「今日食べるものがない」シングルマザーの苦境。龍円愛梨さんに聞く

「今日食べるものがない」シングルマザーの苦境。龍円愛梨さんに聞く

龍円愛梨さんと長男のニコちゃん

シングルマザーの中には、コロナ禍で職を失って「今日食べるものがない、という人もいます」。そう語るのは、テレビ朝日元アナウンサー・記者で、現在は都議会議員の龍円愛梨(りゅうえん・あいり)さん(43歳)だ。

 自身もひとり親としてダウン症のある長男・ニコちゃん(7歳)を育てている龍円さんは、シングルマザー支援を行う団体「ママユナイテッド」のスペシャルサポーターなども務めている。龍円さん自身の“これまで”を語ってもらった前回に続き、今回はシングルマザーの現状について聞いた。

◆「今日食べるものがない」という相談も

 日本のシングルマザーの正規雇用率は低く、「パート・アルバイト等・派遣社員」で働く人が48.4%にのぼる(平成28年度・全国ひとり親世帯等調査結果、厚生労働省)。

「シングルマザーの方はフルタイムの仕事に就くのが厳しい状況にあります。特にお子さんが小さいと、熱が出て保育園から呼び出しがあったり、夜まで働けなかったりして、給与の低い非正規の仕事に就くことになってしまいます」(龍円さん、以下同)

 母子世帯の年収(雇用者収入)は平均225万6000円(2018年国民生活基礎調査)。ただでさえ収入が少ない母子家庭をコロナ禍が襲った。非常にせっぱつまった相談が寄せられている、と龍円さんは語る。

「コロナ禍で職を失ってしまい、本当に困窮して、『今日食べるものがないです』とか『食パン一斤で家族3人でしのいでいます』という方もいらっしゃいました。食パンなんて全然お腹にたまりません……。

 そこで昨年、もう、お金ではなくて食べ物を配ろうという話になったんです。

 私が所属している『都民ファーストの会』では、小池百合子都知事に『新型コロナ対策に関する要望書』をいくつも出しているんですが、その中に『ひとり親家庭に食べ物を支給する』という項目も入れて、去年7月から食料支援が始まっています。

 当時は学校が休校になって給食もない状況だったので、給食だけでもテイクアウトできるようにする提案もしました。今でも、ひとり親家庭に食べ物や食品券を配布する状況が続いているんです」

◆親が離婚しただけで、子どもが困窮するのはおかしい

 このように日々食べるものにさえ困っている母子家庭は少なくない。

「でも、親が離婚しただけで、食べ物に困るほど困窮したり、お金がなくて教育を受けられなかったりするのは、絶対におかしい。だって子どもには何の責任もないんですよ? 

 たまたま合わない相手と結婚して、離婚してしまうことは誰にでも起こりえますよね。そのことで子どもが不利益をこうむらない社会にしたいんです」

◆ひとり親を支援する制度を使ってほしい

 実は、国から市町村まで、ひとり親を支援する制度や給付金はそこそこある。だが、あまり知られていないのが現実だ。 

「去年の11月、東京都がひとり親家庭向けのポータルサイト『シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビTokyo』をオープンしたんです。このサイトには困りごとに応じて相談先が書いてあります。お金、住まい、仕事、家事、育児、医療など、悩み相談ごとにクリックすると、それに対する支援策の問い合わせ先にリンクされています。離婚する前のプレシングル向きの情報も。

 市区町村で検索して、自分の住んでいる地域にどんな支援があるかも調べられて、助かるサイトだと思います。もっと知ってほしいですね」

 また、東京都が行っている「ひとり親家庭支援センター」も、ぜひ利用してもらいたいという。総合的な相談ができるが、なかでも離婚の際の財産分与や養育費の決め方などについて、弁護士に無料で相談できるのが嬉しい。

「離婚するときは、感情的になって『養育費なんていらないから別れたい!』と言ってしまう人もいたり、最初は払われていた養育費が止まってしまったというような相談もあります。私もこのような支援があることは、都議会議員になって初めて知りました。ぜひ無料相談などを使ってもらいたいです」

◆シングルマザーのコミュニティはできづらい

 また、民間にもシングルマザー支援をしている団体はいくつもある。前述のように、龍円さんは一般社団法人「ママユナイテッド」のスペシャルサポーターでもある。どういう団体なのだろうか。

「母体はママスクエアという会社で、小さいお子さんがいるママたちの再就職を応援する取り組みを行っています。ママスクエア(全国59拠点)は、子連れで出勤して働いている隣で、子どもが遊んでいられるキッズスペースがあるんです。そのママスクエアの代表が、シングルマザーを応援したいと始めたのが『ママユナイテッド』です」

 龍円さん自身は、「いまは都議会の仕事が忙しくてなかなか思うように関われていない」そうだが、シングルマザーのコミュニティを作りたいと考えている。

「私はダウン症のある子がいるので、“親の会”やSNSなどでダウン症育児をする家族と繋がれるんですね。ところが、シングルのママたちはそういったコミュニティがほとんどない。シングルマザーって、毎日の生活が大変過ぎて、集まる余裕がないんだと思うんですよね。

 本当はシングルマザーこそ集まってお互いに助けあったりしたほうがいいのですが、孤立してしまう。なので、ママユナイテッドでそういうつながりができないかと考えています」

◆ひとり親で、子どもに障害があったら…

 しかも、日本ではシングルマザーと聞くと「男選びを間違えたせいだ」と自己責任論をふりかざす人や、「あそこはひとり親家庭だから」などと陰口を叩く人もいる。そのような差別を感じたことはあるか聞くと、「もしかしたら言われているのかもしれないけど気づいたことはない」と龍円さん。

 それよりも、子どもの障害をめぐる差別のほうを感じるそうだ。

「制度的な差別…というのでしょうか。

 たとえば今、息子が小学1年生になって、学校側からは『保護者が授業に付き添ってください』と言われています。仕事があるので付き添えませんと話したら、『学校で安全が確保できるのは2時間目まで』と言われ、現在中休みに下校する日々です。今、3時間目まで行けるように交渉をしているところです。

 小学校は義務教育なのに、それを受けさせてもらえないんです。先生たちが差別しようと思ってしているわけではないことは分かっています。でも、大きい意味で言うと制度の差別ですよね。都議会議員として、この経験を政策に活かしたいと思っています」

 ひとり親が働いて生活を支えている場合、授業に付き添うのはまず無理だろう。

◆親の離婚が、子どもの不利益にならない社会に

 最後に、ひとり親家庭をめぐって取り組んでいきたいことを聞いた。

「一番は、親が離婚したことが、子どもの不利益にならない社会にしたい。これが大前提です。そのためには、お金の面で不当に苦労することがないようにするのがひとつ。

 それから、虐待の場合は別ですが、きちんと両親から愛されていることを知る権利が子どもにあると思うんです。うちも、週に何度かLINEで元パートナーに連絡を取って、『パパだよ〜』と子どもと話す時間を作っています。親権を持っていない親も、ちゃんと子育てに関わっていくような社会にしたいです」

<文/姫野桂>

【龍円愛梨】

1977年生まれ。法政大学卒業後、1999年にテレビ朝日に入社。アナウンサー、社会部記者を経て2011年退職。同年渡米し、2013年に長男を出産。2015年、シングルマザーとして長男と帰国。2017年、都民ファーストの会から出馬し、都議になる。現職 Twitter:@airiryuen

【姫野桂】

フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei

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