川奈まり子と作家・花房観音が語る「女性と性欲」の未来とは

川奈まり子と作家・花房観音が語る「女性と性欲」の未来とは

川奈まり子と作家・花房観音が語る「女性と性欲」の未来とは

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「性やAVは男性が楽しむもの」といった世間の目は、日本社会においてはいまだ根強い。しかし、第1回団鬼六賞を受賞した作家の花房観音氏と作家で元AV女優の川奈まり子氏が11日に開いた『女・官能・AVを巡るクロストーク』は、女性の性にそうした偏見とはまったく異なる光を当てる。

花房氏は、ベストセラー『女の庭』など数多くの作品で知られ、映画会社、旅行会社、AV情報誌での執筆など幅広い職歴を持つ。

川奈氏は、怪談、官能小説など作家業のかたわら、AV女優を中心とするAV実演家の団体一般社団法人表現者ネットワーク(AVAN)代表を努めている。

■女性のAVファンは増えている

男性だけのコンテンツと思われがちなAVだが、実際には女性ファンも増えつつあるという。

花房:女性も、AVを観てる人は観てるんですよね、こういうAVとかのイベントで女性が来ることは昔だと考えられません。

川奈:『ジャパン・アダルト・エキスポ(JAE)』という、AVメーカーがブースを出したり女優さんがステージに上がる「AV業界のお祭り」のようなイベントがあります。昨年11月、AVANとして初めてブースを出したんですが、女性のお客さんが予想外に多かったです。来場者の1割くらいは女性でした。

花房:AV男優さんに憧れてる一般の女の子って、すごい多いんですよね、詳しく知っていますし。

■業界の裏方にも増える女性

女性が増えているのはファンだけではなく、AV業界のスタッフにも増加傾向が見られるようだ。

花房:AV業界の中にも、じつは女性が多いですよね。広報さんとか、監督さんとか。

川奈:今はAV女優以外の女性業界人がずいぶん多くなりましたし、今後も増える傾向にあると思います。私が現役だった頃も、メーカーの広報さんにはいましたが、少なかったと思うんですけどね。

うちの夫(溜池ゴロー監督)は、大手AVメーカーSODクリエイトの社外取締役で、新卒採用の面接官をやっているのですが、女子大生、しかもかなりいい大学の学生さんが面接受けに来るんだそうです。

監督志望の女性も受けに来るそうです。「大学で映画を作ってます」といった人がAV監督を志望して入ってくることがあるみたいです。

■AV業界はセクハラが少ない?

女性が増えつつあるAV業界は、意外にもセクハラなどの面はきっちりしているのだという。

花房:AV業界は性的な部分が過剰な面はありますが、AV男優さんと接してても、「人としてきちっとしてるな」と思わされることが多いです。

私は様々な業界で仕事をしてきましたし、今は旅行業界にもいますが、私の知る限りのAV出演者、制作の方は、人間的には真面目で礼儀正しい人が多い気がします。バスガイドをしていると、お客さんや、運転手さんまでに女性の容姿や年齢についてひどいことを言われます。今はだいぶマシになりましたけど、セクハラはたくさんあります。

男優さんと接していてあまり嫌な思いをしたことがないのは、彼らが「女性と接するプロ」だからという面もあるんでしょうけど。

川奈:私もよくSNSとかで「AV男優になりたい」という相談を受けるんですけど、「ふざけるな!」って思いますよ。AV女優も続けるのはなかなか難しいと思うんですけど、プロのちゃんとしたAV男優になるのは本当に難しい。

まず、メンタルが強くないとだめ。業界の中でも撮影現場周りの人は礼儀に厳しい。挨拶はできないとだめ。男優さん同士は先輩後輩の上下関係もあるようだし。

花房:男優さんは、ほとんどフリーランスですもんね。フリーは嫌われたら仕事は来ないですし。

川奈:そう、女優さんにもフリーランスの人はいますが、プロダクションに登録している人の方が圧倒的に多いなか、男優さんは全員フリーランスですから。女優さんから嫌われたり女優さんのプロダクションにNGくらっちゃうと結構大変なので、好かれないといけない。

しかも、体調も崩せない。健康管理をしっかりして、性感染症検査も受けないといけない。大変な仕事ですよ。

■男性は「女性が欲望を持つ」のが恐い?

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一方で、自らの性を自らの意思で楽しもうとする女性に対しての強い風当たりは、「男性による恐怖心」なのではないか、と語る。

川奈:女性にももちろん性欲がありますが、「性欲があるということ」が認められづらい世の中です。私は21歳で結婚したんですけど、最初の夫は私が性欲を持つことをすごく嫌ったんですよ。彼は若い女の子が好きで、私が大人になってセックスが楽しくなり、「彼ともっとしたい」と思うのが、彼には許しがたかった。

性欲も感情もない、物のような「綺麗なお姉ちゃん」でいてほしかったのでしょう。彼は極端だったけれども、世の中の男性が「女性に性欲を持っててほしくない」「女性の性欲について考えたくない」と考えるのは、社会がそういう構造になっているからなんじゃないかなと気づいたんです。

だから私は、そこに反発を覚えて、「世の中の風潮に乗せられないぞ」「好きなように性欲のままにセックスするぞ」と目覚めたんですね。

花房:私は、20代までは1人の男性しか知らないんですよ。その人しか知らないから、お金を沢山引き出されたのに抜けられなくて。だけどそこから抜けられたのは、他の人としたから。自分で自分を縛っていたんです。

セックスに愛情は必要ですけど、そこまでセックスを高尚なものと捉えなくてもいい。たとえば、AV女優や風俗嬢を差別する人がいるじゃないですか。あれは、女の人が欲望を持つのが怖いんですよね。「AV女優や風俗嬢は被害者じゃないといけない」と考える人がたくさんいると思う。

川奈:そういう考え方の人は、女性にも多いですよ。AV出演強要問題に関心がある方の中には、冷静な批判というよりは、AV業界全体をいたずらに貶める発言を繰り返す人もいる。

また「自らAVに出たい」という女性の存在は無視したり、社会における加害者側または被害者側だと断罪する態度の方もいる。

■AV業界は「消費される性」について再考すべき

川奈:セックスと人間は隔てられない物であり、生きている限りは性というものと付き合っていかないといけない。性を男性に管理されるのは楽な面もあるかもしれないけれど、「それでは本当の人生を生きていることにはならない」と考える女性側の不満や怒りは、非常に大きく蓄積されています。

そうした不平等を背景としたフェミニストの戦いの歴史が積み重ねられる中で、若い女性が自分たちの性を自分で取り戻して、「AVに出てもいいじゃないか」と思えるようになって、積極的にAV業界に飛び込んでくるようになりました。

ただし、AVは「大量生産・大量消費される商品」であって、AV女優は宿命的に消費されてしまう。女優さんは大勢必要になり、たくさんの女優が消費されてしまうのです。現役のAV女優は約4000人。また約40年のAV史をさかのぼり、引退したAV女優も含めると、AV出演を経験した女性たちは約15万人にものぼります。

積極的にAV出たい女性が増えた時代だからこそ、その15万人の女性が全員消費されてしまっているという事実についても、AV業界は問題意識を持って考えるべきです。

花房:実際、川奈さんは、楽しそうだなと思ってAVに出て、実際に楽しかったと思います。知り合いの知り合いで20年位前に売れっ子の女優だった方も「楽しかった思い出しかない」と言っています。

今、元AV女優であることを隠さずにクリエイティブな職業で活躍している人たちもいます。「消費される性」は、その人を取り巻く状況にもよりますが、本人が気持ちをしっかり持って第二の人生を歩もうとする姿勢も大切だと思います。そのためにもAVANの存在は重要です。

AVANでは、7月29日に「渋谷ロフト9」でパネルディスカッションを開催する予定だ。

【イベント情報】★7月29日(土)「渋谷ロフト9」にて14時〜約2時間 パネルディスカッションを開催。様々な立場の方をお招きし、AV産業の課題と未来を多角的に描く試みです。チケットのご予約につきましては再度お知らせさせていただきます。スケジュールを空けてお待ちください!

— AVAN 一般社団法人表現者ネットワーク (@avanweb001) June 1, 2017

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(取材・構成/しらべぇ編集部・嘉手川裕太)

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