ベストの流行が20年ぶりに復活。タンスの片隅から取り出してみては

ベストの流行が20年ぶりに復活。タンスの片隅から取り出してみては

去年あたりから復活したアイテムとは?(※画像はイメージです)

『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。

◆シルエット、色、アイテムの流行りは時代とともに 

 ファッションには流行りすたりがあります。

 変化する主なものはシルエットなのですが、そのほかにも色、そしてアイテムがあります。

 色で言えば、日本ではここ数年、くすんだグレイッシュトーンやニュートラルカラーが多く、どの店舗でも似たような色合いの衣服が並んでいます。一方、アメリカやヨーロッパでは去年あたりから、くすみなど一切ない「カーミット・グリーン」と呼ばれるカエルのような緑や、蛍光色のようなピンクや黄色などがあらわれるようになりました。

 これらはそれぞれ「その色が流行っている」ということを示し、時代が変わればまた変わっていくものです。

◆忘れられたアイテムの復活は突然に

 もう一つはアイテムの流行です。アイテムにも流行りのアイテムというものがあります。

 例えばレギンスです。80年代、レギンスはスパッツと呼ばれ大流行し、その後、何年間かは見られませんでしたが、現在は新たにレギンスと呼ばれるようになり、復活しました。

 流行は、それに敏感な一部の人たちが取り入れるところから始まり、3年から4年かけて一般の人たちへと広がります。そして最終的には、量販店の売り場にそのスタイルが並び、小さな子供やお年寄りまでも着用するまでになると、そこで「おしゃれに見える期間」が終わります。

 忘れられたアイテムの復活は突然やってきます。デザイナーがコレクションで提案し広がる場合もあれば、自然発生的にストリートで広がる場合、また誰か有名人の着用に影響される場合もあります。

◆ベストが20年ぶりに復活

 去年あたりから復活したアイテムがあります。それがベストです。

 私の記憶だと、90年代、メンズライクなスーツの流行とともに、ベストが、大流行ではないにしろ、ある程度は流行りました。

 流行るとはどういうことかというと、多くのメーカーがそれを作り、市場で十分な量の供給がなされ、誰でも容易に買って着用することができる、ということです。90年代、ベストはその位置にあり、一定数の人たちはそれを買ったと記憶しています。

 しかし、すべての流行りものの運命と同じように、ベストはいつしか忘れ去られた存在になり、20年ほどは多くの人の記憶の層、あるいはタンスの片隅に潜伏していました。

◆ベストは何かと使い勝手が良い

 そんなベストがここへきて復活です。きっかけは、私もよくわかりません。

 ただ単に、そろそろベストを着たいよね、ということなのか、誰かがどこかで強く推したのか、そこら辺の事情はわかりませんが、とにかくベストは戻ってきました。それは歓迎すべきことでしょう。なぜなら、ベストというのは案外、遣い勝手がいいからです。

 どう遣い勝手がいいかというと、ジャケットを着るほどでもないけれども、少しきちんとした感じに見せたいとき、あるいはただ単に少し肌寒いとき、または身体のラインを整えて見せたいときに、ベストはうってつけだからです。

◆ロンドンのリバティ百貨店で買ったベスト

 こちらのベストは以前のベストの流行期である90年代にロンドンのリバティ百貨店で買ったもの。

 日本では花柄プリントで有名なリバティは、もともと織物で有名なロンドンの老舗百貨店。今でも生地を売っているフロアがあります。

 そこで買ったリバティオリジナルで英国製のベストは、リバティらしく凝った表生地が使われ、仕立ても丁寧です。

 日本で言うベストは、英語ではウエストコートと呼ばれ、もともとは紳士服。高級テイラーがたくさんあるメイフェアの近くにあるリバティですから、パターンもよく、着てみるとスタイルがよく見えます。

 そんな素敵なベストであるにもかかわらず、ここ20年ばかりは表舞台に出ることもなく、タンスの片隅で控えているだけでした。

◆20年、手放そうと思ったことはない

 だからといって、この20年、このベストを手放そうと思ったことはありません。

 クオリティが高く、普遍的なデザインであるだけではなく、何よりこのベストにはロンドン旅行の思い出が付随しています。

 今でもはっきりと、あのリバティのフロアで、どのベストを買おうか、あれやこれや試着してみたことや、買った後、違うフロアの本屋が併設しているカフェで紅茶とチョコレートケーキを注文したこと、そして生地売り場でうっとりするような豪華な生地を見て回ったことなど、鮮やかに思い出せます。

◆小さな宝石のように輝く、お買い物の思い出

 インターネットの出現以来、通販が発達し、世界じゅうのものはなんでも家にいながら買えるようになりました。けれども、そこではお買い物という経験にまつわる思い出までは買えません。

 ロンドンのリバティでベストを買ったというささやかな思い出さえも、年月が過ぎれば、記憶の地層で結晶化し、時々取り出して磨けば、それは小さな宝石のように輝きます。

 20年の時を経て復活したベスト。

 旅行もままならないこの時期には、いつかまた、通販では買えないものを買うためにどこか外国へ旅したいな、などと考えながら、90年代とは違う着方と気分で楽しみたいと思っています。

<文/小林直子>

【小林直子】

ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に

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