医療費500円が払えない、お米がない…貧しい家庭の子どもの健康が危ない

医療費500円が払えない、お米がない…貧しい家庭の子どもの健康が危ない

「ほんの一瞬でも、相談をしたり、息抜きができることで救われることもある。かた苦しくない、緩やかな繋がりを目指したい」と三島氏

年収と健康には因果関係がある――近年、さまざまな研究によってそんな事実から明らかにされてきた。格差が広がる日本でも問題視され始めた「健康格差」が今、新型コロナの影響で深刻化している。「こども食堂」や小児科医療の現場から、低所得家庭の子供を追い詰める健康格差をレポートする。

◆「久しぶりの白いご飯だ」困窮家庭の食から見えるもの

 コロナ禍による生活困窮のしわ寄せは、子供たちにも迫っている。子供が一人でも行ける、無料または低額の食堂を「こども食堂」と呼ぶが、その現場はどんな状況なのか。全国のこども食堂を支援する認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の広報、三島理恵氏に話を聞いた。

「全国のこども食堂の現状と、困りごとを聞く私たちの最新のアンケート結果を見てみると、多くのこども食堂のスタッフが『地域全体の困窮度合いが目に見えるようになった』など、困窮家庭との繋がりの増加を挙げています」

 一時は活動を休止するこども食堂も少なくなかったが、むすびえの調査によると現在は93.7%が活動しており、そのうち、食材やお弁当を配布する、フードパントリー活動をするこども食堂の割合は69.8%に上るという。そういった場所には親子の姿も多い。

「皆さんにお米を配ったときは『久しぶりに白いご飯が食べられるね』と呟いたご家庭があったり、年齢的に普通ならお菓子に飛びつくはずのお子さんがそれに見向きもせず『お母さん、お米があるよ〜』と嬉しそうに言っていたそうです。

 ほかにも、やはり喜ばれるのはレトルト食品など、子供が一人でも“チン”して食べられるようなもの。子供が一人で食事をとる、孤食がさらに進んでいるように思います」

◆デザートのフルーツも、ぜいたく品

 新鮮な野菜や、デザートのフルーツも、ぜいたく品。フードパントリーでも「やはり果物やお菓子は相当喜ばれる」という。

「以前、キウイフルーツを配ったとき『久々の果物だ』と多くの方から大変喜ばれたそうです。主食ならまだしも、嗜好品で出費がかさむのは厳しいとか。すごくギリギリな状態にあるご家庭が増えているのを改めて実感しました」

◆虫歯にも健康格差が…

 このほかにも、子供の虫歯から健康格差が見えてくるという。文部科学省が発表している「学校保健統計調査」によると、12歳の永久歯の一人あたり平均むし歯の数は毎年減少しているが、「むし歯自体は減っている一方で、経済的な問題で通院や検診ができずに一人で10本以上虫歯があるような“口腔崩壊”している子供の状況は深刻です」(三島氏)という。

 コロナ禍で通院を控えたり、経済的に厳しくなれば余計に歯医者から足が遠のく。東京都葛飾区で活動している「えまいまキッズカフェ」代表の森谷哲氏は、100本もの歯ブラシを配布した。

「するとママたちから『子供たちの歯ブラシ久しぶりに交換できます!』って、すごく喜んでいただきました。こんなにニーズがあるなんて……と、驚きましたね」

◆こども食堂は4年で15倍以上に増加

 状況は厳しくなる一方だが、支援者たちは一人でも多くの子供を支えようと必死にもがいている。

「こんな大変な時期なのに、こども食堂は4年で15倍以上に増加し、全国約5000か所以上に上ります。会食形式で開催できないところも、フードパントリーにしたことで、ご家族で一緒に取りに来てくださったり、相談を聞いたり。

 家庭の事情がより見えるようになって、結果的に困窮状態がわかるようになったんです。状況に応じて別の支援を紹介したり、行政に繋ぐこともできるようになりました」(三島氏)

◆「おてら食堂」には高齢者6割

 埼玉県では寺が動いた。加須市の光明寺では月に1回「おてら食堂」を開催。現在は感染対策のために食材や弁当を配布しているが、高齢者の利用が6割を超えている。

「年齢を問わず多くの方が、今支援を必要としています。お寺が交流の場となれば嬉しい。こんなときだからこそ、少しでも多くの居場所が増えてほしいです」(片山俊亮副住職)

◆「こども食堂」の数にも地域格差が…

 いまやこども食堂は、さまざまな世代の人々が繋がる交流の拠点だ。しかし場所によって数が大幅に偏る、地域格差が生じている。

「小学校の区に一つはこども食堂がある状態をつくりたい。’25年までに実現したいと思います」と三島氏。

 今こそ気軽に利用できる、拠点の拡大が求められている。

◆医療現場から見えた子供の貧困の姿とは?

 また、貧困状態の子供や家族に寄り添う医師がいる。長野県にある健和会病院の小児科医、和田浩氏は「困窮家庭の子供は、ぜんそくを発症することが多い」と語る。

「理由はまだ明確に解明されていませんが、子供のぜんそくはダニやホコリなどのアレルギーが原因にあることが多いです。困窮されているご家庭は、部屋数が少なく狭かったり、どうしても環境がよくない状態になってしまう」

 困窮した家庭の子供は病院にアクセスしづらくなるという。親の就労環境が直に影響するからだ。

「困窮している親たちはダブルワークやトリプルワークをしている人も多く、子供を病院に連れてくる時間がとれないのです。さらに、より深刻な問題として、困窮して時間的にも精神的にも余裕がなくなってくると、前向きな気持ちになれず、医師の指示にも従わなくなったりしてしまうんです」

◆医療費500円が払えない家庭も

 また、子供の医療費の負担分も影響しているという。

「子供の医療費助成の制度で、長野県は中学3年生までは一律500円の一部負担金が必要です。『それくらい払えるだろう』と当然のように思われがちですが、現に払えないご家庭もあるんです。子供の健康格差をこれ以上広げないためにも、完全無料化の実現が求められます」

 そうした貧困家庭のために、健和会病院では医療サービス以外に食料の支給なども手掛けている。

「実家が農家の職員もいるので、余った古米をもらって必要な人には差し上げています。また、職員が寄付してくれた子供服を休憩室に置いて持ち帰ってもらったり、入学式で着るような少しいい服を無料レンタルしたり。

 それは貧困とか関係なく、誰にでもお貸ししています。やはり『貧困対策』という見え方だと嫌がる親御さんもいますので、できるだけ自然に寄り添えればと思います」

 子供の健康を守る動きは、さまざまな場所で動きだしている。

【和田 浩氏】

健和会病院(長野県飯田市)院長。日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」代表世話人も務める。小児科専門医。’09年頃から子供の貧困問題に取り組む

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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