大阪地震で「スマホ没収」の名門進学校 闇実態に「時代錯誤」と卒業生も嘆き

大阪地震で「スマホ没収」の名門進学校 闇実態に「時代錯誤」と卒業生も嘆き

大阪地震で「スマホ没収」の名門進学校 闇実態に「時代錯誤」と卒業生も嘆き

(Devenorr/iStock/Thinkstock)

当サイトでは先日、「大阪地震、生徒のスマホを没収する教師が続出 『命より校則』に疑問相次ぐ」と題した記事を配信した。

6月18日に発生した大阪北部地震の際、緊急地震速報や親からの安否確認の連絡が原因でスマホの所持が判明した生徒から、「校則違反」として教師たちがそれらを没収した…という内容だ。

校則を守ることは生徒の務めである一方、大規模地震の際は安否報告や余震への警戒などの観点から、連絡手段を持っておくことは重要。だが、一部の現場では柔軟性に欠いた対応が取られているようだ。

■奈良県の名門私立で地震翌日に「スマホ狩り」

この問題で現在、大きく揺れているのが奈良県にある某名門私立進学校だ。同校は関西有数の進学校として知られ、中学と高校を有し、2018年度は現役・浪人合わせて東京大学、京都大学にそれぞれ数十名合格させた実績を持つ。

だが、一方で厳格な管理教育でも知られており、校内はもちろんのこと、登下校時の携帯電話・スマホ類の使用・携帯を認めていない。その結果なのだろか、地震翌日にこんな出来事が起きた。在学生のひとりが語る。

「地震の翌日に中学生が下校中に携帯を使ってるところを、体育教師が見回りに来ていて取り上げたそうです。うちの学校はわりと普段から体育教師中心に学校外で見回りをしていて、今回は、『たまたま地震翌日に』見回りをしたそうです」

同校は関西有数の進学校でありながら、立地面で恵まれているわけではなく、ゆえに遠方から1時間半〜2時間程度かけて通う生徒も少なくない。通学にも慣れた高校生ならさておき、小学校を卒業して間もない中学生の子供がいる親は、大変心配だったはずだが…。

「仮に中学生がゲームしてたとしても、一応地震直後なんで注意ぐらいで終わればいいのにって正直思いましたね」(上記在校生)

上記のように厳しい監視体制のため、同校の生徒の多くはスマホを持ち運んでいない。その結果、地震直後には駅前の公衆電話に、数十名以上の列が形成されることになる。

なお、別の在校生いわく、現在の高3が中1の頃は、所持ではなく携帯電話の「契約」そのものが禁止されていたという。

■当サイト報道翌日に期限付きの「特例」

(©ニュースサイトしらべぇ)

(在校生提供・編集部で一部モザイク処理)

だが、さすがに上記の措置は在校生や保護者から批判の声が上がったようで、ネット上でも大きな騒動に。当サイト記事が配信しているひとつ「ニコニコニュース」では500以上のコメントがつき、学校の対応を非難する声も多かった。

それらを受けてか、同校では21日に「震災に伴う携帯電話持ち込みについて(ご案内)」という資料を生徒たちに配布。その内容の主なところを抜粋すると…

・期限は22日(金)〜30日(土)まで

・連絡以外の使用は禁止で、持参した携帯電話は教師に預け、下校時に受け取る

・登下校時に使用する場合、他の生徒の目につかないところで

・他言しない(あくまで特別な事情による許可であり、むやみに他の生徒を刺激したり、他の目的に使用されることを防ぐため)

・携帯電話の番号を学校(担任)に伝える

という感じ。

ここで地震について基本的な知識をおさらいすると、地震はいつ何時来るのかわからないものである。今回の大阪北部地震の余震がおさまったとしても、いつ新たな大規模地震が来るかは予想できないのだ。

だからこそ、「特例として30日まで認める」というのは、有名進学校とは思えない、知性に欠ける判断とも考えられる。

■干渉はスマホだけではない

また、別の在校生は、体育教師らによる見回りの実態をさらに詳しく語る。

「携帯・スマホの見回りは、学校とその最寄り駅の間の通学路と、多くの生徒が利用する天王寺駅〜最寄り駅の快速電車内で行なわれています。たまに天王寺駅周辺でも見回りしているそうです」

また、目を向けられるのはスマホ所持だけではないという。

「うちの学校は進学実績が第一なので、生徒の意思に反して志望校を変更させられることも多い。東大以外を書くと、変更させられるみたいな。

また、異性関係にもうるさくて、校則自体が毎年ちょこちょこ変わるので今年には消えてましたが、去年の校則には交際禁止かつ見つかったら親に連絡を入れるというのがありました。

細かいルールなどは学年ごとに違ったりするのですが、現在の高2は付き合ってるのが教師にバレると、誰と誰が付き合ってるとかを確認されてファイリングされるそうです」

■そもそも「スマホ禁止」は時代に即しているのか?

もっとも、このような管理主義的指導は今に始まったことではないよう。10年ほど前に同校を卒業した男性は次のように語る。

「少なくとも自分が中学受験した頃には、母校は勉強オンリーの典型的詰め込み教育な学校だった。全体主義的なのもそうで、説明会のとき、生徒が学校の良さを伝える場面があったのですが、子供ながら違和感を持ったのを覚えています」

そして、校則については次のように持論を述べる。

「個人的な意見ですが、『校則だからスマホ禁止』というのは今の時代に合ってないと思います。というのも、今後社会に役立つ人材を育てる上で、スマホやPCに関する知識や、それらを通じて学校以外の社会と向き合うのは、絶対的に必要だからです。

『禁止されてるのに持ってくるやつが悪い』という意見もあるようですが、それは思考停止でしかなく、時代の変化に合わせて校則もアップデートしていくべきだし、教師としては生徒に一定の自由を与えた上で、優秀な大学へ進学させる指導をしてほしい。

最近、母校は『次世代のグローバルリーダーを養成』とか言っているそうですが、リーダーになるには研鑽を積む一方で、多くの人々が普通に行なっていることに触れるのも大事ではないでしょうか。どれもこれも時代錯誤甚だしいと思いますね」

■「校則とスマホ」弁護士の見解は?

今回の地震では、多くの保護者が我が子の安否を心配したことだろう。そこで気になるのが「スマホ没収と、それによって起きうるかもしれない事態」について。

しらべぇ取材班は、しらべぇコラムニストで、レイ法律事務所に所属する高橋知典弁護士に話を聞いた。

高橋弁護士

(1)教師が生徒のスマホを没収するのはそもそも法律的にOKなのか?

「教師がスマホを没収することは違法になるのか、ということについては、無理やり取り上げる等の強引な没収はできませんが、校則違反で懲戒処分等の指導ができてしまうので、事実上、OKということになると思います。

以前、地毛が茶髪の女の子を、無理やり黒髪に染めさせた事件でも校則は話題になりました。あの事件はさすがにやり過ぎていると思いますが、一般に学校は、よっぽど酷いことでもない限り、校則を決めて、その校則に違反した生徒に対して退学処分を含む指導を行なうことが許されています。

今回の携帯没収についても、校則で定めているのであれば、携帯の回収に従わない生徒に対して、校則違反を理由に、指導をすることは許されていると考えられます」

■「スマホ没収」でもし災害に巻き込まれたら?

(2)大阪で地震が起き、余震の危険性もあるなか生徒からスマホを没収した学校があったが、もしこの没収が原因で生徒が災害に巻き込まれたら、学校に責任を追求できるのか?

「先ほどは、携帯没収が許されているという話をしましたが、実際に今回の事例で携帯を没収して、それが原因でもし生徒の命に関わることがあった場合には、学校は責任を負わなければならないでしょう。

学校には、生徒を保護者の代わりに大事にする義務があります。これを安全配慮義務というのですが、この安全配慮義務は、その状況毎に、生徒の生命や身体の安全を守るために変化していきます。

簡単な話、普段は学校内の安全の為に「廊下を走るな」ということも、不審者が校内で追いかけてくるような状況で守れというのでは本末転倒です。特に今回の地震のような大型災害の場合、情報の取得の速さが、生存の可能性を大きく左右することは当然のことです。

この状況の中で、情報源になる携帯電話を生徒から取り上げたのであれば、教員は生徒が収集できた災害情報を代わりに取得して、伝えるくらいの覚悟が必要でしょう。携帯を取り上げた結果、生徒の生命に関わる問題が生じたならば、その責任を負うことになるでしょう」

■「校則のための校則」ではない

また、高橋弁護士は次のようにも語る。

「校則はよりよく学校生活を送るために必要な制度であったはずで、校則のための校則ではなく、生徒の命や安全を前提に、学業を深めるために必要なルールであったはずです。そのルールが、生徒の緊急事態にも優先されるようでは本末転倒でしょう。

確かに先生から見た時には、地震直後に登校してきた生徒たちは、いつもよりも集中力に欠け、学業に身が入らない状態であったのかもしれません。しかし、例えば授業中には、鞄に入れて表に出さないようにするなどすれば、携帯を取り上げなくとも目的は達成できたのではないでしょうか。

先生も人であるように、生徒も人です。教員も被災者であり、だからこそ普段のような判断をすることが難しかったのかもしれませんが、だからこそ互いに知恵を出し合い、安全確保を最優先に行動することで、双方の安全を確保しつつ信頼関係を築く行動につながると感じます。校則よりも生徒とご自身双方を大事にする判断をしていただきたいです」

■他の学校でも「普通」にあること

なお、今回はボリュームの都合でこの学校に焦点を当ててお伝えしたが、このような話は程度の差こそあれ、少なくない学校に存在しているようで、記者の取材でも複数校確認できた。

緊急地震速報や親からの心配の電話が原因で校則違反となり、スマホを没収されてしまうことは、はたして今の時代の教育としてふさわしいものなのか。地震大国に住むものとして考えていく必要があるのではないか。

(取材・文/しらべぇ編集部・尾道えぐ美 取材協力/レイ法律事務所・高橋知典弁護士)

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