業界人から「仕事をあげる」との口車に乗せられ、セクハラにも耐えたものの…?

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最近、映画業界で性被害の告発が複数ありましたが…セクハラ、パワハラは他の業界にも数々あるようです。今回は、2人の女性にセクハラ被害に遭った当時のお話を聞いてみました。

◆憧れの雑誌の編集さんとの出会い

斉藤茉奈さん(仮名・30歳・イラストレーター/ライター)さんは、コロナ以前は飲み歩くのが好きで、行きつけのスナックがありました。

「そのスナックは出版業界の人達が集まるお店で、ママとも話が合うし居心地が良かったので、よく一人で行っていましたね」

そんなある日、いつものように一人で飲んでいると、たまたま隣の席になった男性Tさん(46歳・既婚)は某有名出版社の社員でした。

「名刺を交換して、『私はこんな記事やイラストを書いています』と、スマホでその前日にアップされたものを見せたんです。すると、『マジ?俺、これさっき読んだよ。すごく面白かった』と嬉しい反応が返ってきたんです」

しかもTさんは偶然、茉奈さんが掲載されるのが夢だった憧れの雑誌の編集さんだったそう。

「さらに『今度うちの若いの紹介するよ。ちょうどイラストレーター探していたから』と言われて胸が高鳴りました。私は全く売れていなくて、20代後半までアルバイトをしながらイラストや文章の仕事をしていたので“やっとチャンスがきた!”と思ってしまったんです」

それ以来、Tさんに仕事をチラつかせられては呼び出されて、飲みに付き合わされるようになってしまい…。

◆仕事の話…はどこへ?

「Tさんはベロベロになるまで飲む人で、酔うと『俺、茉奈ちゃんのMっぽいところが好き〜。今度アソコ噛んであげるよ』とか気持ち悪いことを言ってきたり、肩を抱いたり腰に手を回してきたりと、とにかく酷いセクハラ魔だったんですよ」

そして1番の恐怖は、帰りのタクシーでした。

「私の最寄駅まで送ると言っては、毎回私をタクシーに押し込んでとにかくキスしようと必死に迫ってくるんですよね。『奥さんに言いつけますよ〜』とTさんの両腕を押さえながら避けて、それでもしつこくされると運転手さんに助けを求めたりしていました」

やっとの思いで3回飲みに付き合ってみましたが、全く仕事を振ってくれる素振りがなかったので茉奈さんは我慢できなくなったそう。

「Tさんに『会う度に“今度紹介する”と言っていた若手の編集さんに、今週中に会わせてください。仕事をくれないならもう飲みには行きません』とLINEしたんですよ。そしたらパッタリ連絡がこなくなりました」

◆仕事がない女性を無料ホステス扱い…

「きっとTさんは最初から仕事をくれる気なんてさらさらなくて、私をだましてセクハラしたかっただけなんだと思います」と茉奈さんは語ります。

「“仕事がもらえるかもしれない”というエサに釣られて誘いに乗ってしまった私もバカですが、Tさんのやってることは最低だと思います。自分の立場を利用して、仕事がない女性作家を無料ホステス扱いしていい気になっているんですから」

「それ以来、おじさんが怖くなってしまって。必要以上に警戒してしまうんですよね…」とため息をつく茉奈さんなのでした。

続いてはTwitterのDMで、本の出版を持ちかけられた漫画家の女性の体験談です。

◆TwitterのDMに嬉しい仕事が舞い込んだ!

永野恭子さん(仮名・27歳)さんは、カフェでバイトをしながら漫画家を目指しています。

「美大生の頃から漫画を描き始めて、ここ数年はTwitterやインスタにエッセイ漫画をアップしていて、ちょくちょくお仕事ももらえるようになってきました」

そんなある日「体験エッセイ漫画の本をだしませんか?」とTwitterにDMが届いたとのこと。

「出先でDMを開いたのですが、ビックリし過ぎて商店街でしゃがみ込んでしまいました。すぐに送り主のプロフィールをチェックすると編集プロダクションの人で、私の好きな作家さんの本も担当していたので大興奮してしまい、顔がニヤけてしまうのを一生懸命我慢しながら帰宅しましたね」

その編集者Fさん(40代後半・既婚)に連絡を取ると、すぐに初打ち合わせの日が決定。

「打ち合わせでよく使われることで有名な、レトロな喫茶店に14時に待ち合わせしました。でも、とにかくFさんの話が長くて長くて…。必死で話を合わせましたが、…気がついたら夕方で気を失いそうになりましたね」

◆自慢話に深夜まで付き合わされた

しかも恭子さんの体験エッセイ漫画本の打ち合わせのはずが、8割は今までFさんが手掛けてきた仕事の自慢話だったそう。

「初対面だったので、かなり長めの自己紹介ということかな?と思っていました。結局その後、飲みに行こうと誘われてしまい、深夜まで付き合わされてヘトヘトになりました」

ですが別れ際に「◯◯(大手出版社)に企画書出しとくから!恭子ちゃんは会話のテンポが良いし明るいから、絶対に面白い体験エッセイ漫画が描けるよ」とFさんに言われて疲れが吹っ飛んだんだとか。

◆深夜の電話にも我慢して付き合ったけれど

「単行本を出すのは私の目標なんです。Fさんの話はつまらなくて本当に苦痛でしたが、なんとか上手くやって出版までこぎつけないと!と思ってしまったんですよね」

その後何度か、Fさんとの打ち合わせと称した長時間のお茶からの飲みに付き合い、深夜に突然LINE電話がきて3時間切らせてもらえなくても恭子さんは耐え忍びました。

「ですがある日、いつもの長時間のだるい飲みからやっと解放してもらい、帰ろうとして一歩踏み出した時に、急にFさんに抱きつかれたんです。そして、『こんなに話が合うんだから離れたくないよね!泊まっていこう』と言われて、ゾッとして突き飛ばして帰ってきちゃったんですよ」

◆「無名過ぎて企画が却下」と言われた

しかし、どうしても単行本出版の夢が諦められなかった恭子さんは「失礼なことをしてしまってすみませんでした。私も酔っていたんです。もうこんなことが起こらないように、これから打ち合わせはお酒無しでサクッとすませましょう」とFさんにLINEしました。

「すると『◯◯(大手出版社)から返事がきて、恭子さんが無名過ぎて本が売れる見込みがないので企画が却下されました。残念でしたね』と返信がきて、はぁっ?と思いました。最初から私が無名なことなんて分かっていたくせに」

「もしかしたら大手出版社に企画書を出したというのも嘘なのでは?」と恭子さんは疑っているそう。

「きっとFさんは、自分が誰にも相手にされない寂しいおじさんだから、自尊心を満たしたくて、私みたいな漫画家志望の女性を探してDMしまくっているのかも知れません。本当にFさんに付き合わされて無駄にしてしまった時間が惜しいし、めちゃくちゃ嫌な気分にさせられて、悔しくてしかたがありません」

仕事をチラつかせ、若い女性をもてあそぶなんてひどいものです。しかし、降って沸いた“おいしすぎる話”には細心の注意を払った方がいいのかも知れませんね。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】

漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

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