豊川悦司の魅力を総まくり。再放送であの“トヨエツの手話”が見られる

豊川悦司の魅力を総まくり。再放送であの“トヨエツの手話”が見られる

『愛していると言ってくれ』(C)TBS

 新型コロナウイルスの影響で撮影が中止・延期されていることにより、過去の様々なドラマの名作が放送されている今。

 ラブストーリーを待ち望む声も多く、そんな中、『愛していると言ってくれ 2020年特別版』(TBS系)が5月31日より4週連続で放送されるという報道に、ネット上では歓喜の声が多数あがっています。

 本作は、豊川悦司と常盤貴子が主演、脚本を北川悦吏子が手掛けたラブストーリー。

 後天性聴覚障害者の青年画家と女優の卵の「純愛」の美しさもさることながら、特筆すべきは、当時の主演二人がひたすらに美しく、絵になること。

 そこで、これを機に改めて“トヨエツ”こと豊川悦司の魅力を振り返ってみたいと思います。

◆三谷幸喜脚本の映画『12人の優しい日本人』で本格映画デビュー

 まずブレイク前の注目作といえば、本格的な映画デビュー作であり、三谷幸喜脚本・演出の舞台を映画化した『12人の優しい日本人』でしょう。

 細くシュッとしていた彼は「陪審員11号」を演じていました。前半ではミステリアスな雰囲気を漂わせていたものの、中盤で沈黙を破り、それまでの流れを覆していく様は小気味よく、その後の会話を加速させていくエネルギーともなる重要な役割を担っていました。

◆武田真治の兄役でカルト的人気『NIGHT HEAD』

 さらに、サブカル好きなどの間で注目を浴びたのが、カルト的人気を誇った飯田譲治監督の深夜ドラマ『NIGHT HEAD』です。

 武田真治の兄役で、超能力を持つがために監禁されて育った兄弟を演じました。超能力者ゆえの神秘性と孤独感、脆くも危うい攻撃性は、彼のイメージに見事にハマリました。

 また、野島伸司脚本の『この世の果て』では、ヒロインに裏切られる御曹司を、野沢尚脚本『この愛に生きて』ではヒロインの夫で、元妻と不倫する役を演じていました。いずれも「美しさ」「セクシーさ」をまとう、愛憎に塗れた存在です。

◆トヨエツに手話をさせたのは発明『愛していると言ってくれ』

 しかし、そこから一転、ブレイクしたのはご存知、『愛していると言ってくれ』でした。この作品でのポイントは、聴覚障害を持つ役柄であることから、彼の強い武器で、セクシーさの源でもある「美声」をあえて封印したこと。一種の賭けだったかもしれません。

 しかし、その代わりに強く印象付けたのは、コミュニケーションの手段として「手話」を駆使した長く美しい指先です。

 言葉の代わりに、語り掛けるのは、無駄な肉のない大きな背中と、スラリと長い指の美しい手。いずれも女性たちの大好物です。トヨエツに手話をさせたのは、発明でした。おまけに、美声がナレーションのみで聞けることも、一種の特典のようです。

◆美をさらに極めたのが野沢尚脚本『青い鳥』

 愛称「トヨエツ」はこの頃から呼ばれ始めたものですが、美をさらに極めたのが、野沢尚脚本『青い鳥』で、人妻とその娘と愛の逃避行を演じた駅員役です。

 物静かで実直な駅員さんの白いYシャツ姿は眩(まぶ)しく、自然と児童文学を愛するナイーブな青年ぶりは、まるで文学の中から抜け出してきたような詩的な美しさを放っていました。

 おそらく彼の美しさを語るとき、多くの人がこの2作を出しては「昔、すごく美しかった」「カッコよかった」と言うでしょう。

 しかし、それは彼にとってのあくまで第一章。何やらおかしいぞ、と思わせてくれたのは、映画『妖怪大戦争』で演じた加藤保憲でした。

◆『妖怪大戦争』や『20世紀少年』で強烈な個性を打ち出す第二章

『帝都物語』で嶋田久作が演じた加藤とはイメージが大きく異なり、豊川はスマートで強く恐ろしく、セクシーな加藤でした。しかし、だからこそ大事な場面での間抜けさ、哀愁が際立つ「新しい加藤」でした。

 さらに、映画『20世紀少年』でのロン毛・ひげ面・ワイルドなオッチョ役や、『娚の一生』の哲学教授、『後妻業の女』の結婚相談所所長役など、個性的な役柄を次々にこなしていきます。

 脆(あやう)く儚い美しさを手放すかわりに、強烈な個性を打ち出すようになったのは、言ってみれば第二章。

 そして、近年は第三章とも言うべき「奇人」ぶりを披露してくれています。

◆朝ドラ『半分、青い。』で偏屈な天才漫画家

 例えば、花王アタックNeoのCMで「洗濯槽にいるスーツ姿の悪臭菌」を演じたのは衝撃でした。「敵」として、苦悩の表情を見せるコミカルな芝居には、笑い、唸(うな)らされた人も多かったことでしょう。

 さらに、そうした滑稽さ、悲しさを大きな魅力としたのは、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』で演じた、ロン毛にサングラスという怪しげないでたちの、「偏屈な天才漫画家」秋風羽織先生です。

 一見して天才と確信させる異様なオーラと、偏屈さ、気まぐれさ、渋さを持つ一方で、子どものような純粋さを持ち合わせる秋風先生は、賛否を巻き起こした同作の中で最も多くの人に愛されたキャラでした。

『愛していると言ってくれ』で繊細な美しい青年画家を演じた彼が、時を経て、同じ北川悦吏子脚本のもとで、キュートな天才・変人を演じたのは、ある種の感慨すらありました。

◆どんな役でも「気品」がどこか感じられる

 ナイーブな美青年から、個性派、そして、奇人・スパイスまで。その奥行きを作っているのは、おそらく彼のルーツである渡辺えり主宰の『劇団3○○』で培(つちか)った土台でしょう。

 さらに、ブレイク前、デビュー当初には刑事ドラマの泥棒や殺人犯、ヒットマンなど、悪役ばかりを演じてきたキャリアや、多数のナレーションをこなしてきたことも、すべて血となり、肉となっているはず。

 ちなみに、ロン毛+サングラスの偏屈漫画家を演じも、悪臭菌を演じてすらも、美青年役変わらず「気品」がどこか感じられるのは、トヨエツならでは。

 近年はそんなテクニカルで変則的な気品を楽しむ機会が増えていただけに、今回の『愛していると言ってくれ 2020年特別版』でストレートな美青年ぶりに久しぶりに再会できるのは、大いに楽しみです。

<文/田幸和歌子>

【田幸和歌子】

ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など

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