」と早口で怒鳴っている。これを見た夫は、ロダンの「考える人」のように頭を抱え込んでしまった。何だか熟年夫婦の危機のようだが、これもエクササイズである。

 オーラルフレイル(口腔機能の衰え)の予防として、有名なのはパタカラ体操だ。パ行は唇、タ行は舌、カ行はのどの筋肉、ラ行は口腔全体を強化する。「バカタレ」も同じ行が入っている。

「考える人」のようなポーズは、おでこ体操というもの。頭を前に傾ける力と、おでこを手で押す力を拮抗させて、のどや首の筋肉を鍛えようという体操だ。別に考えごとがなくても、やってみよう。

 オーラルフレイルになると、嚥下反射が鈍くなり、むせやすくなる。加山雄三は、運動した後、水をがぶ飲みしてむせ、血圧が上がり、小さな小脳出血を起こしたのではないかと推測されている。

 誤嚥がひどくなると、食べ物が気道側に落ち、誤嚥性肺炎の原因になる。口腔内が汚れたままだと、寝ている間に雑菌が気道から肺に入ることもある。歯周病と糖尿病も肺炎を招きやすいというから、注意したい。歌手のペギー葉山も俳優の山城新伍も、誤嚥性肺炎で亡くなっている。この誤嚥性肺炎を含めた肺炎は、日本人の死亡原因の第5位である。

 パタカラとおでこ体操はアンガーマネジメントとしてもおすすめ。夫婦で険悪な空気になったら、妻はパタカラ、パタカラと6秒ほど繰り返して、怒りをしずめよう。夫はおでこ体操で、反省のポーズをとれば、家の中は丸く収まるかもしれない。

 数年前から、高齢者を対象に肺炎球菌ワクチンが定期接種となった。自治体からワクチン接種をすすめられたがどうしたらいいかと、患者さんから相談されることがあるが、できるだけ受けといたほうがいいと答えている。

 肺炎球菌感染症は、中耳炎や副鼻腔炎などのほか、肺炎も起こす。肺炎になると、左右のどちらかの肺に刺すような痛みが起こり、胸水がたまることも珍しくない。細菌が全身に広がることもある。

 高齢者は重い症状を起こしやすいので、ワクチンを受けておくほうがいい。しかも、ワクチンには免疫増強剤も入っているので、BCGと同じように、新型コロナウイルスに対してもわずかだが自然免疫力を強化して感染しにくくしてくれるという説もある。

【プロフィール】
かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2020年10月16・23日号

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