マスクにスリッパ…日本人の評価がパリで爆上がり。81歳パリ在住の弓さんに聞く

マスクにスリッパ…日本人の評価がパリで爆上がり。81歳パリ在住の弓さんに聞く

フランス在住51年の弓シャローさん

 日本では、7月に入ってまた感染者が増え始めていますが、街には人が増えてきました。

 一方フランスでも、パリの街が一番美しいとされる7月、人々は少しずつ日常を取り戻しつつあります。とはいえ、行きかう人の姿はまだ少なく、例年ならば世界中から訪れる旅行者の姿も見当たりません。

◆フランスで、日本人の評価がぐーんと上がっている

 フランスをはじめ、欧米各国では、新型コロナウイルスによる日本の感染者数・死者数の少なさが注目されていますが、そんな中、日本人の株が上昇していると教えてくれたのは、在仏54年目の弓・シャローさんです。

「日本人の株が私の周囲ではぐーんとあがっていて、その佇(たたず)まいや生活スタイルを見習おうという傾向があるんです」

 弓さんは、3年前上梓した、著書『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』が、世代も性別も超えて人気となった人。元デザイナーとしてのセンスの良さと、若々しいルックスが「奇跡の79歳!」と、話題になりました今春、3年ぶりの新刊、『100歳までパリジェンヌ!』が刊行に。81歳になって、美も健康も暮らしぶりも、さらにパワーアップしている様子が注目されています。

◆「ふだんからマスク」の日本流に称賛

 日本人の生活スタイルを見習うとは、具体的にはどういうことでしょうか?

「日本では、マスクを着ける習慣が以前からありますよね。花粉症やアレルギー、乾燥対策、そして、風邪やインフルエンザなどのウイルス対策などに。自分の身を守るためもあるでしょうが、咳やくしゃみをして、誰かにうつしてはいけないという他人への配慮も、そこにはあると思います。

 今、私のまわりでは、日本人の、このマスクを着ける習慣が称賛され、取り入れようとする人が増えています」

「手作り大好きの私は、家にあった端切れでマスク作りにも挑戦してみました。ブルーのものは、カーテンの裏に貼るような遮光や防水の効果がある布で、ウイルスもシャットアウトしてくれるかも!?と、我ながらナイスアイデアのつもりでしたが、着けると息が苦しい。完全に失敗作でした(笑)」

◆靴を脱いで家に入る日本流が、パリでも広がっている

 パリの多くのアパルトマンでは、ほかにも新しい習慣が始まっているようです。

「欧米では、家の中でも靴を履いているのは、よく知られたこと。私自身は、帰宅したら玄関で靴を脱いで、家の中ではスリッパという生活をずっと続けてきました。どうやら、同じような人が出てきたみたいで……。我が家のアパルトマンでも、気が付けば各戸の前の廊下にはいろいろな靴がずらり。そこで脱いで、家の中ではスリッパや室内用の靴に履き替える習慣が定着しつつあるようです。

 でも、さすがに、共有の廊下に私物が並ぶのは邪魔になりますし、見た目もよろしくないということで、なぜか家主組合の理事長のようになっている(笑)夫のクロードの呼びかけで、今はみなさん、脱いだ靴は家の中にしまうようになりました」

 さらに、日本人の静かなしゃべり方まで注目されているそう。

「ラテン民族のフランス人は、話すときの身振り手振りが大きくて、ハグや握手も日常のこと。口角泡を飛ばす議論も大好きで、盛んに行われます。それはそれで互いの気持ちがわかりやすいし、情熱的で明るくて、いいところもたくさんあります。けれども、会釈やおじぎ、物静かに話すという日本人の穏やかで礼儀正しい佇まいが、私の知人たちの間で注目されるようになってきたことは事実です」

◆元気の秘訣は、毎日の自転車マシーンとウォーキング

 81歳の弓さんと一つ年下の夫のクロードさんは、今、友人とのたまの食事会を楽しみながらも、注意深く生活しているようです。

「夫のクロードの日課、森歩きもやっと解禁に。森歩きに出かけるクロードに、私はいつもサンドイッチのお弁当を作ります。中身は日によっていろいろですが、今日はライ麦や雑穀がたくさん入ったパンに、おいしいジャンボン(ハム)とレタス、庭のルッコラをはさんで。デザートはりんごです」

 ちなみに、サンドイッチをおいしく作る弓さんのコツを聞くと――。

「パンはトースターで軽く焼いて、冷ましてから、2枚のパンの内側に有塩バターを塗って、具をはさみます。この冷ましてからバターを塗るのがミソ。パンが温かいと、バターが溶けてしみこんでしまいますが、冷ましてから塗ると、バターのかけらがつぶつぶと残ります。これが口の中でハムとマッチすると、とてもおいしいの!」

 運動量としては以前に比べて格段に少ないので、外出禁止中から続けている自転車マシーンでの足漕ぎ10分。加えて、自宅のテラスを20〜30周歩くことや日本のラジオ体操は、今も続けているようです。

 自宅のひと部屋をミニジムにして、弓さんの自転車マシーンと、クロードさんのボート漕ぎのようなマシーンが置かれています。毎朝使っているそう。

 80代とは思えない元気さを、こうしてキープしているんですね。

◆苦しいこと、悲しい気分の乗り越え方は?

 閉塞感がまだまだ充満する日本。

 弓さんに、苦しいこと、辛いこと、悲しい気分の乗り越え方を聞いてみました。

「そうですね。私の場合は、その気持ちに集中しないようにします。ネガティブな気持ちは、手放さないと深みにはまります。ですから、ほかに没頭できることを探して、いったん離れる。

 たとえば、好きなジャンルの本を読んだり、映画を観たり、ペットと遊んだり、掃除にいそしんだりでしょうか。余計なことを考えないように何かに没頭します。そうすると、いつしか、解決の糸口が見えてくるように思います」

 あと、もう一つ。ずっと弓さんが続けてきたこととして教えてくれたことがあります。

「私は頭に星をつけて生まれてきたほどのラッキーな女。だいじょうぶ。何があっても絶対にだいじょうぶ。という気持ちを持つことでしょうか。根拠のない自信でいいのです。思考が現実を生むともいいますから!」

 シンプルですが、81年の人生を通して実践してきたアドバイスは、理屈を超えた重みがあります。

【弓・シャロー(YUMI CHARRAUT)さんプロフィール】

1938年、東京麻布生まれ。曽祖父は東京慈恵会医科大学を設立した男爵の木兼寛という家系で育つ。田園調布雙葉学園卒業後、女子美術大学に進学。並行してセツ・モードセミナーでも学ぶ。1966年、渡仏。結婚、出産。「プチバトー」のデザイナー他ファッション関連の仕事に従事。著書に『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』、最新刊に『100歳までパリジェンヌ!』がある。

<文/女子SPA!編集部 写真(※以外)/ジャン・クロード・シャロー>

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