精神科に入院する私に、母は「近所の人に…ねぇ」。うつ病への偏見は自分の中にも

精神科に入院する私に、母は「近所の人に…ねぇ」。うつ病への偏見は自分の中にも

写真はイメージです(以下同じ)

世間や周りの人々が楽しそうに騒いでいたり、熱狂しているなか、自分だけが独り取り残され沈んでしまうことはないでしょうか。時にはそこのことで自分を責め、つらい気持ちから眠れない日々が続き、心身に不調をきたすこともあるかもしれません。

 厚生労働省による調査(※)によれば新型コロナウイルスの感染拡大にともない「そわそわ落ち着かなく感じた」と答えたのは、女性の30代が42.9%、40代41.0%とすべての世代の男女の中で最も高い数字を示しています。(※2020年9月「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」)

 うつ状態により入院も経験したフリーランスライター、カンザキルリ子さんに、その経緯や思いをつづってもらいました。

 前回でいよいよ入院生活が始まったルリ子さん、1ヶ月経つと、どのような心境だったのでしょうか。(以下、カンザキルリ子さんの寄稿です。)

◆うつ病に対する偏見が怖い

 居心地が良すぎる精神科病棟での入院生活。いつまでもぬるま湯に浸かっていることに対する罪悪感と、病院の外の世界で生きていけなくなるのではという不安が少しずつ大きくなっていきました。

 入院してから約1ヶ月経って、当初の予定通り退院したいと担当医さんに申し出ました。しかし、止められてしまいました。このまま退院すれば元の状態に戻るだけだからと。

 強制されたわけではなかったのですが、それもそうかもしれないと素直に思った私はもうしばらく留まることにしました。担当医さんによると、そもそもたった1ヶ月では体験入院に過ぎないとか。

 腰を据えてのんびりしようと思いましたが、今度はいつまでここにいたらいいんだろうという焦りが芽生えてきます。

 私の場合、入院してからも継続してライターの仕事を続けていたので、時々外に出て取材をしたり、編集部に顔を出したりしていました。

 何でもない様子で働く人間が、まさかその後、家ではなく精神科病棟に帰って病院食を食べているなんて、誰も思いも寄らないでしょう。もし知られたらいったいどう思われるだろうと、なんだか後ろ暗い気持ちになってしまいます。

◆入院するのは恥ずかしい?

 振り返れば精神科病棟に入院することを決めたとき、これで鬱々とした日々から脱出できると希望を見出すと同時に、「これで普通じゃなくなってしまった」と感じました。

 ほかの人たちは問題なくちゃんと生活しているというのに。そして、そんな強い人々に“心の弱い人間”と蔑(さげす)まされ、世の中から弾(はじ)かれることを怖れました。こうして文章にしてみると極端でバカバカしく思えるのですが、一人でいるとそんな考えに陥(おちい)るんです。

 入院したいと思っていることを母に告げると、母も周囲の反応を心配しました。「近所の人に…ねぇ」。

 そうはっきり言われると、反発を感じてしまう私。「なんで精神科に入院するといけないの」。矛盾してますね。自分も人に知られたくないって思ってくるくせに。

 心を病むのは今の時代、誰にでもあることだし、全然おかしくなんかないはず。でもやっぱり、恥ずかしいことだという考えが心のどこかにあるんです。なんなんだ、コレ。

◆偏見を正す世界的活動

 入院してから知ったのですが、「アンチ・スティグマ・キャンペーン」という活動が今広がっているそうです。

「スティグマ」とは牛や奴隷に焼きつけられた刻印のこと。「アンチ・スティグマ・キャンペーン」は、精神障害に対する偏見や差別に対して適切な理解や態度を求めるものです。

 例えば、精神障害者が安易に犯罪と結び付けられてしまったり、精神科病棟を持つ病院が建つことさえ周辺の住民に嫌がられたり。これらに対して正しい知識を提供することを目的としています。

 時代も国も超えて問題になっているという精神医療に対する偏見。なるほど、精神を病むのは恥ずかしいと考えるのは、引いてはこうした考え方に加担しているのかもしれません。

 とは言え、かわいそうな人だとあまり腫れ物に触るような扱いをされても辛いのですが。やはり“普通の人”として接してもらいたいと思ってしまいます。

◆実際に人に話してみたら

 そんな思いをぐるぐる巡らせていたら、入院していることを人に知られる機会が訪れました。

 必要があってえいやっと話したのは、仕事でお世話になっている年配のカメラマンさん。どう受け取られるか内心ヒヤヒヤしていたのですが、杞憂(きゆう)に終わりました。すんなり受け入れられ、「どこの病院なの〜?」とまるで通っている皮膚科でも聞くような調子。

 私はすっかり肩の力が抜けて、入院の経緯を世間話のようにぺらぺらと話してしまったのでした。

 また、この記事を執筆するにあたって、担当編集者の方にも説明することになりましたが、実は精神疾患を抱えた人はこの業界にも多いらしく、私の現状に理解を示す温かいお言葉を頂くことに。嬉しくも拍子抜けしてしまったのです。

 「うつ病は甘え」という考え方がまだまだ蔓延っていると聞きますが、案外社会は心を患う人に対して優しくなりつつあるのかもしれないと思ったのでした。

<文/カンザキルリ子>

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