Go toトラベルは間違い英語。政府が推す「ワーケーション」って何?

賛否両論の「Go to Travel」キャンペーン 「英文法が間違っている」と指摘相次ぐ

記事まとめ

  • 「Go to Travel」キャンペーンという表現について指摘が相次いでいるという
  • 不自然な言い回しに「文法が間違っている」「子供がこれで覚えてしまったら」との声が
  • 菅官房長官が新型コロナ感染拡大防止対策として発表した「ワーケーション」は造語

Go toトラベルは間違い英語。政府が推す「ワーケーション」って何?

Go toトラベルは間違い英語。政府が推す「ワーケーション」って何?

(画像:『アーバンディクショナリー Urban Dictionary』より)

 連休明けの7月27日、菅官房長官が新型コロナ感染拡大防止対策としての新たな試み「ワーケーション」の推進を発表しました。

 これは、仕事を意味する「Work」と休暇を意味する「Vacation」をかけ合わせた造語で、『アーバンディクショナリー Urban Dictionary』にも「Workcation」や「workation」の綴りで掲載されています。

 リゾート地で仕事をこなしながら休暇を取る究極のリモートワークとして、アメリカなど諸外国で約10年前から使われ始めた言葉だそうです。

 同じくコロナ禍のSNSでよく見かけるようになったものに、家や在宅を意味する「Home」「Stay」と「Vacation」をかけ合わせた「Homecation(ホームケーション)や「Stay-cation(ステイケーション)」があります。

 こちらも「お金がないのでお家でバケーション」といった具合に使われる以前からある言葉のようですが、今年はアメリカでも感染対策で「在宅夏休み」を計画している人も多いようです。

◆Go toトラベルは間違った英語。正しくはどう言う?

 連休前の7月22日には、首相官邸の公式SNSは「明日から4連休が始まりますが、3つの『密』の回避、大声を出す行動を控えること、マスク・手洗い・消毒・換気などを徹底していただくようお願い申し上げます」と、改めて3密回避の大切さを訴えるメッセージを出しました。

 4連休といえば賛否両論の中で始まった「Go to Travel」キャンペーンですが、この表現については、日本人の中からも「文法が間違っている」「子供がこれで覚えてしまったらどうするのか」との指摘が相次いでいるそう。

 本来、「Go to New York」のように目的地を「to」の後に持ってきて「ニューヨーク(目的地)へ行く」と表現したり、「Go to eat」のように何のために行くのかその目的を示して「食べるために行く」と言ったりするときに使います。

「旅行する」を意味するTravel(トラベル)と一緒に使ってしまっては、「旅行(という名の目的地)に行く」、もしくは「旅行するために行く」という不自然な言い回しになってしまうのです。

「Go」と「Travel」を一緒に使いたいのなら、「Go Travel」「Go Traveling」とTo抜きで言うこともできますが、こちらもあまり一般的な表現ではありません。

「旅行する」の意味合いとして一番使われる英語フレーズは、「Go on a trip(ゴー・オン・ア・トリップ)」。この機会にぜひ覚えておきましょう。

◆日本の3密対策をWHOが後押し、「3Cs」とは?

 7月18日、世界保健機構(WHO)が「3密」の英訳にあたる「3Cs」を発表し、「感染防止のために3Csを避けよう」というメッセージをフェイスブック上で発信しました。

 日本政府が掲げてきた「3密回避」が、WHOも推奨する標語となったのです。では、英語にするとどのような表現になるのでしょうか?

 3つの密とは、「密閉(換気の悪い密閉空間)、密集(多数が集まる密集場所)、密接(間近で会話や発声をする密接場面)」のこと。日本では感染拡大初期の2月から、この3密を避けることが感染拡大の防止となるといわれてきました。

 7月18日、WHOがフェイスブックに掲載した「Avoid the Three Cs(アボイド・ザ・スリーシーズ」のポスターはイラスト内容や文字配置を少し変えてはいるものの、日本の首相官邸と厚生労働省が作成した英語版ポスターの焼き直しのように見えます。

 明記はありませんが、明らかにこれは日本発の新型コロナ感染防止対策アプローチ「3密回避」そのものでしょう。

 密閉(Confined and enclosed spaces)、密集(Crowded places)、密接(Close-contact settings)ができる「3Cスペースはクラスターが起こりやすいため避けるべきである」というメッセージを、日本が属するWHO西太平洋地域事務局のメッセージとして発信したのです。

 Confined(コンファインド)はこれ一つで「密閉」を意味しますが、「囲まれた」を意味するEnclosed(エンクローズド)をつけることで「屋内」が危険だというニュアンスをプラス。

 Crowded(クラウデッド)は「混雑した」「満員の」、Close-contact(クロース・コンタクト)はズバリ「密接な接触」、また、医療用語としては以前から「濃厚接触」を表す言葉で使われていたようです。

 英語圏から来た「Social Distance(ソーシャルディスタンス)」もざっくりと3密回避を表す言葉でしたが、「密を避ける」や「密です!」の方がキャッチーで、日本人への耳なじみが良かったのは事実。アメリカやヨーロッパで、日本流の「3Cs」が浸透するかどうかは今後の状況次第です。

◆Covid-19 と コロナ、どう違う? 海外でコロナを使わない理由

 一方、日本でよく耳にする「With Corona(ウィズ・コロナ)」はあまり英語圏には広まっていないようです。

 アメリカで日本語教師をしている日本人女性(36)に話を聞いてみると、「そもそもこちらではCorona(コロナ)ではなく、Covid-19(コビッドナインティーン)を使っています」とのこと。

 ボストンで不動産業を営む米国人(40)は「With Corona」という表現と、日本政府の打ち出す「コロナと共に生きていく」とのメッセージについて、次のように話してくれました。

「今のところは、個人で気を付けて行動すること以外に私たちができることはないわけですから、ポジティブな考えである『コロナと共に生きていく』には共感します。ただ、『With Corona』ではなく『With Covid-19』と表現した方がいいかもしれませんね」

 WHO公式サイトによれば、「Covid-19はCoronavirus disease 2019(コロナヴァイラス・ディジーズ2019)の略」。試しにググってみると、「Coronavirus」では約30億件だったのに対し、「Covid-19」は約152億と5倍の検索結果となりました。

 しかし、この結果はただ「Covid-19」の方が短くて済むという理由だけではなさそうです。

 前述の男性いわく、「英語圏では人名にもなり得るCoronaではなくCovid-19を使うことで、風評被害や誹謗中傷をなくしたいメディア側の思惑があるのでは?」とのこと。

 そんな心遣いもあってか、海外では「Post Covid-19」が「With Corona」に近いニュアンスで使われています。

 その半面、「コロナとの共存なんてまっぴらゴメン」と考えるアメリカ人は多く、また「コロナはフェイクニュースだ」と思っている人も一定数いるようだと、米国在住の日本人主婦(38)はいいます。

「まだまだマスクをしていない人を見かけます。その人たちは違った意味で、『コロナと共に生きていく』のでしょうね。マスクは自分が感染しないためのものではなく、周囲に拡散させないためだというのを分かっている人も少ないと思います。

 それに、マスクの着用の仕方も分かっていない人は多いですよ。だって、鼻だけマスクで覆(おお)っている人をよく見かけますから」

<文/橘エコ>

Source:『Urban Dictionary:Workation』『Urban Dictionary:Homecation』

【橘エコ】

アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。

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