私が二度と母に贈り物はしないと決めた理由

私が二度と母に贈り物はしないと決めた理由

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 最近では“毒親”という言葉が知られるようになりましたが、以前は、親の言動に傷ついても、周囲から「お母さんは愛情があって言っているのだから」など、子供サイドだけが負担を引き受けさせられたり、自己嫌悪したという声をよく耳にします。

「母の日の贈り物は義母にしか贈らない」と話すのは、ノリコさん(仮名・30歳)。なぜなのかと問うと、社会人になって初めての母の日のことを回想してこう答えました。

「母から、『初任給で何かしてくれてもいいよ』って冗談っぽく言われていたんですけど、せっかくの初任給を母に使いたくなかったんです。でも、周囲の友達は初任給で親を食事に連れて行ったりしていたので、かたくなに何もしない自分って大人としてどうなんだろう? と思ったので、母の日に花キューピッドで花を贈ったんですね。

 そしたら母から電話があって、『お花届いたけど、これいくら?』って。価格を伝えると大げさに、『えー! たっか! そんな値段に見えないよ!?』と言われて以来、二度と母に何か贈ることはしないと決めました」

◆彼氏のことを「目が気持ち悪い」

 ノリコさんの母親は、ノリコさんが物心つく頃に離婚。以降、母娘二人暮らしでした。女手ひとつで育ててくれたことにずっと感謝はしてきたものの、10代の頃からなんとなく母の言葉や態度を理不尽に感じることがあったとのこと。それでも、どこの家のお母さんもこんなもんだと、ばく然と思っていたのだと言います。

「親が間違っているなんて発想が、基本的になかったんですよね」

 そんなノリコさんも、中学生になり、高校生になり、友達からそれぞれのお母さんの話を聞くにつけ、自分の母親が言ったりしたりするようなことは、友達はされていないということを知ります。

「高校生になって初めて彼氏ができたとき、母には隠していたんだけど、駅前で彼と手をつないで歩いているところを目撃されてバレたんです。私はなんとなく恥ずかしいから言わなかっただけなんですが、母は私の彼氏のことを『全然かっこよくない』『目が気持ち悪い』って言ってきて。

 そのことを友達に言ったら、引かれちゃったんです。『お母さんがそんなこと言うの?』って」

◆バイトして下着を買ったら「色気づいて〜」

 他にも、こんなことがあったとノリコさんは言い出しにくそうに続けます。

「なんとなく恥ずかしくて言い出せなかった自分も悪いのかな? と当時は思ってたんですが、母から『ブラ買おうか?』って言ってもらえなかったので、毎日同じスポーツブラを使ってました。中学生にあがるときに買い与えられたスポーツブラがひとつだけあって、それを高校生になっても使ってましたね」

 友達はみんなかわいい下着をつけていたのでうらやましかった、と話すノリコさん。校則では禁止されていましたが、かわいい下着を買うためにこっそりバイトを始めたと言います。そしてバイト代で、上下セットの下着をいくつか購入したところ、母からからかうようにこう言われたそう。

「『す〜ごい派手!』『子供が気持ち悪い』『色気づいて〜』とか。恥ずかしかった。今思えば別に恥ずかしいと思うことなんてないのに、普通の下着セットを買うだけでも悪いことをしているような気分になったんです」

◆本がきっかけで母親と離れることが大事だと気づけた

 ときどき髪型をアレンジすれば、「似合わない」と笑い、学校で褒められたと話せば、「ふーん」と面白くなさそうな反応をする母親。それでも、毎日凝った手作り弁当を作ってくれるなど、愛情を感じないわけではなかったとノリコさんは話します。

「だからこそ当時は、母の言葉や態度に傷ついたり、素直に感謝できない自分が嫌な人間に思えて……自己嫌悪することが多かったです。情緒不安定でもあったり」

 その後、大学時代に出会った『毒になる母親』という本によって心がとても楽になったとのこと。自分の母親ととてもよく似た例が紹介されているのに驚いたと言います。

「親だから大切にしなきゃいけないって先入観を捨てることに繋がりました。私がしあわせになるためには、母親と離れることが大事なんだなと思いましたね。

 だから、大学時代は一人暮らしのための費用を貯金し、卒業と同時に家を出ました。『私をひとりにするなんて冷たい子』って泣いたり怒ったりしながら何度も言われたけど、勝手に言わせとこうと」

◆母が母であることをあまり意識しないように

 以来、母親からくる他愛ない連絡も気が向くときにだけ対応するなど、母親というものを極力断ち切った上で自分の人生を大事にするようにしているというノリコさん。

「母が母であることをあまり意識しないようにしてますね。ただ、『大人同士』であるというだけ。そう考えるようになって、だいぶ楽になりました」

 母親という存在を切り離すことで、ようやく自分らしくいられるようになったのだそうです。

―私が「手放して」よかったもの―

<文/森田 奈々 イラスト/ただりえこ>

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