小池百合子都知事、おしゃれマスクも圧勝の一因?毎日コーデのアピール戦術

小池百合子都知事、おしゃれマスクも圧勝の一因?毎日コーデのアピール戦術

(画像:小池百合子 Twitterより)

 7月5日(日)に行われた選挙によって東京都知事2期目に突入した小池百合子(敬称略、以下同)。5日20時、当選確実の挨拶にテレビカメラの前に現れた小池は、イメージカラーの緑に合わせて、黄緑(ピスタチオ色?)のマスクに、黄色と白のボーダのインナーに真っ白なジャケット、大ぶりのパールのピアスだった。

 挨拶はマスクをとって行われたが、今回の勝因には小池百合子の「マスク」が重要な小道具となっていたと思う。NHKの出口調査によると彼女の「新型コロナウイルス対策」が最も高く評価されていた。暴論だがそれってきっとマスクの印象だと思う。

◆毎日のマスクお着替えはアピール度が高かった

 小池はコロナ禍、様々なマスクをとっかえひっかえ着用していた。マスク着用が義務化されたような状況ながら、従来のマスクが手に入らない。そのため手作りマスクが増え、アパレルメーカーなどまでマスク製造に参入、にわかにマスクのおしゃれが注目された。そんなとき、毎日定例会見で小池百合子がしている日替わりマスクは自(おの)ずと目に入る。

 最初は小池も市販の白いマスクをしていたが、4月中旬以降、支持者が作ってくれているらしいおしゃれマスクを日々着用。素材や柄が毎日違っていた。5月になると、マスクが暑いという声も出てきて、レース素材が登場。季節感を意識しているところがさすが。しかもジャケットとコーディネートしている。

 自粛期間のヒマにまかせて小池百合子のマスクウォッチをしたところ、例えばこんな感じであった。

5月17日:ミントグリーンのジャケットとマスク。

5月18日:グレーのマスクとグレー系のチェックのジャケット。初夏らしく爽やか。

5月20日:鮮やかなブルーのジャケットとブルーの派手な花柄?のマスクが薄曇りの憂鬱さを払うよう。

5月21日:マスクは白。お召し物はベージュのジャケットで落ち着いた感じ。インナーが黒のレースでいくらかの華やかさも忘れないとこにおしゃれ心が。

5月22日:グリーンとグレーの都のスタッフジャンパーにミントグリーンのマスク。

事務的な格好で地味になるところを、高そうな煌めくダイヤ(たぶん)の大ぶりなイヤリング(ピアス?)でフォロー。

5月24日:やや紫っぽいブルーのスーツ、インナーは白地にブルーのペイズリー柄?

マスクはうすいラベンダーぽい。

6月2日:東京アラート発動の日 作業ジャンパーの襟と合わせたグレーのマスク。

6月9日:茶色の柄ものジャケットに、ツルッとした素材感の白っぽいマスク。夏感。

6月11日:ミントグリーンに小さい水玉、四葉のクローバーのワンポイントのマスクに、ミントグリーンのジャケット。

7月11日:真っ白なシンプルなマスクに、大きなパールイヤリング。ジャケットはレース柄。白、白、白。

7月4日:選挙前日 いつものスタッフジャンパーと生成りぽい色のマスク。

 毎日定例会見がテレビで放送されるから、見た目で楽しませるという配慮は大事だとは思う。

 オリンピックを盛り上げようとしていた頃は、オリンピックの公式スカーフをいろんな巻き方を工夫して必ず身につけていた。だがスカーフはする人も限られるし、スカーフのおしゃれに興味がないとピンと来ない。それがマスクになると俄然(がぜん)親しみやすくなった。

 アベノマスクをし続ける首相をはじめとして、政治家は皆、それぞれマスクで個性を出し、蓮舫の「侍マスク」と呼ばれる紐(ひも)が調節できるものも存在感を放っていたが、やっぱり小池の毎日マスクのお着替えはアピール度が高かったと思う。

 前述のごとく、毎日見ているとマスクとジャケットとインナーとアクセサリーのローテーションもあって、ファッション誌のコーデページみたい。さすが『小池百合子 着こなしの黄金ルール』という本が出版されているだけある。

◆見た目は、人の心を左右する

 これぞ小池百合子、得意のイメージ戦法。5月29日に発売されて以降、出版部数が20万部を越えている、すこぶる刺激的な評伝『女帝・小池百合子』(石井妙子著 文藝春秋)で筆者はこう評していた。「何を言うかではなく、何を着るか、どんな髪型にするか。それが人の心を左右するという考えは母の教えであり、テレビ界で竹村健一から学んだことだった」(171ページ)。

 折にふれ話題になるカイロ大学主席卒業の真偽問題を関係者に徹底取材したことが話題の『女帝・小池百合子』だが、それを軸にして、常にキャッチーでインパクトのある言動によって周囲の気を引いていく小池百合子戦法を多く例を挙げて紹介している。

 TVキャスターから政治の世界に転身し、1992年に議員となった小池百合子。“ミニスカート”というイメージ戦略も注目された翌93年、土井たか子との戦いになった際には、片足にギプスをつけて選挙活動をはじめたという(184ページ)。石井妙子はそれによって「ミニスカートから伸びる脚が、ますます注目された」と書く。

 それを読んで私が感じたのは、脚の美しさだけでなくその脚を怪我しているのに頑張っている健気さみたいなものが加わったことで、地に足のついた活動をする土井とミニスカの美で勝負する不利な点がわずかばかりでも埋まったかもしれないということだった。

◆「私、口紅忘れてる?」

 結局このときは土井に敗れるのだが、今回のマスクはこの時代のミニスカとギプスのハイブリッド以上の効果があったに違いない。男女関係なくマスクが国民の必須アイテムになっているなかで、最もマスク生活を前向きに楽しんでいるように感じさせたことは大きい。少なくともマスク不足やマスクの不快感などの負の要素が、小池百合子からは感じられなかった。

 さらに、毎日マスクの日々のあるあるネタまで提供したのである。5月29日の定例会見で、「私、口紅忘れてる?」とふいにはにかむような表情をしてニュースになったことは記憶に新しい。6月5日は「今日はちゃんと口紅してまいりました」と以前の失敗を笑いに転化した。

 コロナ禍でマスク着用しているため口紅をしなくなっている。化粧品の売上も下がっているらしいという日常を語ることで、難しい政策を語るよりもつい彼女のコトバに耳を傾けてしまうことは確か。とりわけ女性たちは共感したことであろう。実際、選挙当日の出口調査で、女性の支持は男性の50%以上に比べて60%以上であった(7月5日、20時時点)。

◆キャッチーな小道具としてのマスク

 選挙の前にテレビから流れてきた都知事選候補者の活動の様子を撮った映像のなかで小池百合子はカメラが回る前に口紅をぐいぐい塗っている表情が映し出されていた。こういう場面を見ると、5月29日の口紅し忘れだってパフォーマンスだったのかもしれない。口紅を塗って戦闘に臨むようなイメージ映像にしてしまうとは……(もしかしたら勝手に撮って使っているのかもしれないが)。

 2005年の「クールビズ」、アスベスト問題に「スピーディ、シームレス(すき間なく)、セーフティな3Sの制度」で取り組んでいると発言したことが『女帝・小池百合子』に記されているが、「3密」「東京アラート」などのキャッチフレーズが先に立つことは15年経っても変わっていない。コロナ禍のマスクは偶然ながら小池百合子のいつもの戦法に意外とマッチしてしまったように思う。

◆百合子マスクのおしゃれ写真集をぜひ

 感染者の再増加に伴い、街頭演説はやめ、オンラインを活用した。第一声も「オンライン」と、「新しい日常での新しい選挙ができたのではないか」と語った。毎日おしゃれなマスクをしてモニターのなかに現れる小池百合子はやっぱり強い。女性の支持の高さも印象的だが、10代から70代まで全世代の支持率が高かった。

 日々、目に入ってくる人物。しかもマスク姿という特殊性。街頭演説で生きたミニスカをオンラインのマスクに替えて、「何を言うかではなく、何を着るか、どんな髪型にするか。それが人の心を左右する」という世のならいを見事に利用して、自身を話題の中心にもっていくこと。瞬間瞬間、印象的なことを言ってその場を盛り上げる。それがことあるごとに成功しているのだからまったく運の強い人である。

 そういえば「口紅忘れた」日は評伝の発売日であった。

 まだまだ続くコロナ感染予防。小池百合子のマスクのおしゃれ写真集をぜひ出してほしい。

<文/木俣冬>

【木俣 冬】

フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など

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