「コップ洗いは女子の仕事」大学院を辞めた女性が感じた“意味がわからない慣習”

「コップ洗いは女子の仕事」大学院を辞めた女性が感じた“意味がわからない慣習”

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 普通の会社と比べて、大学や研究機関などはフェアなイメージがありますよね。でも現実には、女性が不利な扱いを受けることがまだ横行しているようです。2019年には、東京医科大学の入試で、女子学生の点数を不利に操作していたことも記憶に新しいでしょう。

 今回は、大学院で理不尽な扱いを受けたという女性のエピソードを紹介します。

◆家族の後押しもあり、大学院へ

 木本梓さん(仮名・24歳)は、都内にある大学院の文化系学部の修士課程を中退しています。

「当時は、中退する勇気がなかなかでませんでした。第二新卒として就職しようにも、どうして中退をしたのかを企業に聞かれると思うと、そのまま在籍し続けるか悩みました」

 大学院の進学率は、22歳人口に対して修士課程で約5.5%(文部科学省・2014年)と、決して高くはありません。どのような目的があって進学したのでしょうか。

「私の叔父は、有名大学で研究を続けている教授でした。父は民間企業に勤める建築士ですが、私が小さいころに社会人で大学院に進学し、博士課程まで修了しています。従弟も、理系の大学院に通っていたため、大学院への進学が特別とは感じていなかったんです。父も『進学したかったら修士まで行っていいよ』と言ってくれたので、専門分野であったラディカル・フェミニズムをより学ぶため、院に進学しました」

◆教授命令で、女子は研究室の雑用係に?

 具体的にはどのような勉強をしたのでしょうか。

「教授の研究室に所属して、個別での研究指導が主体でした。私が所属したゼミの教授は、別の大学で長年教えていた教授で、大学院にはその年に初めて就任された方でした。そのため、情報も少なく、教授が書いていたブログなどを見て、映画や音楽にも造詣が深いので自分とも合うと思って所属しました」

 ところが、実際に会ってみると想像とはまったく違ったそうです。

「教授は、関西地方の大学で教えていたので、事前に会うことがなくその研究室に所属しました。ブログなどには、バイクや音楽が好きで、ルールを嫌うようなことや、学問に男女は関係ないというようなことを発言していました。

 それなのに、研究室に所属しているほかの男子学生や教授の使ったコーヒーカップを、私に洗うように命令したんです。私はコーヒーは飲まないし、研究室では飲食はしないので『自分が飲んでいない食器を洗うのはおかしい』と言ったら、どんどん教授と仲が悪くなりました」

◆私生活への干渉、論文テーマも全否定…

 さらに教授は、梓さんの私生活にまで忠告するようになったそうです。

「私は大学時代から、週に2回ほど雑貨店でバイトをしていました。でも『本当に研究を極めたいならバイトはするな』と私生活まで忠告をしてきたんです。同じ研究室には、社会人とはいえ、働きながら通っている男性もいたのに、バイトだとなぜダメなのか、説明はありませんでした」

 研究室という閉鎖的な空間の中で、梓さんは孤立していったそうです。

「肝心の論文は全然読んでくれず、何度論文のテーマを書いても『こんなものろくでもない』、『女は馬鹿』、『お前の経験なんて誰も聞いていない』と、上から目線で通してくれないんです。しまいには、欠かさず出席していたにもかかわらず、所属する研究室のゼミだけ単位が出ず、留年するはめに。これには参りました……」

◆ついに退学を決意。現在は…

 ひどすぎる仕打ちを受けてしまった梓さんは、自分で退学を決意をしたそうです。

「親は中退には反対し、学費も出すと言ってくれたので悩んだのですが、自分で退学届を書いて修士課程1年で退学しました。いつまでも学歴や、学生という身分にこだわっていたのは、周りの目を気にしていたからだって気づいたんです」

 すがすがしい表情を見せる梓さん。退学後はどうしたのでしょうか。

「新卒や院卒採用は受けられないので、未経験から仕事を始めてみました。今は、IT企業で記事を書いたり、企業サイトのプロデュースなどをして働いています。社会に出てみて、教授の態度は、立場を利用した理不尽なことだと気づきました。早くに退学を決めてよかったと思いましたよ」

 今いる環境を去ることは、かなり勇気がいることですが、広い社会を見てわかったこともあるようです。

 ただ、梓さんが大学で研究を続けていたら、立派な業績を残したかもしれません。

―私が「手放して」よかったもの―

<文/阿佐ヶ谷蘭子 イラスト/ただりえこ>

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