上品スープの虜に…画廊を名乗るラーメン店のレベルが高すぎる件

上品スープの虜に…画廊を名乗るラーメン店のレベルが高すぎる件

上品スープの虜に…画廊を名乗るラーメン店のレベルが高すぎる件

(新大橋通から路地に入り、探さなければ辿り着けない)

下町の風情が愛される東京・人形町。安産祈願で有名な水天宮からほど近い路地に、知る人ぞ知るラーメン店がある――『麺画廊 英 〜Noodle Art Gallery HANABUSA〜』(以下、英)だ。

ラーメンマニアがここへ通うのには、いくつかの理由がある。まずは月替わりで登場するシェフ・手塚良太氏のアイデアあふれるメニュー。

贅沢で上品なスープ。定番メニューであっても進化し続ける味わい故に、同じメニューを食べ続けるため、通い詰める常連もいるほど。

そして、シェフ・手塚良太氏のキャラクター…そんな英の魅力をレポートすべく、6月某日、しらべぇ取材班は同店を訪れた。

■豆乳と和出汁が絶妙な冷彩麺

©sirabee.com

まずは、6月限定「鼓〜つづみ〜 豆乳冷彩麺」(870円)。

豆乳出汁に使われているのは、九州産フクユタカ100%の豆乳・花かつお・あさり・昆布・干し貝柱。低温でじっくり揚げた干し貝柱に加え、干し貝柱の香味油が絶妙。

トッピングされているのは、イタリア産ホエー豚のバラ肉を茹でてから氷で締め、白胡椒と共に醤油に漬けたもので、ほどよい塩味と風味が効いている。

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豆乳特有のクセや臭みがなく、それでいて大豆のまろやかな甘みが…かつおやあさり、昆布の和出汁と調和した味わいは繊細で、れんげが止まらなくなる。

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冷たく、しっかり締めた細い手揉み縮れ麺はスープとよく絡み、さっぱりしているのにコクがあって、バランスが素晴らしい。

麺とスープの美味しさに、スープまで飲み干したくなるのだが、ここ英では〆ごはんのために、スープを残すのが重要だ。

普通、ラーメン店でライスをつける女性は稀だが、ここはスープ茶漬けまで食べるのがデフォルトで、女性客も多くが〆まで食べる。

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麺の注文を受けてから氷水で洗い、器に盛りつけて冷蔵庫で冷やしておくごはん。この「わさび茶漬け」(130円)は冷たいスープに合わせて、粉わさびが添えられている。

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スープの下に沈んでいた揚げた干し貝柱と共に味わうごはんは、米の甘みでスープの味わいが変化し、これもまた幸せな美味しさ。スープを飲み干すのをがまんしたことが、ここで報われる。

■4種類の鶏と部位が織りなす看板メニュー

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続いて、看板メニューでもある「雫〜しずく〜 鶏出汁拉麺」(820円)。

透明なスープで、こちらも繊細で上品な味わいから、塩ラーメンと感じる人も多いというが、タレは塩ではなく白醤油。

トッピングには豚と鶏・二種類のチャーシューと、シナチクの代わりにソテーされたレンコンというのが個性的だ。

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山水地鶏の丸鶏、はちきん地鶏、美桜鶏・つくば茜鶏のガラを炊いた澄んだ鶏出汁は、キラキラと輝いている。一般的な鶏出汁は、コクを出すために豚肉が使われるが、今現在、「雫」で使われているのは調整用の昆布のほかは鶏のみ。

それぞれの鶏の特徴と、部位によって出る旨味の違いを引き出し、正真正銘・鶏だけでこの味を出すのは並ではない。

丁寧に炊き出された滋味と脂の美味さが感じられるスープは、こちらも〆のために残すのに、かなりの意志が強いられる逸品。

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美味しいスープと細い手揉み縮れ麺――これが美味しくないわけがない。麺の食感と鶏出汁のハーモニーに口の中が満たされる、幸せな瞬間だ。

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そして〆のごはんが、こちらは二種類「季節の柑橘茶漬け」か「本わさび茶漬け」(どちらも130円)から選べる。

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取材時の柑橘は、国産レモン。防腐剤などは使われていないので、絞ってからそのままインしても大丈夫。

柑橘の爽やかさと鶏出汁の奥深さとのコンビネーションは、出会ったことのない味で新鮮。食べた瞬間、美味しさと驚きが楽しめる。

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そしてもちろん、本わさびと鶏出汁の相性は疑いようもない。刻み海苔と本わさびの風味がスープにアクセントを加え、最後まで飽きさせない。

ちなみに英では、この「雫」以外にも定番麺があり、お気に入りを見つけるのも楽しいだろう。

■別名が「チャラーメン」!?

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ここまで、英の魅力をまじめにレポートしてきたが、この店には常連客が愛情をこめて呼ぶ、もう一つの名前がある。その名前は「チャラーメン」。

シェフ・手塚氏の友人が「チャラ男の作るラーメンだから、チャラーメン」と言ったのが広まり、この店の通称となっている。実は手塚氏、ラーメンの修行を始める前は1年半、横浜でホストをしていたのだ。

手塚氏:一応ナンバー1にはなりましたけど、月に100万円稼いでも、それを継続するためにはコストがかかるんですよ。いいスーツ買ったり、つき合いがあったりで、100万あったら90万くらい使わないと…だから資金作りにはならなかったですね。(笑)

茶髪に特注のコックコートは、確かにチャラく見えなくもない。しかし、ラーメンにはバカマジメ。店名に「画廊」とつけた理由をこう語る。

手塚氏:師匠の店が「麺劇場」だったので…というのもありますが、フレンチとかイタリアンのお皿って絵画のような美しさがあるじゃないですか? 庶民的なラーメンとは、かけ離れているような――そこを近づけていきたかったんです。

――そこには近づいた?

手塚氏:ラーメンという食べ物へのお客様の意識が、この10年で上がりましたよね。みんな鉢巻して、肌着みたいなズボンでやっている…ってイメージだったのが、こういう格好(コックコート)でやっているようなラーメン屋さんも、いるようになって。

僕がどうこうではなくて、ラーメン業界へのお客様の意識がすごい上がってきている中で、近づけていると思います。

■楽しみで早く並びすぎる客も

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――月替わりの麺を出し続けるのは、大変なのでは?

手塚氏:以前は月1じゃなくて、月の前後半に分けて出していたんです。そうしたら常連さんから「追いつかないよ」って怒られました。(笑)

でも、どこかで食材を見つけたり、教えてもらったりすると、使ってみたい症候群が出てしまう。最終的にギリギリ前日まで、細部をいじったりすることもありますね。

ありがたいことに、楽しみにしてくださるお客様がいて、毎月1日は行列になります。すごい時は、僕が店に来る前から並んでくださった方までいて、あれは驚きました。(笑)

「鼓」「雫」2品の材料と味のレポートを見て、ラーメン好きやグルメな人なら、「この店、原価率どうなってるんだ!?」と思った人もいるだろう。

正直、どちらもラーメンとしては2000円クラスの味で、これを800円台で提供しているのは、店の経営を心配したくなるレベル。

手塚氏:やっぱりラーメンなので、〆のごはんも付けて1000円以内に収めたいんですよ。それに、周りはサラリーマンの人が多いので、そんなには出せないと思うんですよね。なので、あんまり上げちゃうと…。

贅沢に使っていますが、赤字にはならないようにがんばっているので、あとは数を出していく感じですね。

(「請求書は見ない」という、ムチャなシェフを支える池座さんと)

そうは言っても、放っておくと、とんでもない材料を仕入れてしまうこともあり、「番頭さん」ともいえるスタッフ・池座さんに叱られることも。

そんな贅沢な英のラーメン、ぜひ実際に食べてみてもらいたい。

【麺画廊 英 〜Noodle Art Gallery HANABUSA〜】
住所 東京都中央区日本橋人形町2-35-2
営業時間 11:30-13:50、18:00-21:00
定休日 土曜日(祝日含む・不定休)

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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)

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