コロナ禍で「自宅で白髪染め」増加 あとで美容師が困る理由

コロナ禍で「自宅で白髪染め」増加 あとで美容師が困る理由

コロナ禍"自宅で毛染め"増加

コロナ禍で「自宅で白髪染め」増加 あとで美容師が困る理由

自宅で白髪染めをすると…

 新型コロナウイルスの影響で、私たちの生活様式は一変した。いつも美容院におまかせだった白髪ケアも、そのひとつ。家で過ごす時間が増えたことを機に、ホームカラーを始めた人も少なくないだろう。

 経済的にも、自分で白髪染めをしたほうが安上がり。それだけに手軽にチャレンジする人は多くなっているが、その後、美容院に戻ってきたときにヘアカラーを依頼される美容師は困ることが少なくないという。

 毛髪診断士・毛髪技能士の資格を持ち、『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』の著書もある美容ジャーナリスト・伊熊奈美さんによると、美容師が困る理由は主に3つに集約されるという。

【1】薬剤の反応で想定外の色になるのを避けたいから

「髪を染めるということは、化学反応を起こさせることです。だからその髪が今までにどんな薬剤でどんな反応を起こしてきたかという『履歴』がとても重要です。

 常連のお客さんなら『履歴』を管理できるので、美容師も安心して染められます。でも、そのあとお客さんが別の薬剤を使ったうえで再来店すれば、知らないところで『履歴』が塗り替えられていることになり、予測のつかない化学反応をしないかどうか、美容師はヒヤヒヤしながら染めることになってしまうのです」(伊熊さん。以下同)

 ホームカラー剤で染めてうまくいったとしても、その後、美容院に行ったときに「これまでと違う色になった」といったことになる懸念があるようだ。

【2】髪の状態をマイナスからゼロに戻すだけになってしまうから

 自宅で白髪染めをする際、美容院のカラーと同じ色に染めているつもりでも、美容師側から見ると「お客さんが選ぶ色は、たいてい暗い」という。つまり、自分でやると知らない間に髪色にムラができてしまうのだ。

「美容師は限られた時間の中でその境目をなじませることに集中しなければなりません。おすすめしたい髪色があっても、その提案が難しくなってしまいます。せっかくの機会におしゃれのプラスになる提案をしてもらえないのは、美容師にとってもお金を払う私たちにとっても残念なことです」

 ホームカラー剤を使って次に美容院に行くまでの“つなぎ”的に染めたい場合は、ちょっと明るめくらいの色を選ぶのがポイントだという。

【3】髪や頭皮が傷む可能性があるから

 3つめはシンプルに、髪や頭皮の傷みなどトラブルにつながりやすいからだという。薬剤そのものというより、テクニックの問題が大きいという。

「自分で染めると放置時間を守れなかったり、ムラになってしまったり、すすぎが十分でなかったり、さらに頭皮の保護が甘かったり……。ホームカラー剤は時間を正しく守って使用し、完全に洗い流すことを前提に作られた酸化染毛剤(医薬部外品)です。流し残した薬剤が刺激になって、接触皮膚炎になるリスクもありますし、髪や頭皮のダメージにもつながります」

 美容院のプロ用カラーに使われているアルカリ剤は、蒸発しやすく髪に残りにくいアンモニアが使われていることが多い。しかし、ホームカラー剤はこのにおいが敬遠されるため、においの少ないアルカリ剤が使われているのだ。

「においが少ない分、髪や頭皮に残りやすいという欠点があります。しっかり流しても、アルカリ剤が残ってしまえば、それが頭皮や髪を乾燥させる原因になってしまいます。ヘアカラーを得意とする美容院では、プロ用の幅広い種類の薬剤を使いこなし、色の出方や染まり具合を経験と技術でカバーすることができます」

「自宅では染めないで」といわれると、私たちお客側としては「その方が儲かるからでしょ?」と邪推したくなるが、美容師たちにはそう言う理由があるということだ。

【プロフィール】伊熊奈美(いくま・なみ)/美容ジャーナリスト。日本毛髪科学協会毛髪診断士・認定講師、国際毛髪皮膚科学研究所毛髪技能士。1972年静岡県浜松市生まれ。地元タウン誌の編集記者、女性誌編集部の美容担当などを経て、フリーランスに。近著に『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』がある。

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