田中圭が史上最強にかわいい『総理の夫』を全力で解説する

田中圭が史上最強にかわいい『総理の夫』を全力で解説する

?2021「総理の夫」製作委員会

俳優の田中圭が大好きだ。ブレイクのきっかけとなった『おっさんずラブ』、妻が妊娠中に不倫する男を演じた『東京タラレバ娘』、そして近年のヒット作『あなたの番です』など、甘いルックスはもとより、善良な役にもクズな役にもハマる演技の幅の広さがあり、どんなキャラでもずっと観ていたくなるほどに魅力的なのだから。俳優としての演技力はもちろん、その人柄にも惚れ込んだ方は決して少なくはないだろう。

 そんな田中圭ファンに朗報である。9月23日(祝・木)より公開されている『総理の夫』において、間違いなく「史上最強にかわいい田中圭」が爆誕していたからだ。その理由をたっぷりと記していこう。

◆戸惑いまくる田中圭が笑えるし超かわいい

 本作の田中圭のどこかかわいいのか?と問われれば、まず「予想外の出来事に戸惑う様(さま)」にある。何しろ、本作で田中圭が演じるのは「史上初の女性総理の夫」であり、なおかつオープニングから「電波も届かない孤島での出張から東京に帰ってきたら、妻が総理になってて日本中が大騒ぎになっていて、自分も驚きまくる」というおいしいシチュエーションでもって、大いに笑わせてくれるのである。

 マスコミからは一方的に取材を持ちかけられ、田中圭がバラエティ豊かな「え? なんのこと? え? え? どうなってんの?」となる様がとにかくキュート。その後も内閣広報官からあれやこれやと注文をつけられ、バタバタとした忙しい日々を送るわけだが、田中圭のリアクションがどれもスベり知らずの面白さだった。

◆献身的な良き夫や、世間知らずなお坊ちゃん属性

 加えて、そうしたリアクション芸だけで終わっていないことも重要。何しろ、田中圭演じる主人公はさんざん総理の夫という立場に戸惑い続けていても、奥さんのことが大好きで、いつも彼女のことを第一に考えて献身的に接しようとする、とっても良い夫なのである。しかも料理も上手くて、女性が総理になったことへの世間の過剰な反応に対しても(原作小説とは異なる)癒しとなる建設的な言葉を投げかけてくれる。

 さらに、「世間知らずのお坊ちゃん」や「鳥オタク(鳥類研究所で働いている)」という属性もプラス。キラキラした純粋な少年が、そのまま大人になったような愛らしさもあったのだ。さらにゴルフウェア、パジャマ着、普段着、野鳥観察のためのラフな格好など、バラエティ豊かな「あなたのお好みの田中圭」を見せてくれるような衣装替えもする。なんだこれは。桃源郷か。

◆「巻き込まれ型」だからこそ、頼もしい時のギャップが際立つ

 ちなみに、田中圭は自身の役について「何もしない主人公と言いますか、巻き込まれ型の最たるものです」(発言部分は報道資料より、以下同じ)と自虐っぽく語っていたりもする。確かにその表現も的を射ているが、そんな彼でもクライマックスではとある頼もしい姿を見せる。それまでが少年っぽく、ちょっと情けなくも見えるシーンがあるだけに、その頼もしさのギャップがよりカッコよく際立つのだ。

 いわば、今回の『総理の夫』で見せてくれるのは、コミカルなリアクション芸で楽しませてくれる田中圭と、理想的of理想的な夫になった田中圭と、少年のようにかわいい田中圭の豪華な配合なのである。

 これまで善人の方向性を純粋培養した田中圭が観られる映画は、親しみやすくて常識人なお花屋さんを演じた『mellow』(20)が最高だと思っていたが、本作はそれをも超えた天使のような田中圭だった。観た後は「なんで俺は田中圭と結婚していないんだ」と思ったし、そこまでなくても田中圭かわいい愛しているハァハァと鼻息荒くなること必至である。

◆中谷美紀もこれ以上は考えられないほどのハマり役

 谷戸豊プロデューサーは田中圭のキャスティングについて、「最初からこの方しかいない!」と第一優先でオファーし、さらに「田中さんはそこにいるだけでコメディとして成立させてくれる稀有な俳優さん。1発のリアクションでの人のひきつけ方、さまざまな状況で巻き込まれていく姿の面白さは、天下一品だと思います」と語っていた。赤べこのように激しく頷いて同意するしかない。ありがとう、本当にありがとう。

 そして、もう1人の主人公と言える、史上初の女性総理を演じた中谷美紀も超ハマり役だ。

 彼女自身が語学堪能で聡明なイメージがあるだけに、社会的なジェンダーに囚われずにリーダーシップを発揮する様に説得力があり、それでいて多忙とストレスのために弱さをも見せる「支えてあげたくなる」魅力を備えていたのだから。これ以上は考えられない最高のキャスティングと、実際に理想的な夫婦として尊く観られるという時点で、この映画版『総理の夫』は大成功と言っていい。

◆コメディとして面白くなった理由がある本作

 本作は原田マハによる同名小説を原作としているのだが、アレンジがかなり多い。原作は「日記形式」で書かれた、社会的な思想や政治的な動向を追うイメージが強かった。だが、映画では前述した「出張から帰ってきたら妻が総理になっていた」というシチュエーションからもわかる通り、はっきりとコメディとしての楽しさを大きく打ち出している。同時に「天然」で「からがいがいのある」とも言われる主人公を筆頭に、原作のキャラクターの面白さは映画でも存分に生かされていた。

 谷戸豊プロデューサーも「原作はお堅い政治モノというよりも、いきなりファーストジェントルマンに祭り上げられてしまう夫の姿を描くコミカルな作品」「何より1組の夫婦を描く普遍的なお話だとも思いました」と語っており、その目論見が見事に達成できていることは、実際の本編を見てもわかるだろう。

 何しろ、コメディ要素は短絡的なギャグに始終するのではなく、「勘違い」や「すれ違い」も重視した「頭が良い人が作っている」と心から思えるクレバーなものになっている。しかも、それらが笑えるだけでなく「敵の策略にハマりかけてしまう」サスペンスや、「夫婦間のすれ違い」という切実なドラマにもつながっているのも上手い。

 女性総理という劇的な環境の変化に巻き込まれていくコミカルなパート、中盤の政治パート、最後の夫婦パート、それぞれのバランスも見事で、エンターテインメントとして飽きずに楽しめるはずだ。

◆入念なリサーチの上に成り立った脚本

 脚本そのものにも実に手が混んでいる。例えば、女性総理のキャラクターに説得力を持たせるために政治家、ジャーナリスト、新聞記者にも入念に取材を重ねた他、いわゆる政界とは無縁の一般女性にも積極的に話を聞いたそう。

 さらに「もしも本当に日本に女性総理が誕生したら、マスコミやメディアはどんな反応をするのか?」「女性たちの琴線に触れるポイントはどこなのか?」さまざまな角度の意見を取り入れながら、日々脚本をブラッシュアップしていたのだそうだ。

 コメディ主体の作品でありながら、女性の社会進出や、ジェンダー観などに真面目に向き合った作品になったのは、そうした入念なリサーチのおかげだろう。中盤で「女性の性的魅力を武器にする」というシーンはあるものの、それは間違ったものと描かれているし、何よりその後の女性たちを(男性も)を鼓舞するメッセージは実に感動的だった。

 この脚本を手がけたのは、『ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち』(21)の杉原憲明と、新海誠監督のアニメ映画『言の葉の庭』(13)で脚本協力をしていた松田沙也。さらにコメディ作品を多く手がけていた河合勇人監督も脚本作りにガッツリと関わったことで、ウェットになりすぎない、テンポのいい脚本の輪郭が濃くなったのそうだ。その『ヒノマルソウル』も欺瞞にならない物語の構築力が素晴らしい内容だったので、合わせて観てみると、より誠実に「物語」に向き合うクリエイターであることがわかるだろう。

◆「今の日本に必要だ」と心から思える内容

 本作は「今の日本に必要だ」と心から思える内容でもある。作り手たちは脚本の執筆最中に、ニュージーランドの女性首相=ジャシンダ・アーダーンが世界初の「首相在任中の産休」を取得するという時代の波を感じていたそうだ。

 だが、(筆者個人の主観だが)現実の日本では「史上初の女性首相」の時点で、もはやファンタジーかつ荒唐無稽にすら思えてしまうのではないか。このコロナ禍で、より日本の政治について怒りを募らせるばかりか、もはや絶望的な気分になった、という方も決して少なくはないだろう。

 そんな現実の日本だからこそ、史上初の女性総理の姿から希望をもらえる方はきっと多いはずだ。

 それがたとえフィクションであったとしても、こうした指導者を望み、それを支持する声があれば、きっと世界を変えていけるのではないか、それほどのポジティブな気持ちになれる作品だったのだから。田中圭のかわいらしさに身悶えできる上に、笑って泣いて元気になれる楽しい映画を期待して、ぜひ劇場に足を運んで欲しい。

<文/映画ライター ヒナタカ>

【ヒナタカ】

雑食系映画ライター。「ねとらぼ」や「cinemas PLUS」などで執筆中。「天気の子」や「ビッグ・フィッシュ」で検索すると1ページ目に出てくる記事がおすすめ。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」

Twitter:@HinatakaJeF

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