マンガで学ぶ“性”のこと。「嫌だな」と感じても断りづらいあなたへ

マンガで学ぶ“性”のこと。「嫌だな」と感じても断りづらいあなたへ

『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA)

1980〜1990年代に性教育を受けた現在30〜40代の女性は、性に対して「恥ずかしい」「後ろめたい」という気持ちを拭いきれない傾向にあるそうです。だから、子どもへの性教育で戸惑ってしまったり、パートナーと性について話し合うのが苦手だったりと、困ってしまうことも。

『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(KADOKAWA刊)は、そんな私たちに「性についてあらためて“学び直す”」機会を与えてくれる一冊。マンガイラストレーターのフクチマミさんとともに本書を著した村瀬幸浩(むらせ・ゆきひろ)先生は、半世紀にわたり性や性教育に携わり、子どもから大人まで幸せに生きていくための性教育を広めています。

 前回は村瀬先生に、性教育を正しく学ぶことの意義やプライベートパーツの重要性について話を聞きました。今回は、自分の身を守るためのより具体的で大切な話を聞いていきましょう。(以下、コメントはすべて村瀬先生)

◆自分の身を守るために大切な「NO・GO・TELL」

 本書で、子どもたちに「普段から繰り返し伝えておいてほしい」と紹介されている、「NO・GO・TELL」という言葉があります。これは自分の身を守るための、3つの行動の選択肢。

@【NO】ハッキリと拒否して(イヤ!! だめ!! やめろ!! 助けて!!)

A【GO】逃げること(できるだけ人の多いほうへ)

B【TELL】信頼できる大人に話すこと(もし「秘密だよ」と言われても)

(※「NO・GO・TELL」はNPO法人CAPセンター・JAPANのプログラムです)

 もしも、プライベートパーツである口・胸・性器・お尻への接触をされたり、されそうになったら(もちろん他のどの部分であってもその人のプライバシーですから、同じように考えてください)。「怖い・不安・痛い・腹がたつ・悔しい気持ちになる」ような嫌なことや声がけをされたら。そんな時、頭が真っ白になってしまうこともあるでしょう。

 だけど「嫌だ」という気持ちが生じたら、できるだけ、「NO・GO・TELL」を思い出してください。

◆自分の「嫌だ」という気持ちを抑えこまないこと

 自分に身の危険が迫っているときに生じる「嫌だ」という感覚を、決して無視しない、我慢しないこと。村瀬先生によると、これは子どもたちに伝えるのはもちろん、大人の女性にも今一度見直してほしい、とても大切なルールなのだそう。

◆夫婦やカップルで「断りづらい」時はどうすれば?

 とはいえ大人女性の場合は、“夫(彼氏・パートナー)の誘いを一度断ったら悪いような気がして、気分が乗らない日でも断りづらい”なんていう悩みを持つ人もいるのではないでしょうか。

「日本は性にかんする話し合いをしない、できないという夫婦やカップルが多いですが、自分の本当の気持ちを伝え合い、受け入れあっていくのがセクシュアルパートナーの基本条件です。

 たとえば、自分はその気にはなっていないのに、相手に求められたとします。そのときに私がお勧めしたいのは、以下の2案です」

◆1. 断るときに、できれば代案を出してみる

「大人になると『断ったら気まずくなるかも……』と、NOを言えないと悩む人もいますが、不快なことやされたくない気持ちを表明するのは、人として当然の権利。自身の気持ちを尊重すべきです。心のザワつきを抑え続けていると、自分を守るセンサーが働かなくなり、防犯意識が低下してしまうからです。人は、自分の『NO』を伝えて、受け入れられる経験を繰り返して自分や相手を尊重できる人間になります。

 ですから断るのはOKですが、できれば相手に代案を出してあげてください。『◯日ぐらい後でね』と具体的な日程を提案するとか『もっと私の調子がいいときにしたいな』などです。相手に、性行為に対して前向きな気持ちをキープしていると伝わる言葉がけをしていただきたいのです。

『男性は』とひとくくりにはできませんが、男性は相手に求めたときに、『断られるのは愉快ではないが、断られたら諦めるしかない』という感情を抱きます。もしも断るときにいかにも鬱陶(うっとう)しそうに『今日は気分じゃないの』、『やめてよ』などと拒絶されると、非常に傷つくのです。女性にしても同じですよね。『自分が愛ある時間をすごしたいと思って誘ったのに、そんな冷たい顔つきで言わないで』と。私も妻と断り方について何度かやり取りをして、改善に至りました」

◆2. ハグや手をつなぐだけでも、いい関係は保てる

「最高の愛情と親密性の表現が性交とは限りません。視線を交わす、言葉を交わす、やさしくふれあう、なでる、さする、手をつなぐ、寄り添う、ハグやキスも立派な性的ふれあい・セクシュアルプレジャーです。2人の親密さを示す性的ふれあいにおいて、インサートは最高でも唯一のものでもないのです。インサートばかりにこだわるのは、むしろ性の貧しさではないでしょうか。

 いずれにせよ相手が、そしてお互いが、イヤイヤではなく笑顔でいられる関係のもとでこそ、男女(両者)ともに『自分は愛されている、受け入れられている』という承認欲求が充たされるものです」

◆「ありがとう」という言葉の持つ力

「性的なふれあいの際にも、『ありがとう』という言葉は効果的です。『親しき仲にも礼儀あり』は事実で、お互いに『してもらって当たり前』という態度になると、相手は気持ちが萎えてしまいます。感謝の気持ちを忘れずにいると互いに『また次も期待に応えよう』という気持ちになるものです。セクシュアル面のみならず、『ありがとう』は、関係を円滑にする大切な言葉です」

 村瀬先生はさらに、「男性は一般的に“察する”のが苦手と言われているので、『できない、したくない』と率直に伝えることはとても大事。さらにそれを受け入れてくれたら『ありがとう』など感謝の言葉を添えると、男性は『自分のしたことが喜ばれた。それならまた期待にこたえよう』と、自己肯定感が高まり人としての自信にもつながります。これは男女逆の場合も同じですけどね」と言います。

 今さら気持ちを言葉にするのは恥ずかしいという夫婦やカップルもいるかもしれませんが、村瀬先生によれば、思いを言葉にすることが性を含む関係改善の鍵。一度伝えてみるとその後は滑らかに口から出てくるようになると筆者も実感しているので、今日からでも実践してみては。

―大人が学びなおす“性”のこと―

<村瀬幸浩 取材・文/内埜さくら、女子SPA!編集部>

【村瀬幸浩】

東京教育大学(現筑波大)卒業後、私立和光高等学校保健体育科教諭として25年間勤務。この間総合学習として「人間と性」を担当。1989年同校退職後、約25年間一橋大学、津田塾大学等でセクソロジーを講義した。現在一般社団法人“人間と性”教育研究協議会会員、同会編集による『季刊セクシュアリティ』誌編集委員、日本思春期学会名誉会員。著書に『3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなし』、『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(ともにKADOKAWA刊)など多数。

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