「としまえん」8月末に閉園。“地元女子”から惜しむ声「プールだけでも…」

練馬区「としまえん」8月末の閉園前に別れを惜しむ地元女子であふれる

記事まとめ

  • “ギャルの聖地”としても知られた東京都練馬区のとしまえんが8月末で94年の歴史に幕
  • 住宅街にあり地元の練馬区や周辺の区に住む女性たちにとっては「庭」感覚だったという
  • 40代女性は「プールからあがった後に食べるあったかいラーメンが最高でした」と語った

「としまえん」8月末に閉園。“地元女子”から惜しむ声「プールだけでも…」

「としまえん」8月末に閉園。“地元女子”から惜しむ声「プールだけでも…」

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 昭和、平成、令和の乙女心をときめかせた「としまえん」(東京・練馬区)が、8月末で94年の歴史を閉じる。夏はプールでカレとの想い出を胸に刻んだ女子も少なくない――。現地は、別れを惜しむ地元女子たちであふれていた。

◆フィナーレまでラスト1週間!地元“練馬区女子”が語る

「としまえんプール開きの水着ギャルインタビューをニュースで見るのが、毎年夏の風物詩だったのに……」。SNSや街でこんな声が上がっているように、としまえんといえば“ギャルの聖地”としても知られていた。住宅街に位置するため、地元の練馬区や周辺の板橋区・豊島区・中野区に住む女性たちにとっては「庭」感覚。特に夏は、水着で乗れる遊園地やナイトプールに花火など、心を揺さぶるイベントが満載だ。そんな彼女たちに、としまえんの想い出を語ってもらった。

「私はとしまえんで育った。夏のプールはここ以外考えられません」というのは、地元の女友達と子供連れで訪れた小野さやさん(仮名・40代)。「としまえんプールの水ってなぜかめっちゃ冷たいんですよ。プールからあがった後に食べるあったかいラーメンが最高でした。コロナの入場規制で、ネットの事前予約制ですが、頑張ってチケット取ってまた来る予定」と、名残惜しそうに語る。

「子供のころはフリーパス『木馬の会』に入っていて、夏はほぼ毎日チャリで来ていました」と想い出を語るのは、ファミリーで楽しむ鈴木千夏さん(仮名・30代)。

「迷子アナウンスが徹底していて、子供同士だけでも安心。大人になって、逆に子供たちに迷子扱いされたことも(笑)」

 また、3人で訪れていた30代の地元女性たちは、「ナイトプールまでゆっくりします。高校のころ、流行だった白ビキニを着て彼氏とジェットコースターに乗ったなぁ」と、感慨深げだった。

◆ここまで若い女性層に支持された理由は?

 プールには「子供のころからずっと来ている」というリピーター女性が多くいたが、同園がここまで若い女性層に支持されたのはなぜなのか。豊島園の事業運営部部長・内田弘氏はこう語る。

「’65年に誕生した世界初の『流れるプール』や、’77年に導入した日本初の会員制年間フリーパス『木馬の会』など、としまえんは新しもの好きの女子の心を動かす“初物”づくしの遊園地。’80年代後半から’90年代にかけては、全国的に“絶叫マシンブーム”が訪れました。当園もバイキングライド『フライングパイレーツ』や回転型絶叫マシン『トップスピン』、プールには31本のウオータースライダーが集結した『ハイドロポリス』など、若者を取り込むアトラクションを導入。注目を集める引き金となったのでしょう」

 また、遊園地・テーマパーク専門家の佐々木隆氏はこう分析する。

「“定番の遊園地”として地域に根づいている点で、愛着が強いのでは。さらには、故・野村沙知代さんの水着で乗れる遊園地ポスター『(例)』や、俳優・温水洋一さんの『冷やし温水。』など名だたるタレントを起用したユニークな広告ポスターも女性の心をつかんだのでしょう」

 としまえんは遊園地・プールとしての機能だけではなく、練馬区民の生活の一部としての役割もあった。「生まれも育ちも練馬区民」だという20代OL2人組に話を聞くと「としまえんは成人式の会場でもあります。振り袖でジェットコースターに乗ったのはいい想い出」と懐かしそうに語った。

◆閉園後の跡地は「ハリー・ポッター」の施設に

 閉園後の跡地の一部はワーナー・ブラザースによる「ハリー・ポッター」スタジオツアー施設が建設される。期待を寄せる地元女性がいる一方で、「まったく興味ない。行かないと思う」とネガティブな声も。賛否両論あったが、「せめてプールだけは残してほしい」というのは満場一致の意見。「今から署名活動しても間に合いますかね?」と鼻息が荒い女性もいた。

 さらに、「園内施設はどうなるのか」という疑問も。「遊具の一部は西武園ゆうえんちに移転の予定。お客さまが一番気になっている回転木馬『カルーセルエルドラド』は、しばらく保管します。博物館への展示の話もありましたが、遊具は乗ってもらってナンボのもの。いつかどこかで再開できれば……と、願ってやみません」(内田氏)

「閉園は寂しすぎる。としまえんには感謝の言葉しかないです」と次々と声を上げる地元女性たち。

 入園規制はあるものの、としまえんのおかげで楽しく夏らしい想い出をつくっているようだった。

◆遊園地が生き残るためには常に新しい刺激が必要

「遊園地は人が集まらなければつぶれます」

 前出の佐々木氏がこう述べるように、’00年代から現在にかけて、神奈川県川崎市の「向ヶ丘遊園」(’02年)、兵庫県宝塚市の「宝塚ファミリーランド」(’03年)など老舗遊園地の閉園というニュースを聞くことが多い。原因はいったい何なのだろうか。

「もっとも大きいのは、TDR・USJの2大テーマパークの台頭でしょう。“絶叫マシンブーム”は徐々に過ぎ去り、“乗るため”に遊園地へ行く人が激減。また、アトラクションの老朽化も挙げられます。修繕コストをかけてまで経営を続けるか手放すかの天秤は常にあるのでは。さらにコロナの影響が拍車をかけた。全体的に言えることですが、インバウンドを含めた入園客が見込めなくなったことも大きな打撃になっているといえます」

 また、閉園後の跡地利用についても課題が残る。現在「向ヶ丘遊園」跡地の一部は「藤子・F・不二雄ミュージアム」に、「宝塚ファミリーランド」は「市立文化芸術センター」に、それぞれ再生している。しかしその一方で、栃木県日光市の「ウエスタン村」(’06年)や、奈良県奈良市「奈良ドリームランド」(’06年)のように、閉園後に手つかずの状態で遊具が野ざらしの廃墟と化した遊園地も地方に多く残されているのが問題視されているのだ。佐々木氏はこの件について次のような見解を述べた。

「遊具は解体にもコストがかかる。買い手がつけば先は見えるが、辺鄙な場所の遊園地だと難しい。交通手段などの整備も必要です」

◆将来的に廃墟遊園地を増やさないためには?

 では、将来的にこのような廃墟遊園地をこれ以上増やさないためには何が必要なのだろうか。

「新アトラクションが次々誕生する『富士急ハイランド』(山梨県富士吉田市)、『ナガシマスパーランド』(三重県桑名市)のようにコストをかけられる遊園地は多くないと思います。重要なのは“テーマ性”と“アイデア性”。『よみうりランド』(東京・稲城市)は、自動車、食品、ファッション、文具と4つのワークショップが集結した“ものづくり”がテーマの『グッジョバ!!』エリアを新設。さらに名物コースターの期間限定イベント『逆走バンデット』など斬新なアイデアで勝負し、経営がV字回復した。これからの遊園地のように『いつ訪れても新しい刺激がある』ことが必要なのでは」

 巨大テーマパークの進出でレジャーに対する概念が変化する今、課題は「“遊ぶ場所”には“遊び心”が大切」なようである。

【佐々木 隆氏】

遊園地・テーマパーク専門家。「ALL About」遊園地ガイド。『TVチャンピオン』4代目遊園地王。『るるぶ』などの情報誌やネットで記事を執筆。テレビ・ラジオ出演多数。

【内田 弘氏】

「(株)豊島園」の事業運営部部長。勤務年数40年以上のキャリアを生かし、現在としまえんで開催中の「94年の歴史展」で歴史ガイドを務める。

<取材・文・撮影/櫻井れき 時弘好香>

※週刊SPA!8月25日発売号より

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