「あきらめる」のは負けじゃない。生きづらい人へのシスターの教え

「あきらめる」のは負けじゃない。生きづらい人へのシスターの教え

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 新型コロナウイルスが現れてから、私たちの生活は大きく変わりました。先行きがまったく見えず、誰もが不安や恐怖を抱えています。けれども、「どんなに苦しい状況でも、いいことを見つけることはできます」と、聖心会シスターの鈴木秀子さんは語ります。

「そして、いいことを見つけて感謝し、喜ぶことができる人は、周りの人々の心も満たし、あたためることができるのです」

 過去にあった苦難の日々のなかでも、人と人とのあたたかいエピソードがいくつも生まれました。シスター鈴木は言います。「悲しみが、そのまま不幸になるわけではありません。たとえ大きな悲しみでも、心のありよう次第で、不幸にはならないのです」と。

 そこでシスター鈴木が提唱するのが「あきらめよう」という考え方です。とはいえ、普通に使われる「あきらめる」とは少し意味が違い、現実に抵抗するなという意味ではないそうです。シスター鈴木の最新刊『あきらめよう、あきらめよう』(アスコム刊)からヒントを紹介しましょう。(以下、シスター鈴木さんによる解説)

◆「あきらめる」はネガティブな言葉じゃない

「あきらめる」という言葉は、一般にネガティブな意味で使われています。しかし、「あきらめる」には、仏教の言葉で「物事を明らかにする」「真理に達する」「つまびらかにする」という意味もあるのです。

 あきらめきれない心は、執着から生まれます。「ああすればよかった」「こうすべきだった」などと自分を責めながら、過去の時間の中で生きること。あるいは、まだ来てもいない未来を先取りして、「こんなことが起きたらどうしよう」と、はてしなく悩み続けること。

 あきらめるとは、今を生きるために執着を捨てることです。賢く気持ちを切り替えて、執着から解放されること。シスター鈴木はそれを「聖なるあきらめ」と呼んでいます。

◆執着を捨てることが、幸せへの第一歩

 聖なるあきらめの第一歩は、現実を受け止めることです。つらい現実に向き合うのは、誰にとっても苦しい作業です。けれども、「今の自分の人生の目的とは何か」「自分にとっての幸せとは何か」を徹底的に見つめ直すと、モチベーションが上がり、つらさも苦しさも乗り越えられます。

「人生の目的」や「自分にとっての幸せ」に、1ミリずつでも近づくこと、どうすれば近づくことができるのか考え続けること。それが、理想に向かって、最善の道を選び取っていくことにつながります。このように、人間の成長に必要なものが、聖なるあきらめなのです。

 次に、この「聖なるあきらめ」を身につける方法をいくつかご紹介しましょう。

◆執着を手放すための4つのステップ

1 現状を把握するための“明らめる”ことから始める

 物事には、「自分の力で変えられること」と、「自分の力では変えられないこと」の二つがあります。変えられないことを無理に変えようと執着すると、自分も周囲の人も疲れてしまいます。

 まずは、自分で変えられないことを諦(あきら)めてみましょう。次に、目的を思い出してみましょう。何のためにそうするのかを、あらためて明(あき)らめるのです。すると、いろいろな選択肢が見えてきます。

2 矛盾を抱えたまま過ごし続けることもある

「私は矛盾の中に生きているのだな」ということに気づきつつ、自分を責めないことが大切です。他人に責任を転嫁するのもよくありません。自分にも他人にも責任を押しつけるのを諦めましょう。また、「痛みを抱え続けさせる」矛盾から逃げることも潔く諦めましょう。人生には、このような矛盾を抱えて生きざるをえないこともあるのです。

 すぐに解決できないときは、矛盾している状態を無理やり解消することは諦めて、あるがままに受け入れることです。その中で、「少しでもいいことができないか?」「誰かの役に立てないか?」と考え続けることが何よりも大切です。

3 正しい選択をする秘訣

「今ここでは、これが最善の策」と思う方を選び続けるには、練習が必要です。普段から生活の中で「最善の方法」を選ぶように意識して努力しましょう。実践を積み重ねると、勘が磨かれて、間違った選択をしなくなります。

4 あたり前のことに感謝する習慣をつける

 朝起きたら、布団から出る前に、「自分にとってありがたいこと」を10個思い浮かべる。夜寝る前に、布団の中で、「今日起こったいいこと」を10個思い浮かべる。

 あたりまえのことに感謝する習慣をつけておくと、さまざまな場面で聖なるあきらめが作用します。自分が、いかに多くの恵みを受け取っているかに気づいて、人からの見返りへの執着を手放しやすくなります。感謝上手は、あきらめ上手なのです。

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 人生の目的や、自分の幸せを探り出して、その理由についてより深く考え続けましょう。「これが叶ったら、どんないいことがあるだろう?」という問いを繰り返すことで、最後にたどり着く答えは、「自分も幸せになり、周りの人も幸せになる。」これが、聖なるあきらめによるゴールなのです。

 心の奥底にある欲望をしっかりと明らめ、目先の小さな欲は賢く諦めて、「最善の道」(ベストの行動)を選んでいきましょう。

【鈴木秀子(すずき・ひでこ)】

東京大学人文科学研究科博士課程修了。文学博士。フランス、イタリアに留学。スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授(日本近代文学)を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。聖心女子大学キリスト教文化研究所研究員・聖心会会員。

<文/鈴木秀子>

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