なぜ営業マンは経理をバカにするのか? 元敏腕経理マンに聞いた

なぜ営業マンは経理をバカにするのか? 元敏腕経理マンに聞いた

なぜ営業マンは経理をバカにするのか? 元敏腕経理マンに聞いた

(『これは経費で落ちません!』)

26日、多部未華子主演ドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK)が放送開始となった。

この作品は簡単に言うと、「石鹸(せっけん)メーカーの経理部に勤めるアラサー独身女子・森若沙名子が、自分のもとに回ってくる領収書や請求書をチェックするうちに、社内の疑惑や人間関係が浮かびあがり、さまざまなトラブルに巻き込まれていく……」というお話である。

■元経理マンに話を聞いた

会社員になると、多くの人が一度はお世話になるこの「経理」という仕事。しかし、実際のところどんな業務をしているのか、詳しく知らない人も多いのでは。

中には、心の中で「地味な仕事」「目立たない」だとか、「お金を稼いでないから気楽なご身分だよな……」なんてことを思っている人もいるかもしれない。

ということで今回、しらべぇ取材班では大手総合商社の経理部に数年間在籍した経験を持つ男性・A氏(30代)に、経理という仕事について話を聞いた。この記事を読めば、多部ちゃんの活躍をより深く楽しめるかもしれないぞ。

(※今回、取材したのが大手総合商社の経理マンだったため、中小企業の経理よりも話の規模感が大きめなことに注意。一口に経理と言っても、業務内容は企業によって異なっている)

■そもそも経理ってどんな仕事?

ーーそもそも経理ってどんな仕事ですか?

A氏:逆に聞くけど、君はどんなイメージを持ってるんや?

ーー私ですか……お金の管理をしていて、数字が合っていないとめちゃめちゃ怒ってくるという感じでしょうか。あとは期日ギリギリに持っていくと「遅いです……」って静かにキレてくる。こっちからすれば「たった2日遅れただけなのにいいじゃん!」ですよ。

A氏:ギリギリと言いつつガッツリ遅れてるやんか……。

ーーこ、こっちだって忙しいんです……。

A氏:まあお互いに事情があるとして話を戻すと、経理の仕事はわかりやすく言うと、「他人が書いた日記を清書する」って感じやな。

ーー他人が書いた日記を清書、ですか。

A氏:そうそう。「この日、取引先のあの会社のあの人と仕事飲みしてきた」って雑に書いた日記を、読みやすく、客観的に書き直すみたいな感じやな。「一緒に飲んだ」って提出されたのを「接待交際費」って書き直して、部署ごとで合計していくって言えばイメージしやすいやろか。

ほんで、経理って何種類かに仕事内容をカテゴライズできるんよ。1つは日常の計上業務。簡単に言うと「昨日出張したのにはやく精算しなさい!」とか「まだ客にモノが届いてないのに売上とは言えないでしょ」みたいな感じやな。

■複雑な仕事内容に及ぶことも

ーー一般的にイメージされる、経理のお仕事ですね。『これは経費で落ちません!』もそんな感じです。

A氏:2つめは、これは商社や大企業特有なんやけど連結作業。子会社、関連会社をいっぱい持ってるから期末とかに合算する必要があるんやけど、単純に合算するわけではなくて、正しくくっつける必要があるねん

たとえば、親会社が子会社に商品を売ったとして、子会社がそれを客に売ろうとしていたけど、売らないまま決算を迎えるとするやろ? そうなるとグループ内で売上を水増ししているように見えてしまうやんか。だからそういうところで細かい計算が要るんよな。あと、大企業だと海外に支社がある場合もあるけど、国によって会計基準が違うし、他にも色んな税金の計算がある。

3つめは予算や中期計画の相談に乗り、お金面のアドバイスをすること。「買収金額はこれくらい、売上はこれくらい、経費はこれくらい……」みたいな感じやな。そこまでいくと商品知識や法律的な知識、バランス感覚も必要になってくるから、経理って言ってイメージする仕事内容とかなり違うかもしれんね。

ーーそこまでいくと、もはやコンサルタントって感じですね。

A氏:繰り返すけど、ここまでいくと大企業の経理ならではなんやろうけどな。でも、たとえば税務的な知識はすごく重要で、「オランダに会社作るのとイギリスに会社作るのでは、税金面ではどっちがいいか……」みたいな話が、優秀な経理にはできるんよ。言ってしまえばお金まわりのプロやな。

■経理に向いてる人とは?

ーーどういう人が経理部にいくことが多いんでしょう? また、向いてる人とかいます?

A氏:大企業と中小企業によって求められるものは違うやろね。で、新入社員の時点で誰が向いてるかはわからへん。計算に弱すぎるのもアカンけど、エクセルがやってくれるから……面白くない答えかもやけど、いわゆる事務処理能力が高い人は向いてるやろな。

それで、どういう人が経理部に残りやすいかというと、どちらかと言うとガリ勉タイプ。静かに経理処理のマニュアルを読んだり、勉強できたりして、インプットの時間が苦じゃない人たち。地頭よりはコツコツが大事というか、ここも世間が抱くイメージとそう遠くないと思う。

ーードラマで多部ちゃんが演じるのもそんな感じの女性です。

A氏:あとはルーティンをこなすのがうまい人。「10日になったし帳簿しめなアカンな」とか、「20日くらいにこの資料。そうすると、5に3を足して8月もそう、11月もそう……」とか、数ヶ月単位で仕事を考えられる人やな。

■経理をバカにする人に思うこと

ーー営業マンの中には経理の仕事を軽んじる人がいる気がするんですけど、実際どうですか?

A氏:ぶっちゃけ、全然おるね。普通の会社よりは少ないかもやけど、俺が今勤めてる会社でも、心の中で思ってる人はそれなりにいるんやないかな。やっぱり、「金を稼いでる」ワケではないからね。これは経理に限らず、法務も総務も財務も人事も、バックオフィスはみんなそうやけど。

ーーでも、そういう営業マンの態度って、「食わせてやってんのは誰だと思ってるんだ!」って、家事や育児を頑張っている妻に怒鳴る夫みたいな感じですよね。たしかに、お金を稼いでくる人がいないと会社は潰れてしまうけど、同じように裏側で支えてくれる人がいなくても潰れてしまうのに。

A氏:本質的には一緒かもね。ただ、面白いのは、経理に偉そうな営業マンほど、その人は儲けてない場合が多いということ。

ーーなんと!

A氏:できる人は「ここは経理に、ここは法務に聞かないとわかんないな…」って感じで、協力を仰ぐんよ。自分の弱みを理解しているというかさ。

部活のリーダーでも同じやろ? 優秀な部長はひとりで全部をこなせる人ではなく、「練習スケジュールを組むのは俺よりあいつが得意だな」とか「飲み会は俺じゃなくあの子に仕切ってもらったほうが、みんな集まるよな」って、広い視野で物事を考えられる人やんか。

■経理に問題があることも

ーーじゃあ、乱暴にまとめると「経理に対して上から目線な、横暴な営業マンは困りもの」ってことでいいですか?

A氏:乱暴にまとめすぎやな……うーん。でも、俺はそうは思わないんよな。というのも、夫に対してリスペクトがない妻が、夫にそういうことを言わせたりすることもあるやんか?

「稼ぎ少ないのに偉そうなこと言うな」「隣の家の佐藤さんとこの旦那さんはあんたより年下やのに年収1000万らしいで」って言われたら、もともと優しい夫でも「せやかて稼いでるんは俺やろ?」「食わせてもらってる時点で……」って言い返したくなるでしょ?

ーーたしかに。

A氏:これを経理VS営業に当てはめると、現実的な落とし所を聞きに行った営業マンに対して経理が「マニュアルに書いてる通りにやればできるでしょ?」と眼鏡をくいっとさせながら言う、みたいなね。まあ、夫が単純に横暴なだけのケースもあるんやけど。

まとめると、多少家をあけて遊んでる、お金の管理が下手な夫(営業マン)でも、「俺にはお前しかおれへんねん」「いつも支えてくれてホンマありがとうな……」って態度で接しておけば、妻(経理)も「しゃーないなあんた……」って受け入れるってことやな。

■経理の仕事で楽しいことは?

ーーなんか浪花節というか、やしきたかじん感が出てきた感じですね……話変わりますが、経理の仕事ってどういうところが楽しいんでしょう?

A氏:これは大企業特有の部分もあるかもやけど、基本的に社内での立場が上の人を相手にすることが多いことやな。もちろん、日々の計上業務はその辺の若手営業マンも来るんやけど、部長相手に1年目からアドバイスできたりもする。「本部長に説明せなアカンねんけどどうかな…?」って来た部長に対して「教えてあげるよ」みたいな。

ーー仕事ができる人と直接接することができると。

A氏:逆に辛いのは、最初に言ったように経理が『人の日記を清書する』面を持った仕事ということかな。俺なんもやってへんのに、人がやってきたことをただひたすら記録して、ひたすらチェックする……ってな。メモ帳全部B5サイズに揃えるより、やっぱり自分自身で日記書きたいワケよ。だから俺はその後、営業部に異動して、アフリカに行ったりしてる。まあ、もちろん世の中にはそういう清書的な作業が好きな人も全然いて、そういう人には楽しさしかない仕事なんかもやけどな。

■謙虚さと感謝の気持ちを

彼は繰り返し、「あくまでうちの会社の話やけど……」と語っていたが、会社によってはかなり高度なことをしている場合もあるようだ。

もっとも、たとえ経理部の人たちが事務作業を中心に行なっている会社でも、「俺達が稼いでるんだぞ」的なスタンスで接すると、見透かされてしまうようなので、謙虚に、感謝の気持ちを持って向き合うのをおすすめしたい。

(文/しらべぇ編集部・倉本薫子)

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