【不朽の名作】VSゴジラシリーズの中ではネタ方面で有名か? 「ゴジラVSキングギドラ」

【不朽の名作】VSゴジラシリーズの中ではネタ方面で有名か? 「ゴジラVSキングギドラ」

(提供:リアルライブ)

 アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年公開)が6月末にUHD化されると聞き、ふとこの作品を思い出した。1991年公開の『ゴジラVSキングギドラ』だ。

 なぜこの作品でターミネーターを思い出すかというと、人間そっくりのアンドロイドが劇中に出てくるからだ。しかもT-1000みたいな走り方をするし。まあ『ターミネーター2』が1991年8月に日本で公開されたので、同年12月公開のこの作品が走り方を参考にしたかは定かではないが。しかし、作品の大きなテーマとなるのが歴史の改変というネタに関しては『ターミネーター』や、スピルバーグ監督のバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズの影響も受けているだろう。劇中の米軍艦とのやりとりで、明らかに狙ったようなセリフもあるし。

 本作は「VSシリーズ」とファンの間から呼ばれるシリーズの中でも、かなりぶっ飛んだ作品となっている。もちろん特撮系の作品なので、荒唐無稽な設定というのはどの作品にも少なからずあるのだが、同作はゴジラという設定に無理矢理、未来人、UFO、タイムトラベル、恐竜と当時の流行り物を詰められるだけ詰め込んでいるので、余計その部分が目立って見える。

 冒頭から謎の円盤に乗った23世紀人が出てきて「ゴジラで未来の日本が滅茶苦茶になっているからゴジラを歴史から消したい」ということで、ゴジラ化する前の恐竜ゴジラサウルスのいる第二次大戦中のラゴス島にいき、ベーリング海にゴジラサウルスを転送するという歴史改変を行う。しかし、これは未来人の陰謀でゴジラのかわりに未来人はペットの「ドラッド」を3匹島に置き去りにし、キングギドラにして日本破壊をもくろむのだった。なんでも未来で日系企業の力が肥大化し、国家以上の権力で世界を意のままに操っているらしい。いかにもバブルっぽい設定だ。作品のキーとなる人物のひとりである新堂靖明(土屋嘉男)が起した、帝洋コンツェルンが、企業単体で核攻撃能力を有する原子力潜水艦を持っているなど、当時の日本企業の盛況がうかがえる。とは言っても、この映画公開直前にバブルが崩壊してしまったが。

 さてこの作品は、タイムパラドックスがネタになっているにも関わらず、改変された側の世界の人はゴジラが消滅したのに、タイムトラベルした当事者じゃない人達も、しっかりとそのことを覚えているという矛盾点がある。結局ゴジラはベーリング海の核廃棄物の力でよりパワーアップして誕生することにはなるのだが、その間の歴史の積み重ねの話は非常にあいまいだ。後のシリーズ作品の描写では、歴史改変以前の話も皆覚えているような描写もある。

 そもそも「キングギドラ」という名前はどこからきたのだろうか? ゴジラシリーズは84年公開の『ゴジラ』で一度設定にリセットをかけており、54年の初代『ゴジラ』以降の時間軸は一緒にしていない。という訳で、昭和ゴジラで悪役枠として度々登場してきたキングギドラは知らないはずなのだが、この作品だといきなり未来人役のチャック・ウィルソン(演じた人物の名前もウィルソン)が「キングギドラが現れた」と言って通じてしまっており、誰も疑問を持たない。もしかしたら、歴史改変の影響で昭和ゴジラとも時間軸が繋がったのか?

 とりあえず流行りモノに乗っかった感の強い本作は、粗を探すときりがない。しかし、極端なことを言えば、ゴジラシリーズは、ゴジラや他の怪獣が活躍すれば、他は別に問題にならないという側面もある。その点で言えばこの作品はかなり優れている。

 まず、新規にデザインされ直されたキングギドラの素晴らしさは、この作品を語る上で欠かせないだろう。操演でこれでもかと首が動く。昭和ゴジラシリーズでは使いまわされて、『ゴジラ対ガイガン』あたりではクタクタになっていた感じは一切ない、ザ・悪役の力強さが特徴的だ。また、一度ゴジラに敗退した後は、日本に協力した未来人・エミー・カノー(中川安奈)の手でサイボーグ化され、メカキングギドラになるが、そのビジュアルも当時はかなりの衝撃だった。未来で回収してキングギドラになった固体と、20世紀に北海道沖にゴジラにより沈められたキングギドラは同一固体なので、タイムパラドックス的には同時に存在できないはずなのだが、その辺りの細かい設定の粗はどうでもよくなるほどに、とにかく印象的なデザインだ。

 またゴジラがキングギドラを撃退した後も、帰らずに街を破壊し続け、そのまま東京に向かう部分も何気にポイントかもしれない。昭和ゴジラシリーズならば、怪獣プロレスが終わったら確実にゴジラは帰っていただろう。この展開のおかげで、VSシリーズでゴジラの存在は、人類の脅威であるままだということが強調されている。難点はゴジラがなかなか出てこないところくらいか。その間もキングギドラや、ゴジラになる前のゴジラサウルスが登場しているので、怪獣が出なくて退屈というほどではないが。

 前作である『ゴジラVSビオランテ』と次作の『ゴジラVSモスラ』の脚本的な評価が高いこともあり、本作は評価があまり高いとはいえない。しかし、怪獣映画として押さえる部分はしっかりと押さえており、この2作に挟まれていなければもっと評価も高かったかもしれない。人間側の主人公ポジションの寺沢健一郎(豊原功補)がルポライターという職業でありながら、サイボーグやマッチョの未来人と立ち回っていたのには違和感があったが…。せっかく未来人を出しているのだから、『ゴジラ対メカゴジラ』みたいにインターポールとかにした方が特撮ぽかったかも。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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