妊娠すると依願退職を強要 有給消化も許さないワンマンブラック企業の恐怖実態

妊娠すると依願退職を強要 有給消化も許さないワンマンブラック企業の恐怖実態

妊娠すると依願退職を強要 有給消化も許さないワンマンブラック企業の恐怖実態

(monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock)

「マタハラ」という言葉が、最近よく聞かれる。マタニティハラスメントの略で、妊娠・出産した女性社員に対する会社などでの嫌がらせのことだ。ブラック企業では、マタハラにまつわる被害も少なくない。

GPSを使って残業時間の証拠を自動で記録できるスマホアプリ『残業証拠レコーダー』を開発した日本リーガルネットワーク社には、そんなブラック企業エピソードが寄せられた。

■妊娠すると依願退職に

Aさんが以前勤めていた会社は、有名無実の産休・育休制度があったようだ。

「産休、育休制度はありますが、私が在籍していた当時は取得者はいませんでした。妊娠すると会社を退職する方向に持っていきます。しかも、それを社員側からの依願退職に持っていく徹底ぶり。

退職時に有給休暇を消化することも拒んできます。産休、育休と同じで、休んでいる奴に給与は払えないと言われました。社員の権利よりも、ワンマン社長(会長)の方針が優先されます」

ボーナスが少ないのに加えて、プロパー社員と中途採用との給与格差も大きかったという。

「ボーナスについても満額支給されることはなく、寸志(10万程度)を頂くのみです。当時は出るだけマシと思っていました。井の中の蛙なので、何が普通か教わることはありません。

そんな社員に対して社長は、支給日にわざわざ全員を本社に集めます。慣例でしたが、部署ごとに社長へお礼の挨拶をすることを強要されました。

プロパー社員の給与は低く、中途採用の給与は高いです。私に中途採用の部下はつきましたが、その人間の方が給与が高いと知り、当時は愕然としました」

■ワンマン社長の情実人事

Aさんが受けたブラックぶりは、マタハラや給与格差にとどまらない。

「仕事面では、人間関係で気に入られた奴は出世が早かったり、仕事内容でも小手先で誤魔化せる奴が評価されます。評価制度の充実を謳っていますが、結局はワンマン社長や、そのワンマン社長に気に入られた誤魔化し人間達が同類を評価します。コツコツやる人間は、労働力を搾取されるだけでした。

転職した途端、評価されることしかありませんでした。今では当時の年収の倍ほどになりますし、役職者です。いかに評価制度が酷いかは、転職してからのほうがハッキリ分かります。課長クラスが売り上げを中抜きしていたことも秘匿し、刑事事件にしていません」

■弁護士の見解は…

(©ニュースサイトしらべぇ)

結果的に転職に成功したAさんだが、この企業にはどのような問題があったのだろうか。鎧橋総合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…

早野弁護士:妊娠した女性社員を退職させるというのは、仕事と育児・介護の両立を支援するために定められている育児・介護休業法の精神に反しています。

例えば、育児・介護休業法は、育児休業等を申し出た労働者に対する解雇その他の不利益な取り扱いを禁止しており(同10条)、また、事業主に対して、上司や同僚からの妊娠・出産、育児休業等を理由とする嫌がらせ(マタハラ・パワハラ)を防止する措置を講じることを義務付けています(同25条)。

Aさんが勤めていた会社が、育休を申し出た社員について解雇、契約更新拒絶、労働契約の内容の変更、降格等の不利益な取り扱いをしていたのであれば、育児・介護休業法違反になります。

また、妊娠中の女性社員を退職させる行為についても、その方法によってはマタハラとして不法行為が成立する可能性があるでしょう。

■有給取得の妨害には刑罰も

退職時の有給消化を会社に阻まれた経験者は少なくないかもしれないが、それについても早野弁護士は警鐘を鳴らす。

早野弁護士:有給休暇の消化については、労働者は、原則として有給休暇を自由に取得することができます。

会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に限って有給休暇を取得する日の変更を求めることができますが、すでに退職日が決まって有給休暇の消化に入ろうとしている労働者に対して有給取得日の「変更」を求めることは事実上不可能です。

したがって、Aさんが勤めていた会社の有給休暇の消化を妨害する行為については、労基法39条違反となる可能性が高いでしょう。労基法39条違反には刑罰が定められており、このように会社が有給休暇の取得を妨害した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます(労基法119条1号)。

ブラック企業への対策として必ず検討すべきことについても、教えてくれた。

早野弁護士:人事評価については個別の事情によるところもあるので確たることは言いにくいですが、一般論としては、ワンマン社長が支配するブラック企業では、経済合理性に反した行為がとられる傾向にあります。

最初にブラック企業に入社してしまうと、そこで行われている不合理な慣行を当たり前のように受け入れてしまいがちですが、転職することでそのような間違ったマインドから解放されることも転職のメリットの一つといえます。

ブラック企業に就職してしまったかもしれないと感じたときに必ずとるべき対応策は、転職活動等を通じて外の世界を知ることでしょう。

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)

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