突然ヒットの瑛人「香水」は“正しい一発屋”…ど〜るちぇ&がっば〜なぁの威力がすごい

突然ヒットの瑛人「香水」は“正しい一発屋”…ど〜るちぇ&がっば〜なぁの威力がすごい

瑛人 『香水』

 ヒットする曲と、そうでない曲。一体、どこに差があるのでしょうか? そのヒントを与えてくれる曲が、シンガーソングライター、瑛人(22)の「香水」です。

 レコード会社や芸能プロダクションに在籍しないインディアーティストにも関わらず、Apple Music、LINE MUSIC TOP 100、Spotify Japanバイラルで軒並み1位を獲得。これは国内初の偉業とのこと。FANTASTICS from EXILE TIRBEの中島颯太(20)が弾き語りカバーをTik Tokにアップしたのをきっかけに、瑛人のオリジナルに注目が集まり、異例のビッグヒットとなりました。

◆正しい一発屋的なヒットの仕方

 というわけで、もうご存知かもしれませんが、ここまでバズった一番の理由は、サビのフレーズ。<ど〜るちぇ あ〜んど がっば〜なぁ〜の>、この節回しが頭から離れないという人が続出して、早くも今年を代表する一曲になりそうな勢いなのです。まさかDolce&Gabbanaというワードが、「どじょっこふなっこ」みたいなメロディで歌われるとは、夢にも思いませんでした。

 けれども、<ど〜るちぇ あ〜んど がっばあ〜なぁ〜>があまりにも強烈すぎて、他の部分が入ってこない。むしろ、全部聞く気が起きない。言い換えれば、それぐらい絶大なインパクトを誇るフレーズなわけですね。

 そう考えると、「香水」は、一発屋の流れをくむヒット曲なのだろうと思います。一発屋には残念なイメージがあるかもしれませんが、ほとんどのミュージシャンが一発も当てられないことを思えば、瑛人はこの一曲を残しただけでも偉大です。

 数年後に振り返って、“そういえばコロナで大変だったとき、妙な曲が流行ったよなぁ。<ど〜るちぇ あ〜んど がっば〜なぁ〜の>とかいうやつ”といった具合に、アーティスト名や曲名は浮かばなくても、絶対的なワンフレーズだけは思い浮かぶでしょうから。

 そんな風に好き嫌いを超えて、頭の中にこびりついて離れない力を持つものが、ヒット曲になるのではないでしょうか。

◆強烈なワンフレーズといえばこの曲も

 「香水」のMVを見て浮かんだのが、三木道三(現・DOZAN11)の「Lifetime Respect」でした。ふたりともベリーショートのヘアスタイルというのもあるかもしれませんが、強烈すぎるワンフレーズという点で共通しているからです。

 あの一生一緒にいてくれやというフレーズだけは、絶対に忘れることはできません。曲自体に何の思い入れはなくても、<一生一緒にいてくれや>の語感とメロディへのハマり具合は、一生ついてまわってしまう。

 ただ、Dolce&Gabbanaを完膚なきまでに脱構築した瑛人に比べたら、三木道三も若干スケール感に劣ります。

◆ウケを狙った一発ヒット曲は洋楽に多い

 一方、洋楽に目を転じると、最初からネタ的なウケを狙った一発ヒットは多くあります。ロス・デル・リオの「恋のマカレナ」(1996年全米1位、オリコン洋楽シングル1位)とか、ライト・セッド・フレッドの「I’m Too Sexy」(1991年全米1位)みたいなノヴェルティソングが、たびたびチャートを賑わせてきました。

 2000年代には、ジェームス・ブラントの「You’re Beautiful」(2006年全米1位)や、ダニエル・パウター「Bad Day」(2005年全英2位)のような、オーソドックスなバラードの一発ヒットも産まれましたね。

 ただ、瑛人のように、心底マジメに曲を書きながら、奇跡的にオモシロすぎるフレーズが生まれてしまった例は、不勉強にして知りません。そういう意味でも、「香水」は他に類を見ない一曲なのです。

 今後、瑛人がどのようなキャリアを歩むかはわかりません。一発屋で終わらず、案外堅実な活動を歩む可能性だってなくはないでしょう。いずれにせよ、ある時代の殺伐とした世の中で、いい感じに脱力させてくれるフレーズを生んだ事実だけは、胸に刻みたいものです。

 ど〜るちぇ あ〜んど がっば〜な〜の

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

関連記事(外部サイト)