「財布をスられた…」彼氏に給付金10万円を渡したら…大後悔した話

「財布をスられた…」彼氏に給付金10万円を渡したら…大後悔した話

真澄さんと彼のやりとり

2020年に政府から配られた定額給付金。どんなことに使いましたか? 大きな買い物をして経済を回した人もいるかもしれませんが、貯金や日々の生活費にあてた人が多いのではないでしょうか。

 特に多くの非正規労働者や自営業やフリーランスは、コロナ禍で厳しい状況に追い込まれている人がたくさんいます。今回は、そんな自営業者の女性が定額給付金を信じられない理由で失ってしまったエピソードを紹介します。

◆自営の弁当屋がピンチ。支えてくれたのは恋人だった

 取材を受けてくれた真澄さん(仮名・34)は、都内でお弁当屋さんを営んでいます。コロナ禍の当初は在宅需要が増えたことに伴い、仕事も繁盛していたそうです。

 しかし、周りの居酒屋や飲食店が休業や時短営業の補填をするためにテイクアウトに参入。お弁当屋さんは売り上げが思うように伸びませんでした。

 ちなみに、イートインのない惣菜店などは、いまも政府の協力金の対象外。割を食っていると真澄さんはこぼしています。売り上げが下がるなか、真澄さんを支えてくれたのは3歳年上の恋人の存在でした。

 2年交際する恋人は「舞台関係のコンサルタントをしている」と彼女にたびたび話を聞かせていました。舞台の人とは縁のない生活を送っていたので、「そういうものか」と聞いていたそうです。

 コロナ禍では、彼もまた生活が厳しくなっているとのことでした。厳しい情勢の中でも、2人で支え合っていずれは結婚したいと、お互いに意思を確認していました。

◆定額給付金は“いざというとき”のために貯金

 しかし、コロナ禍は逆にチャンスでもあったそうです。舞台に出られず役者業や裏方を引退する人もいるため、恋人は「引退してしまう人材を集めて、新しいビジネスを始める」と話しはじめました。

 真澄さんのもとに定額給付金が給付されたのが、2020年7月。生活に見通しが立たない状況だったため、いざというときのために10万円をすべて貯金にまわしました。

 一方、彼の舞台業界には補助金が出されることになりました。同じく7月から始まっていた文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」です。恋人はこの制度を利用し、自分の今後の事業に充てると話していました。

 真澄さんは彼から、補助金を受け取るためには高いハードルがあると聞かされていました。

◆お財布をスられたと連絡が入って……突然消えた彼

 恋人との関係にヒビが入ったのは、9月に入った頃のことでした。

「バスでお財布をスられてしまった。来週法事のために実家に行く予定だったんだけど……」

 真澄さんは恋人からのLINEに、動揺します。彼が困っているならと、何の疑問ももたずにこう返します。

「いくら必要なの?」

 結婚できるかもしれない相手のピンチは、真澄さんにとっては「いざというとき」だと思えたのです。LINEをもらった数日後、給付金をそっくりそのまま10万円、彼に渡しました。

◆恋心を利用されて、今も相手を責めきることができない彼女

 少しずつ弁済する約束をして、彼は青森にあるという実家へ帰省していきました。

 しかし、彼との連絡はそこで途絶えてしまったのです。携帯電話は不通になり、住んでいた場所も引き払われたあとに「やられた」と気づきました。

 真澄さんはそのときのことを振り返ると、悔しさと情けなさ、その中にほんの少し「それでも彼が幸せでいてくれれば」という気持ちがあるそうです。

「最初からだますつもりだったのか、結果的にだまして逃げることになってしまったのかは、分からないです。もうどっちでもいいし」

 どういう意図があったのかより、「自分が負った損害さえ戻ってくれればいい、それ以上は何も望まない」と肩を落とします。

 いわゆるお金目当ての“ロマンス詐欺”とは言いきれないため、真澄さんは警察には相談していないそう。交際期間が長かったため「彼の気持ちに嘘がなかったと信じたい」といいます。

 被害に遭ってもなお自分の恋心に「間違っていなかった」と言い聞かせる彼女の姿に、恋愛感情を利用したトラブルの難しさを感じました。自分の気持ちを誰かに利用されないようにするのは難しいです。せめて納得して行動できるようになりたいですね。

<取材・文/いなばしの>

【いなばしの】

2015年からティーンズラブ小説家・シナリオライターとして活動。女性向けボイスドラマCDの脚本執筆、地下アイドルの歌詞提供なども行う。Twitter:@Yinabashino

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