朝ドラ『エール』再放送で見逃せない“泣いちゃう神回”ベスト3

朝ドラ『エール』再放送で見逃せない“泣いちゃう神回”ベスト3

(C) NHK

 新型コロナの影響で、収録が中断してしまった朝ドラこと連続テレビ小説『エール』。放送を一時休止して、6月29日(月)から再放送がスタートしました。第1回から放送しなおすとは異常事態ですが、今まで観そこねていた人、もう一度観たい人には、チャンスでもあります。

 そこで、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』などの著書があるドラマライターの田幸和歌子さんに、「ぜひ観てほしい神回ベスト3」を選んでもらいました。実は、6月29日放送済みの第1話も選ばれていますが、BSでの再放送やNHKオンデマンドなどもあるので要チェックです。

『エール』は、作曲家・古関裕而氏(明治42〜平成元年)と、妻で歌手の金子(きんこ)さんをモデルにした物語。作曲家・古山裕一を窪田正孝が、妻・音を二階堂ふみが演じて、視聴率も20%前後と好調をキープしていました。

(以下、田幸さんの寄稿)

◆神回その1…第3話

裕一のダメダメな子供時代に泣いてしまう

●7/1(水)NHK総合8:00〜、BSプレミアム23:00〜など

 7/4(土)BSプレミアム10:15〜

 朝ドラにとって非常に重要な意味を持つ子役時代。特に、『エール』は子役が非常に魅力的です。たった2週しか登場しないので、見逃せません。

 まずは、白玉のようにキュルキュルで可愛い主人公・裕一の少年時代(石田星空)。両親にたっぷりの愛情を注がれて育ったものの、勉強も運動もダメダメで、臆病で気弱で、のび太くんのようです。

 そんな彼にとって、「主役になれる人間と、それ以外の人間」が明確かつ残酷に分かれる憂鬱な行事が、運動会でした。騎馬戦では下の支え役で崩れてしまうし、体育教師には殴られ、「そんなことだから、どもってるんだ」「気合が足りないから痛いんだ」などと、なんとも理不尽な説教と体罰を受けます。

 それを止めてくれたのが新任の藤堂先生(森山直太朗)で、ダメダメな裕一に「(人との)違いを気にするな」と言ってくれます。

 さらに、運動会の練習で足を痛めてしまった裕一が、運動会の徒競走で足がもつれ、転んでしまったとき。周囲の友人や観客が笑う中(大人まで笑っているのは信じがたい光景ですが)、父(唐沢寿明)の「立て!」という必死の声援とともに、不意に流れてきたのが、あの藤堂先生の指揮で始まったハーモニカの演奏でした。

 音楽が、どんな励ましの言葉よりも、力をくれることはあるもの。ダメダメな裕一が立ち上がり、歩き出したときのナレーション「それは、裕一にとって生まれて初めて聞く、自分に向けられたエールでした」の一言に、うかつにも涙腺が崩壊してしまいます。

◆神回その2…第10話

子役ヒロインの歌唱シーンで泣いてしまう

●7/9(木)NHK総合8:00〜、BSプレミアム23:00〜など

 7/11(土)BSプレミアム

 第2週は、メインがかわって、ヒロイン・音の子供時代(清水香帆)の話。1週目で主人公とその幼馴染の男子二人を、2週目ではヒロイン・音とその家族を描き、二人の運命的出会いまでつなげていくのは、非常に凝った構成であり、必ず見ておきたいところ。

 のび太君的な裕一と正反対に、音は活発で、封建的な考え方を嫌い、自分の考えをはっきり言う女の子です。学芸会で自ら提案した「竹取物語」が採用されたものの、希望だったかぐや姫にはなれず、不満を抱いていました。しかし、温和な父(光石研)に励まされ、笑顔を取り戻して一生懸命に脇役の練習をします。

 ところが、学芸会直前、そんな父が、よその子を助けようとして、電車の事故に巻き込まれ、命を落としてしまいます。裕一に比べ、音は従来の朝ドラヒロイン像ですね。悲しすぎる運命に翻弄されつつも、決して困難に負けず、気丈に振る舞います。

 そして学芸会当日。かぐや姫役を代わってほしいと言われたことで、急遽、代役として出演した音は、ラストシーンで「朧月夜」を歌い上げます。亡くなった父の思い出が次々に回想され、声を詰まらせ、涙を流しながら最後まで堂々と歌い切った音。この歌唱シーンだけで、何度観ても絶対に泣いてしまいます。

「音楽」の持つ力を、説明ではなく、まさに音楽で伝えきった第2週。ちなみに、『エール』の全登場人物中、最も優しくて善人でしかない光石研さんが早々に退場してしまったのも、切ない展開でした。

◆神回 その3…第1話 

2周目で観る初回は、快感があった

●6/29(月) 放送ずみ

 7/4(土) BSプレミアム 9:45〜

 いきなり原始人から始まった初回には、誰もが度肝を抜かれました。「大丈夫か、今回の朝ドラ?」と不安になった人も多かったはず。でも、コロナ禍の影響で撮影が中断となり、思いがけないタイミングで巡ってきた「2周目」初回は、最初に見た時と印象が大きく異なっていました。

 初めて見たときは、場面がいろいろ転換し、「誰?」状態だった男性が、裕一の幼少時からの親友で、いったん道を外れていた裕一を音楽の道に引き戻してくれた鉄男(中村蒼)だったこと。

 その男性が裕一の快挙を伝えるため、墓参りしていたのは、今改めて観ると、裕一にはじめてのエールを送ってくれた藤堂先生のお墓だったこと。

 そんな先生は、オリンピックでの裕一の勇姿を見届けずに亡くなっていたこと。

 裕一たちの母校である小学校の校歌を作曲したのは裕一でしたが、作詞したのは改めて見ると、鉄男だったこと。

 さらに、鉄男が藤堂先生のお墓に供えたコップ酒が、鉄男の幼少時のあだ名「大将」だったこと。

 裕一が生まれたときの父(唐沢寿明)のはしゃぎぶりが、後に自身が父になったときの裕一とそっくりだったこと……。

 ここまで『エール』を見てきて、それぞれのキャラや背景、人間関係などがわかっているから改めて気づけたこと、点と点が鮮やかにつながるような「快感」がたくさんありました。これは、ある意味ケガの功名で、1周目のときの再放送を見ても感じることがなかった、今だからこその感慨です。

 コロナ禍でもう一度振り返ることができる今、おそらく1周目には気づかなかった新たな発見がいろいろできるはず。2周目だからこそグッとくる「神回」に今後も期待が高まります。

<文/田幸和歌子>

【田幸和歌子】

ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など

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