採用時の条件は嘘だらけ 有給も取らせず38℃の高熱でも働かせるブラック企業の手口

採用時の条件は嘘だらけ 有給も取らせず38℃の高熱でも働かせるブラック企業の手口

採用時の条件は嘘だらけ 有給も取らせず38℃の高熱でも働かせるブラック企業の手口

(metamorworks/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

就活や転職の際、給与や賞与、勤務時間などの労働条件は、もっとも慎重にしっかりチェックする人が多いだろう。働いてみると、多少のズレがあることは、ない話ではない。しかし、「まったくの嘘」だったとしたら…。

残業の証拠を自動で残せるスマホアプリ「残業証拠レコーダー」を提供する日本リーガルネットワークには、そんな嘘だらけのとんでもないブラック企業の体験談が寄せられた。

■労働条件を偽った理由がひどい

M.A.さんは、都内企業に一般事務として入社した。

「『勤務時間は9:00〜18:00、週1回程度土曜出社あり、賞与年2回』とありましたが、この全てが嘘でした。求人の嘘の理由は『本当のことを書くと労働基準法違反になるから』。

本当の条件は8時半出社、年に数回は7時45分前に出社しなければ遅刻扱いなのに、面接では『初日は8時半に来て。2日目以降は周りに合わせて』と指示されました。

朝礼は9時からでしたが、8時半始業で朝礼前から仕事を始めることを強制されるのが普通ではないことを辞めてから知りました」

■残業代も賞与も出ず

残業代も「年2回」と定められていたボーナスも、裏切られる結果となった。

「残業代が出るか先輩に聞くと、『残業代が出るなら他の人たちはかなりの高給取りになる』。早出手当も残業代もゼロで、ビジネスチャンスだと言っていた社長の言葉は嘘。入社した当時から赤字が続いていたため賞与も出ませんでした。

ちなみに賞与がもらえていた年は『賞与ありがとうございました』と日報に記載させられていたそうです。イベントでノルマを達成した人には”努力賞”として現金1万円を渡し、『努力賞ありがとうございました』と書かせていました」

■私用での有給は不可

給与の支払いが悪いだけでなく、労働者の当然の権利である有給休暇についてもブラックぶりが炸裂。

「売上回収率も悪く、請求書の金額通り全額入金する得意先が少なく、回収率は常に40%を切っていました。営業はノルマ達成のために休日出勤や終電までの残業は当たり前、人によっては年間休日80日ない人もいました。

私は事務なので年間休日105日でしたが、土曜出勤が多くひどい時は1ヶ月ずっと週6出勤でした。それでも上司は『365日中105日もあるんだよ』。

有給は私用では使えず、事務が有給を取ると営業が内勤をしなければいけないので、38℃以上の熱があっても出社していました。具合が悪く病院で点滴を受けた後、迎えに来られる人はいるか聞いてきた看護師さんに『会社に戻る』と言って驚かれたこともあります」

■下がり続ける手取り給与

通常なら、働き続けると昇給があるものだが、M.A.さんの場合は逆の成り行きになっていく。

「新卒の求人を出しても応募はほとんどなく、入社した新入社員は残業時間と残業代が出ないことを聞いて1週間以内にみんな逃げていきました。

私が辞めたのは4年間で昇給が2,000円しかなく、それなのに毎年保険料が上がっていくため手取りが下がり、ついに15万円くらいになったからでした。

最近規模を縮小し、私のポジションは続けていてもリストラされていたことを知りました。上場企業で働いている今は、あの時この会社を辞める決断ができて本当に良かったと思います」

■弁護士の見解は

こうしたみなし残業代は適正なのだろうか。鎧橋綜合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…

早野弁護士:採用時に提示された労働条件と実際の労働条件が違ったという話は、比較的よく耳にします。M.A.さんの会社では、このような労働条件の偽りの他にもいくつかの問題があったようです。

■求人票に虚偽の労働条件を記載するのは違法

早野弁護士:M.A.さんの会社のように、「本当のことを書くと労働基準法違反になる」、「本当のことを書くと応募が来ない」などの理由で、虚偽の労働条件で求人募集を行う会社は多数存在します。

例えば、厚労省は、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件が相違していたというトラブルが年間8507件(平成29年度)あったと公表しています。

ハローワークや職業紹介事業者を通じての求人であった場合、求人時の労働条件の明示義務(職業安定法5条の3第2項)に違反し、虚偽の求人を行った者には6か月以上の懲役又は30万円以下の罰金が科され得ます(同法65条9号)。

■即刻辞めることも可能

こうしたときには、労働者サイドにも対抗手段があるという。

早野弁護士:また、このような場合、労働者は、労働基準法15条2項に基づき会社との雇用契約を即時解除することができます。さらに、悪質な事案では、虚偽の求人によって被った損害について、不法行為に基づき損害賠償請求を行える場合もあります(民法709条)。

M.A.さんの場合では、伝えられていた就業時間と相違して朝残業が常態化しているにもかかわらず、残業代が支払われなかったようです。残業代の不払いは、労働基準法37条に違反するものであり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労基法119条1号)。

ただ賞与については、就業規則や雇用契約書の確認が必要だ。

早野弁護士:他方で、賞与については、年2回支給する定めがあったようですが、会社が法的な義務として賞与を支払う義務を負うのは、就業規則や雇用契約書に賞与の支給条件が明記されている場合に限られます。

M.A.さんのケースでも、就業規則や雇用契約書に賞与の支給条件が記載されていた場合には、会社は賞与を支払う義務を負っていると解釈される可能性があります。

■年次有給休暇制度をとらせないのは違法

早野弁護士:私用での有給は認めないという運用は、労働基準法39条に違反する誤った年次有給休暇制度の運用方法と言えます。

有給休暇制度は、会社側が私用での取得はできないなどの条件を付すことはできず、労働者が取得を請求した時点で、原則として有給休暇は付与されます。

あまり知られていませんが、労基法39条違反には刑罰が定められており、このように会社が有給休暇の取得を妨害した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労基法119条1号)。

なお、日本リーガルネットワークは、今月31日まで新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)

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